第326話 俺カレの彼【side紅緒永遠】

…保利くんに会えたのが本当にビックリだった玲奈。

保利くんの話を根掘り葉掘り問い詰めたあと、保利くんの話しをうんうん聞いたり聞かれたり。

…君たち付き合っちゃえば?


玲奈がチラッてこっちに視線を送る。

…勘の良い子!


なんで?なんで?って連呼する玲奈は嬉しそうに笑ってる。

…俺カレの景虎さんの奥さんが出産間近で午前シフト手薄になってしまった時に景虎さんに了解貰って承くんが保利くんを連れてきた。


俺カレの為?同級生の為?

それもあるんだろうけどね?

…きっと玲奈の為なんだと私は思った。

承くんの中学生の頃の話を聞いてた頃、玲奈が不登校の保利くんを何度も訪問して、会えなくて中学卒業してしまったって言ってた。

玲奈の性格上気にしているんじゃないか?って承くんは思ったに違いない。

修学旅行で承くんと玲奈と一緒の班だったって言ってたし。

…保利くんが来てれば、保利くんが玲奈を射止めていれば!

まあそれは無理なのは何故かわかる。


ふたりともボカすけど中学生の頃には多分お互いに好きだったっぽい。

…でも!結ばれなかった!そこに勝機があるでしょ!


私は同じクラス、同じクラス委員長!放課後やお昼も一緒!

これはアドバンテージだよね!

玲奈は天月高校でさ?玲奈に合う頭良いエリートとかと結ばれてさ?

承くんと私と良い友達になれば良いじゃない。


保利くんの話しを聞き、玲奈はすっかり乙女モード。

保利くんは見惚れてるけど可哀想に、それ承くんの漢気?行動にキュンキュンしてるんだよ。

わかる、わかるよ!

私もクラス委員長に祭り上げられて孤立無援の時、助けてくれてキュンキュンしたもん!

恩に着せない、当たり前のことしただけ!ってひょっとして助けた事すら忘れてる私の武将。


玲奈の方が付き合い長くてなんでも知ってるから腹が立って対抗しちゃうけど勝てた試しは無い。

本当この子のスペックどうなってるのか?

私だって学習能力は高くて?運動以外なら結構何でもいけるんだけど玲奈は別格に強い。


玲奈はキュンキュンしてるけど少し腹も立ててる。

…承くんが言わなかったからだろうけどね。

承くんだよ?自分が助けられた事は忘れないだろうけど助けた事なんて忘れてるでしょ?それが承くんって男の子だと思う。


私は思ったまんまそれを口に出す。

玲奈は頷いて、それだね!って言う。


玲奈と私は笑っちゃう!お腹抱えて大笑い!

絶対そうでしょー?あるある!立花家どうなってるのかな?

盛り上がるところに承くんが通りかかってニコニコしてる。

私と玲奈がふたりで手を振ると承くんは真っ赤になって逃げちゃう。


玲奈『きっと承くんはわかって無いよね?』


『わかってないだろうね?』


玲奈の言いたい事何となくわかる。

多分玲奈も私の言いたい事わかる。

この辺が玲奈とすごく噛み合って好きだし、話も合うし良い娘だし綺麗で性格も良いから友達になりたいって思っちゃう。


…でも同じ分だけ妬ましい。

…私と違い、承くんと玲奈は…多分両想い。

それがわかるから妬ましい。

玲奈は私が持っていない物の大半は持っている。

なんなの?って思う。

だけど玲奈は私をライバル視している。

…どっちかが告白したら即終わる両片想いだよ?

こんな茶番!でも何故か告白しないこの状況が唯一の勝機なわけだ。



それいつまで保てるか…?

目の前の玲奈はにっこり微笑んで承くんが働いているのを楽しそうに見ている。


…天は二物を与えるんだね。

…目の前の綺麗な女の子をまじまじと観察するとそれがすぐわかる。

肩より少し伸ばした明るい色のふわっとした髪質。

綺麗に整った目鼻立ちに、優しく聡明さに煌めく瞳。

細いけど出るところはしっかり出ている体型にテニスで培われたしなやかで優美な身体つき。

しかも?これでみんな為に頑張り過ぎちゃうお人よしな上県内最難関の天月高校へ進学して?高校女子テニスでは県内屈指の実力者?

しかも人当たり良くてコミュ力モンスター。

しっかり者の超有能なのに時々ちょっと抜けてたり…。

前も言ったかも、【ぼくのかんがえたさいこうのかのじょ!】みたいなスペックでしょ?承くんが『月』に例えるような優美に輝く完璧女子。

…まあ本人は本人で大変そうだけど?


それに比べてわたしは…見てくれだけは負けて無いけど…好みによるよね。

小学生より体力的に貧弱で、入院生活長過ぎていまだに世間知らずで。

身体は弱いし、すぐトラブル起こすし、燃費悪いし。

…それ以前にいつ故障するかもわからないジャンク品。

玲奈が羨ましい。承くんとの思い出がたくさんある。

…それほとんどが私が寝たきりで死を身近に感じていた暗黒時代の頃からに得た幸せで美しい思い出。


私が玲奈みたいに色々持っていたら承くんは私を見てくれたのかな?



そんな事を玲奈の横顔を見ながら考えていると、

玲奈は優しく微笑みながら、


玲奈『…何か考え込んでるけど?きっと承くんはそんな事気にしないよ?』


私はビックリする、何心読めるの?!

でもその玲奈の言葉はストンと私の何かを流してくれるわけで。

だから私も返す。


『玲奈こそ?なに悩んでるか知らないけど?承くんならぱっくん!って食べちゃうよ?』


玲奈はキョトンとしたあと笑いだしてまた顔を翳らせる。

…同じ女の子から見てもその表情は息を呑むほど綺麗で。


玲奈『はは、そうなら良いんだけどね?』


…玲奈には玲奈の悩みがあるんだろうね?

それならここは?好きな事で忘れるしか無いでしょ?


『玲奈!承くんのラーメン来た時の動画見る?』


玲奈『見る!…ふふ!こんな顔してるんだね!

私のお弁当の時はね?』


私たちは盛り上がって承くんの事を話し合う!

そう、私たちはケンカして、罵り合いながらも同じ夢を語り合う。

それは楽しくワクワクする胸踊る時間だった。

これは信子ちゃんとは違う友達のかたち。


…それでも、彼女になれるのはただひとり。


…屑ムーブで良いからふたり貰ってくれたら良いのに…。

私は承くんもだけど玲奈も大好きになりつつある…。

悔しいけど玲奈は素敵な女の子なんだよね。

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