第325話 俺カレの彼【side香椎玲奈】

承『はい、お待たせしました。』


仕事中の承くんはハキハキ少し元気に爽やかな佇まい。

…これだけでご飯2杯はイケる…!


永遠『それで?何追加するの?』


『…うーん、何にしよう?』


不本意だけど永遠に煽られて即呼び出しボタンを押してしまった。

見てるだけで良いって思ったけど本音を言えばやっぱり少しお仕事中の爽やか店員さんモード承くんとお話ししたいよ。


『何がオススメかな?承くんの?』


私はにっこり聞いてみる。

承くんはにっこり笑って返してくれて、


『俺のオススメはね?ハンバーグカレー!絶品!

今日の賄いハンバーグカレーだったんだけどね、今日のは仕上がってる!って景虎さんが言ってた通り今日のはキマってる!』


景虎さんってオーナーシェフのおじさまだよね?

承くんに影響を与えてるイケオジらしい。

へらっしゅー!って挨拶(?)してくれた人?


永遠『へー!そんなに?』

承『そうなの!香り鼻に抜けるのに今日すっごい旨味!

…あ、ごめん!主食食べたばっかりだよね?』


…承くんと永遠がキャッキャ盛り上がってる…?

気に入らない…。


永遠『じゃ、私ハンバーグカレー追加!

ここのハンバーグカレー美味しいし量あるし!値段も学生の味方!最高なの!』


『え?今ダブルハンバーグセット食べて?パンケーキも食べかけだよ?』


私はそのまんまのことを言ってしまう。

永遠は呆れ顔で、


永遠『食べかけって事はもう食べ終わっちゃうじゃん。

追加オーダーするから承くん呼んだんでしょ?』


『そうだけど…。』


主食メニュー食べて?デザートまで食べたよ?

ここはアイスとか、コーヒーとか?

そういう余韻を楽しむ追加を…?


永遠はあっ!て顔して、


永遠『あー?そっかぁ?

玲奈ちゃんは部活帰りだけどもう食べられないのかなー?』


『は?』


永遠『こないだ聞いたけどさ?承くんにはがっついて食べて!とか言って?

自分は『もう食べられなーい!』とか言うんだ?だっさ!

玲奈ちゃんはお子様コーナーのミニアイスでも食べてればいいんじゃない?

おこちゃまれいなちゃん?』


永遠がドヤ顔で煽ってくるよ…!

でも!私のイメージ!

初めて来店した承くんの彼女になるべき女の子!じきにステディな関係として?紹介される予定の女の子が…!承くんは良く食べる女の子好きかもだけど他人にそんな姿見せられないよ!


『…私は…アイス3点盛r…』

永遠『ここでアイスなんておなかにたまらないモノ食べるような女はふにゃちん野郎の彼女に違いないよ(笑)』


…永遠ぁ…?


『承くん、ハンバーグカレー。私も。』


承『香椎さん?やめといた方が?美味しく食べれる量ってモノが…?』


永遠と私『承くんは黙ってて!』


承『はいっ!』


…。



…。



承『…ハンバーグカレーふたつになります…!』


…噂に違わぬ美味しそうな見た目、香り、そして盛り。

ゴクリ、美味しそうだけど…私はさっきハンバーグ二つにサラダ、スープ、ライス大盛り食べてる。しかもパンケーキも。

多分ギリギリ…か?


永遠『わー!美味しそー!いただきまーす!

…うん!美味しー!玲奈も食べて!絶対に気にいるよ!』


…この娘は本当に美味しそうに食べる。

そこは好感が持てるし今の言い方も邪気は無くて友達に美味しいモノ紹介したい!食べて!って雰囲気が伝わる。


パクリ。


うん、美味しい。

芳醇な香りが鼻に抜けつつスパイス何種類かが強調されているけどメインのスパイスが主張している!しかも辛いけど旨味が凄くてこれは確かに絶品!

こんなファミレスみたいな外観なのに…値段も普通なのに?

千佳も絶賛してたけど本当に美味しい!!


…ハンバーグも負けていない!

さっきのハンバーグと違うもっと粗挽きの…!

永遠『玲奈!玲奈!どう?美味しい?ね!美味しい?』


うるさいな!今食レポ中でしょうが!


永遠は満面笑みを浮かべて小さい子みたいな笑顔でカレーの感想を聞いてくる。

私はさっき思ったままを言う。


永遠『でしょー!美味しいのー!

私週5は来るからね?』


…お母さんご飯作ってくれないのかな?

永遠…家庭状況どうなんだろ?

私はオブラートに包んで外食ばかじゃりじゃ偏ってしまうよ?って伝える。


永遠はポカンとした表情で、


永遠『家では普通にご飯食べてるよ?

ちゃんと3食?』


『3食お家で食べたらここで週5は無理じゃない。』


何言ってるの?この娘?

でも、永遠の口から出た言葉は、


永遠『え?これは間食だから?』


『は?体重とんでも無い事になっちゃうんじゃ?』


永遠『…私、心臓のせいなのかな?

いくらでも食べれるし、いくら食べても太らないんだ。』


『へ、へぇー?』


通りかかった承くんが、


承『…紅緒さんは玲奈さん来る前ポテトフライ普通盛り(俺カレの普通は他所だと大盛り)とクリームソーダ飲んでるんだよ?』


は?どうなってるの?この子?


私も食べても太りにくい体質気味だよ。

…でも受験期とか?部活してなかった時期は多少セーブしてた。

それでも他の娘からすっごい羨ましがられたけど…!

この娘こんな食べて?こんな細いの?

永遠は白くて細くてすっごい綺麗な女の子。

…羨ましいなって思う自分が居る。

私だって自分で言うのなんだけど?

見てくれには自信があるし、最近は身体付きも少しずつ大人びてきて?

遂に待望のセクシーが身に付きつつあるよ!

テニスで鍛えた身体は我ながらしなやかで健康美でもあると思うんだ。


…でも、永遠は違う。

満天の星空を溶かして出来たような腰近くまである黒い黒い光沢ある美しい髪。太陽に当たった事無いんじゃ無いか?ってほど色白ですっべすべなお肌に、華奢で可憐な身体付き。細いからボリュームは無いけど細い割に胸はあるし、足もすらっと長く綺麗。

顔立ちもはっきりした目鼻立ちに強い目。

…ハンバーグカレーを夢中で頬張っているけど掛け値無しの美少女。

自分も決して負けてはいない。

…でも好みで分かれるだろう。

守りたい、壊れちゃいそうなガラスのお花。そんな印象。

…もし私がこんなに華奢で?守りたいって思わせたら?そう思ってくれてたら…あの日告白してくれたのかな?

…私可愛く無いのかもな。何でも出来るし頭回るし健康だし仕事中毒だし。

むしろフィジカル強いし。


そんなガラスの花はハンバーグカレーを頬張りながら近づいて来た男性店員に言い放つ、


永遠『…ちぇんじ。』


『とわ!!』


ビクってする永遠。

私は慌てて永遠を注意するよ!


?『はは、俺カレスタッフはわかってるから大丈夫!

…香椎さん、お久しぶり。

…何度も訪ねて来てくれたのに…あの、顔合わせ辛くて門前払いしてごめんなさい。

…僕、保利です、保利まさひろです。』


その若い店員さんは頭をペコって下げた。

…保利?

…保利くん?


あの?あの不登校だった保利くん?!

私はビックリしてスプーン落としそうになっちゃった!


永遠『…あー。同中なんだ?玲奈とも?

玲奈どんな中学生だったの?』


保利『…不登校だったから…中学校一年までしか…。

香椎さんは圧倒的な人気者だったんだよ?』


紅緒『…つまんないの!』


永遠!また貴女は!人の傷口を!

とにかく私は中学時代何度も訪問したけど会えなかった同級生の男子にこんなところで再会した!

承くん!知ってたのー!?

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