第324話 1番テーブルは危険

2月下旬、土曜の休日、もうすぐ期末テストって時期。

テスト期間はお休みを頂くのでこの時期は熱心にバイトに励む。

バイトの後のバスケも継続中。

高架下のバスケ場も冬場は寒さと雪の状況で対戦相手は少なくて寂しいけどあっちゃんが参加して来るようになった。

変わらないようで色々なものが変わり始めている。


俺も高校に入学してからもうじき一年。

もうすぐ2年生になる。

少しは大人になれたかな…?

…うん、現実逃避に前語りしてみたけど状況は変わらない。




永遠『は?玲奈承くんのバイト先で出されるモノ信じられないの?何食べても美味しいよ?』


玲奈『わかってるよ!でも最初は定番選ぶ物でしょ!永遠が食べ過ぎなの!』


永遠『旦那の職場に挨拶して?少し位売り上げに貢献する?嫁として当たり前のことですー!』


玲奈『は?嫁?…承くん?永遠と同じ物を!』


永遠『ふふ!まいど♪』


顔くっつきそうな程近づけて言い争うすんごい美人ふたり。

俺カレの1番テーブルここは地獄の一丁目。

俺は現実逃避気味に仕事に全集中!


『…ダブルハンバーグセット、ライス大盛り、飲み物はアイスティー。あとカロリー2倍パンケーキ以上を2つで宜しいですか?』


永遠『よろしく♪』

玲奈『そんなに食べるの?』


俺は遠い目をしながら無機質にオーダーを復唱した…。

量の多さに紅緒さんにクレームいれる香椎さんにそれを笑っていなす紅緒さん。

…俺は早くその場を離れたかった。


☆ ☆ ☆


保利『…承くんてさ?本当に香椎さんと仲良しなんだね?』


『うん?』


保利くんは冷めた目で俺を見る。なんでだ。

いやいや、俺はさ?五年クラス一緒だし?修学旅行や体育祭などイベントの委員を一緒にしているから…仲良し…です。


保利『見てたけど、香椎さん入って来る時、


『初めまして、承くんの友人の香椎と申します、お仕事中お邪魔して申し訳ありません。今日は食事させて頂いて承くんの働いているところ少し見学させて下さい。』


そう言って会釈して、素敵に微笑んで受け付けた先輩見惚れてたよ?

でも、中入って1番テーブル見て表情変えて血相変えて紅緒さんと承くんに詰め寄ったんだよ?』


『…女の子は混ぜるな危険。』


保利『あの…香椎さんが本当に…学校生活には夢がある…!』



保利くんの思い詰めている表情が怖い。

俺は祈るような気持ちでセットの飲み物アイスティーを二つ1番テーブルへ持って行く…。


☆ ☆ ☆

玲奈『もー!やだ!永遠ったら!』


永遠『えへへ!玲奈だってー!』


あれ?ふたりがキャッキャしている?

ふたりで笑い合って笑顔の花が咲く…。

女の子って本当わかんない…?


『セットのアイスティーになります。どうぞ。』


永遠『承くん!』

玲奈『承くんが働いているの直に初めて見るよ…凛々しいね。

…格好良いよ?』


頬を赤くして香椎さんが褒めてくれる。

俺も照れちゃって香椎さんの顔を直視できない!

そこへ紅緒さんは不満を漏らす。


永遠『むう!ラブでコメな雰囲気!』


玲奈『良いでしょ!初めて来れたんだから!本当はもっと早く来たかったんだけど…

先週は最後ちょっとテンション下がっちゃってごめんね?

これ!バレンタインのチョコ残り!』


『あ、ありがとう…。』


先週の別れ際の寂しそうな、なにか悩みんでそうな雰囲気が気になって居たから香椎さんの顔見れて直に話し聞けて本当にホッとする。

…そうか、なにかその時だけ何か思い出したのかな?それなら良い。

良かった、ホッとするよ。


玲奈『ごめんね、仕事中に…お家帰ったら食べてね?』


永遠『ふーん、今頃バレンタインチョコ?あー、不幸あったもんね…。

2個渡すの?…私が2個渡したからか。』


紅緒さんは食いつきかけて、おばあさまの事思い出してやめた。

躾け行き届いたわんこだね。

2個に疑問を持ったみたいだけど自分も2個渡したからか!って自己完結。

そこに!香椎さん!ぶっ込まないで!


玲奈『先週のデートで2個渡しているよ?

…永遠が2個渡したんだから?私は4個渡すよ!』


玲奈さんが胸を張る。

今日は綺麗なふわっとしたブラウス姿で安心感あるなぁ…。

でもそんな事言わないで?火に油…!



永遠『は?は?玲奈そんな抜け駆けするの?

淑女としてどうなの?』


紅緒さんも決して淑女では無い。

香椎さんの癖なんだよ…なんか対抗意識みたいな?

大体対抗意識持つのは女性なのかな?


玲奈『永遠が先に2個渡すなんて奇策を…!』

永遠『いいよ!なら私は8個渡すもーん!』


ぐぬぬ!

また睨み合うふたり…なんなの?


俺は自然に1番テーブルを離れる。

チョコ嬉しいな!現実逃避気味にバックヤードへチョコを置きに戻る。


☆ ☆ ☆


景虎『承!承の好きな娘が来てるんだって?』


景虎さんが笑いながら俺を冷やかす。

紅緒ちゃんほど可愛い娘を袖にする位だからよっぽどなんだろ?って厨房の隙間から見て景虎さんは唸る、


景虎『…はぁ、なるほど紅緒ちゃんや伊勢ちゃんほどの美人に持っていかれない訳だわ…中学時代ずっと側にあんな美人が居たら美醜感覚バグるわな。承は面食い(笑)』


『…。』


なんとも言えない。

景虎さんは首を傾げて、


景虎『なんであんなケンカしてんの?』


俺もそこがよくわからない。

紅緒さんはああ見えて今は人とぶつからないし?

香椎さんだって人当たりの良いお嬢さんなんだよね。


保利くんがフロア周って戻って来た。

…保利くんはジト目で立花くんはわかって無いってため息をついた。

俺だってわかってるよ?人には相性があって香椎さんと紅緒さんは相性が良く無いって事でしょ?



☆ ☆ ☆

承くんのバイト先 side香椎玲奈


この間のデートの日、最後の自分は婚約(仮仮仮)の身でどんなにデート盛り上がっても進展するわけにはいかない…って気づいて凹んでたの。

むしろ自分有責事項で承くんを汚していると思った私はターミナル駅についてから激しくテンションを落とした。

…きっと感じ悪い女だと思われたかも知れない…。


自己嫌悪に陥る私に永遠が電話かけてきて?

私のデートに興奮しながら何度もせがむから細かく話していると、


永遠『もう!まどろっこしいからさ?お泊まりしよ!お泊まりして語り合おう?』


私も永遠のデートを詳しく聞きたいし話に乗った。

今回は私の家に来る事になったんだけど、


永遠『俺カレで集合してさ?ご飯食べて?バスで玲奈の家近くまでいけるでしょ?』


承くんのバイト姿!生で見たい!

永遠が言うにはちょうどバイトのシフト入っているらしい。

よく調べているね。


こうして初の承くんバイト先訪問となったわけだけど…。

いきなり?永遠が承くんにちんちんって言わされた!なんて騒いでいるから…!

もう!承くんのバイト先の人たちにどんな印象なんだろう?恥ずかしくって顔から火が出そうだよ!


永遠『大丈夫!大丈夫!俺カレ寛大だから!』


『もう!永遠も自重してよね!』


永遠と異常に合う!って部分と噛み合わない!って部分が両極端。

ライバル!って思っているけど永遠は嬉しそうだったり、怒ったり、嫉妬したり表情がクルクル変わる。

…実際こんなに綺麗で、色白でここまで綺麗な娘は見た事無い。

それなのに承くん絡みだとすっごい可愛い乙女顔になる。

素直に承くんに甘えて、バカ言って。

しかも同じ学校、同じクラス、クラス委員長を一緒に勤めている?心底羨ましく思っちゃう。


くるくる忙しそうに夢中で動き回る承くんは一生懸命で爽やかにお客さんに対応していて…良い、ずっと見て居られるよ…。


…お話し出来なくても寂しくない。

だって仕事中なんだもん。邪魔しちゃいけない。

私は初めての承くんの働いている姿を飽きずに見ていたよ。



永遠『オーダー追加すれば承くんと話せるよ?仕事中でも合法的に。』


私はためらわずに呼び出しボタンを押したよ!

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