第323話 営業中はお静かに

デート三連戦の翌週。

今日はランチから夜までの結構忙しいシフト。

雪も少し落ち着いてきたから自転車で余裕で行ける!

先週のデートは疲れたけど楽しかったな。…でも疲れすぎる。

そんな事思いながら11:00頃俺カレのシフトに入る。


保利『あ、立花くんおはよう。』


『おはよう。』


保利『先週は三連休全部休みだったんだね?』


『…うん、所用があって?』


そっかあ。そうそう!なんて話をしながら忙しくなってきたランチタイムを捌きながら仕事をこなす。

あー、カレー食べたい。


景虎『承!今日のまかないハンバーグカレーだぞ?』


マジっすか?

カレー食べたいのにカレー食べれないのが不満な職場だけど今日はカレー!しかもハンバーグカレー!やった!


『珍しいですね?なんか起こらなきゃいいですけど?』


景虎『縁起でも無い。そうゆうフラグ立てるような事言うなら?ハンバーグ没収だぞ?』


『食べます!食べます!』


そんな昔のホームドラマみたいなやりとり。

保利くんと賄いはいつもこれで良いのにね?とか話していると13:20頃ランチのピークを超えた頃にあの娘が来た、紅緒永遠が。

この時は何も考えずにあぁ、また来たの?って感じだった。


景虎『へらっしゅー!』


紅緒『どうもー♪』


黒髪ロングで整った顔立ちは今日も人目を引く。

案内されずに自分で1番テーブルに吸い込まれるように入っていく当店の太客、通称ヌシちゃん。


保利『ほら?1番テーブル指名だよ?』


保利くんの目が冷たい。

保利くんは引きこもり期間のせいで世間に少し疎くて俺がモテモテって勘違いしてるんだよね…。


紅緒『承くん!やっほー!』


『いらっしゃいませ。

復唱します、ダブルハンバーグ定食、デミグラスとおろし。ライス多め、今日はチョコパフェ?』


紅緒さんはニヤニヤしながら、


紅緒『カノジョの嗜好を覚えてるのは得点高いね?』


『…カノジョじゃねぇ。…最近俺にバイト出勤してる?ってロインしなくても来るね?俺居ない日も来てるの?』


俺は最近疑問に思ってたことを聞いてみた。

紅緒さんはまたにーって笑って。


紅緒『なに?自分居ない日に来るなよ!って事?独占したい気持ち?

永遠のオーダーは俺しか取れねぇ!みたいな?

いいよ!承くんデレた?』


目をキラキラさせ手を胸に前できゅって握ってる紅緒さんは口を開かなければ…。

見た目だけなら清純派超絶美少女って言っても過言じゃないほどの透明感のある鮮烈な美貌。


『デレてない。』


紅緒『はは!本当はね?承くんのシフト私にも通達来るの!』


『ちょっと何言っているのかわからない。』


今日は来ている産後落ち着いて来た景虎さんの奥さんがこっち見て親指立ててる!

何してんの?

紅緒さんが言うには紅緒さんが絶対来れない病院の日とか所用のある日は俺のシフトあんまり入れないように考慮している、最大限俺カレへ来れるように俺のシフトを?

…えぇー…。

※俺カレスタッフは紅緒さん推しです。



少々呆れながら、注文それで良い?って俺は確認する。

すると、


紅緒『…んー。

もう少しすると連れが来るから?その人来てから注文する!

とりあえずフライドポテトとクリームソーダ!』


『はいよ。』


誰だろ?伊勢さん?東光組の人?

ピークを超えたから混雑してないけどまだまだ忙しい。


☆ ☆ ☆


『ポテトフライです。』


紅緒『ほほ!愛い奴…近こう寄れ?ほれ?』


クリームソーダをちびちびやりながら自分の隣をばんばん叩く紅緒さん。


『当店そういったサービスは…?』


通りかかったオーナー夫人こと奥さんが、


奥さん『紅緒ちゃん!もう一品で承くん貸し出しちゃう!』


紅緒さんはむふー!って顔で、


紅緒『追加!チョコパフェ!』


奥さん『まいどー♪』


生後二か月の信くんを俺カレの控え室に残しホール、調理場、控え室をぐるぐるまわる景虎さんの奥さん。

…信くんセットが採算取れなくて景虎さん大目玉喰らってたの。

そりゃそうだよね…あれだけ付けてあの値段は…。

それ以来奥さんがマメに俺カレに来る様になった。

控え室行けば信くんに会えるし景虎さんもご機嫌。


少し落ち着いたホール。

少し位なら大丈夫か。


一度厨房に戻り仕事無いか確認。


保利『…キャッキャウフフして来なよ?』


保利くんにはそう見えるのか?こうなると保利くんは冷たい。

ホールを周り、紅緒さんがチョコパフェを美味しそうに食べ進めるのを見てる。

すっごい早い大食ってわけじゃ無い。同じペースでずっと食べれるんだね。


紅緒『ふふ!先週もデートしたし?

さっきも言ったけどそろそろデレない?』


『いやぁ?』


俺は首を傾げる。

何を言ってるんだ?


紅緒『もし?もしデレたら?私…いつでも良いよ?』


???


『何が?』


紅緒『男子高校生なんて?性に飢えた獣なんでしょ?日々せいよkもがもが。』


『公共の場で!女子高生が!そんな事言っちゃ!いけません!』


お客さんに見えないように紅緒さんの口塞ぐ。

少し押したような形になって。


紅緒『あ…♡押し倒す?

やっとその気になったの?』


顔を赤くして目を伏せるとわんこ。

この娘は時々スイッチ入ると頭の中ピンクになっちゃうんだよ!


店内はだいぶ暇だから注目してる人は居ない?

とわんこいい加減にしろよ?


入店の音がして、大学生スタッフが対応しているのが背でわかる。


『とわんこステイ!』


ステイ!って言うと悔しそうに押し倒されましたぁみたいな演技をやめるとわんこ。

本当にワンちゃんムーブ。

しかしまだ紅緒さんは続きを


紅緒『…承くんはさ?私をそうやってわんこ扱いするけどさ?

結構好きだよね?そうゆうの♪』


紅緒さんはドヤ顔で俺にセクシーなポーズをとってみせる。

…正直こういったギャグ風の紅緒さんはセクシーのカケラも無い。

たまにある真面目に赤ちゃんが欲しいって目を潤ませて真っ赤になるヤツがヤバいの。人の本能なのかな?すっごいセクシーなの…もちろん俺は流されたりしない漢。


とわんこは赤くなりながらモジモジしてさ、


紅緒『前だってさ?社会科教室でさ?

…わんこごっこして?

…もごもご。』


なに?聞こえない?

ラノベの気づかない系主人公みたいなリアクションをしちゃう俺だけどそんな優柔不断な事は出来ない、俺はしっかり聞き返す。



『もごもごって何て言ったの?』


紅緒『【ちんちん!】って言わせたじゃん!二度も!

あの日の放課後!キャッ♡』

186話 紅緒はわんこ 参照。



は?とわんこが勝手に言ったんじゃん?!

顔を両手で覆って雰囲気出すなよ!俺が言わせたみたいじゃない!



かつん!かつん!

後ろから靴の威圧的な音がする…。



?『ふふふ…詳しく教えて頂戴?』


後ろを振り返ると、般若が居た。

その娘はそれは気品があって綺麗に可愛いを兼ね揃えてセクシーも付けつつある圧倒的な女性美の塊。うちの中学では『完璧女子』って言われた美少女。

そんな俺の中のイメージでは月のような娘がにっこり微笑んで誰の視線を惹きつける魅惑的な笑顔で立っていた。

…ただ、目はカケラも笑って居なかったが。


玲奈『永遠…そんな言葉連呼するなんて…。乙女として?どうなのかな?』

※本日のおま言う。

58話 弟のお迎え 参照


…また?またこの組み合わせ?

俺は寒気がするよ。

またビリビリした空気感になるのかな?

バイト先に迷惑かけるような事態だけは…!


『ゴチュウモンキマリマシタラオヨビクダサイ…!』


なぜ?なぜここに香椎さんが?

俺はビックリとさっきの威圧感に動悸がおさまらない!

厨房へ逃げ込む!


ピンポン!


聞き慣れたテーブルの呼び出し音。

表NOは1。見直すけど1。


保利くんが行けよって目で俺を見る…。

俺たち友達じゃない?


保利『…立花くんには借りあるし、世話になってるとは思うけど自覚ないのだけは許せない…!』


保利くんまで怖い。

はぁ、俺は溜息をついていつもの1番テーブルへ向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る