第322話 成実の気持ち【side伊勢成実】

委員長に恋した自分の話の1000件目コメント記念、リクエスト企画になります。

HJM3さんのリクエスト、伊勢成実の心境の話しになります。

HJM3さんは古参の読者さんで皆勤でコメントくださるお人です。

玲奈好きなので意外だなぁって思ったけど玲奈は本筋だからこそのリクエストなのかな?と思いました。


先に297話 成実の初めて を先に読むと繋がりやすいと思います。


はじまりはじまり!


☆ ☆ ☆

バレンタインデーの日、放課後の社会科教室。

あたしは夕陽差し込むその教室で立花とふたりきり。


『…背高くなったね…?前は、初めて会った頃はそこまで変わらなかったのにね?』


いつもみたいな立花と色々な話やら下らない話やらしていてこの真面目な男の子はいちいちあたしの話に感心してくれる。

あたしの話しを真面目に聞く立花が可愛くてついついニコニコ気安く話したり、ツンツン突っついたり。

今もそう、背高くなったね?こーんなに差があるよ?

密着して、手を伸ばす。


バクン!

全然可愛く無いほどの心臓の鼓動であたしは立花と近いってこと意識しちゃう!


『…!』


あたしは慌てて距離をとる!

…危なかった…あたし、今抱き締めたいって衝動が!

だめだめ、立花は香椎玲奈が好きっしょ?

…この思いは重荷にしかならない…!


高校生になり、立花は大人になった。

バイトも初め、バスケに夢中になり、勉強も頑張っている。

とわわんを助けたり、そのとわわんとクラス委員長したり、中学の頃とはまた違う良さを見せる。

…大きくなったよね。あたしはそんな立花を見ていると胸がきゅー!ってする。


『あはは!ずーっと一緒だったから距離感バグってんね?

じゃあさ?行くね?』



あたしは恥ずかしくって立花の目を見れない。荷物を持って出て行く。

教室を出る時に立花は優しい眼差しであたしを見つめて、優しい声で、


成実しげざねさん、また明日!』


『しげざねじゃねーよ!』


立花承はそんな漢。

いじめを解決したり、好きな娘の為に体張ったり、好きな娘の希望を叶える為嫌われ役をすすんでやったり、自分がしてもらったから孤立するクラス委員長を押し付けられた娘を守ったり。

見返りなしに人を守ったり助けることのできる漢なんだよね。


階段を降りて自転車置き場へ向かう。

階段で胸が揺れると男子がガン見してくるから気を付けて降りる。

降りながら時間を確認するけど、考えるのは立花のこと。


地味な男の子…でもすっごい頼りになる武将みたいな男の子。

その男の子は男の人になりつつある。


いつまでも側で見ていたいよ。

あたしが1番近くに居るんだよ?


…だからこそ知っている、初めて会った時から立花承の心に違う女の子が住んでいることを。

…かつて親友だったなんでも出来る綺麗な娘が住んでいる。



あたしはそんな事をぼんやり考えながら自転車に跨がる。

…だから!そこ男子!脚凝視するなし!



☆ ☆ ☆

すぐそこ、東光駅で電車に乗る。

東光駅の隣駅、その駅前マンションにあたしの親友木多ちゃんが住んでる。

木多良子は下の名前が古風で苗字で呼んで?って言う。

だから昔から『木多ちゃん』って呼ぶ。


色々あったけど、今も親友。

一時会えない、会いたく無いって言われた時期もあったけどもうすっかり元通り。

…ううん、前より繋がり自体は強くなった。


マンションへ着き、インターホン鳴らして開けて貰って、高層マンションをエレベーターで上がって行くけど…なんかスースーして落ち着かないよ。


途中で買ったコンビニスイーツをぶら下げて、ドア前で呼び鈴を鳴らすと木多ちゃんが出迎えてくれる。


『よっすー!』


『成実ちゃん、いらっしゃい。』


中学時代、木多ちゃんはあたしに引っ張られてギャルっぽくしていた。

でも、今は普通。こないだの文化祭に東光来た時黒髪ロングだったけど、先日髪色明るくして、髪も肩くらいまで切った。

すっごい似合っていて、可愛い。

不思議な事に女の子は髪切ったり、素敵な服着たり、爪やメイクが決まるだけでテンションがアガる!


事実木多ちゃんは髪切って、髪色変えてから少し明るくなった。

さて、今日のメインイベントはね?


『はい!木多ちゃん!バレンタインデーのチョコ!


…貴女が好きです…初めての手作りチョコ…受け取ってください…♡

なんちゃってー!!』


私は少しおどけて両手でチョコを渡すよ。

木多ちゃんは嬉しそうに、


『ごめん、好きな娘が居るんだ。

伊勢成実って言う娘が!』


『ひどい!あんなに!あーしのおっぱい弄んだのに!』


木多ちゃんはノリノリで、


『身体が目当てなんだよ!このけしからんおっぱい!』


そう言って、木多ちゃんが回り込んであーしのおっぱい!やめ!ちょ!


『…あ♡』


や!だ!声が…!


『ごめん、興が乗ってしまった…!

悪魔の乳だよ、そのおっぱい…。』


自分のおっぱいを揉んでため息つく木多ちゃん。

木多ちゃんも手作りチョコ渡してくれて?

さりげなく他にあーし以外に浮気して渡して無いよね?って聞いてみる。

…まだあいつに心残してるんじゃ無いか…心配で。


木多ちゃんはすっごい透明感のある笑顔で、


『心配しないで?もう終わった事。

彼は私に興味が無かった、今はそれがわかるしね。

家族や成実ちゃんや友達にもう心配かけられないよ…。』


寂しそうに笑う木多ちゃんが切ない。

木多ちゃんは…外町と身体の関係があった。

ずっと好きな男の子に好意も伝えられないあたしより大人に見えることがある。

木多ちゃんは木多ちゃんで高校生になってバイト始めたあたしを大人になったって言う。


木多ちゃんは話題を変えたいのかイタズラっぽい笑顔で、


『それよりさ?さっきのチョコ渡すセリフと雰囲気すっごい良かった!

立花くんにそう言って渡したの?』


『ぶふー!』


私は飲んでたコーヒーを少し吹き出した。

木多ちゃんは嫌な顔しながら、テーブルを拭く。

ごめんだけどさ、急にそんなこと…!


『成実ちゃん位巨乳可愛くって側に居るのに気付かないなんて香椎玲奈どんだけー?…で?なんて言って渡したの?』


『…それは…』


☆ ☆ ☆

チョコ渡したよ!side成実


あーしはちょっと自分からチョコどうぞ?って言えなくってモジモジカバンを持ったり下ろしたり…してるとね、立花が嬉しそうに、



立花『こないだ言ったチョコ?』


あーしは恥ずかしさを誤魔化したくって早口に、


『あー!覚えてるん?

そっかー?やっぱ忘れて無いかー?』


立花は微笑みながらカバンを見てる…そんなに楽しみにしてたん?

あたしのチョコだよ?


『そりゃそうでしょ。』


あたしはその言葉がうれしいやら恥ずかしいやら…きっと真っ赤になってたかも。真っ赤な包装の箱を胸に抱いて深呼吸して、出来るだけ自然に義理チョコだよ?って自然さで両手で手渡す。



『特別サービス!

立花とは長い付き合いだけど、生まれて初めて作った手作りチョコレートだよ!』


余裕のある笑みを浮かべながらね。



立花も両手でうやうやしく受け取る。

殿様から褒美を頂く侍みたいだった。


『有り難き幸せ!』


このチョコを作る時の大変さ、渡す緊張やドキドキを一言言わなきゃと思って、


『ほんとだよ?私の初めてだよっ!』



※立花視点だと伊勢さんが照れながら必死に渡したのがわかりますが、伊勢さん視点では誤魔化せた!自然渡せたと思っています。


☆ ☆ ☆

それを聞いた木多ちゃんは、



『あまーい!いいな!JK!

なんでそれで進展しないのー!』


『…あーしと立花はそんなんじゃ無いし?』


木多ちゃんはあたしに向き直って、


『今回手作りチョコ作ったのは私との交換が半分、立花くんにあげるためが半分。

ううん、立花くんにあげるのが目的でしょ?』


『…うう。』


木多ちゃんの追求にとっさに答えられないあたし。

木多ちゃんはため息ついて、いいな。そういう恋をしたい。

ため息つく木多ちゃん。


『いいな、JK。

でもさ?いいの?JK?

その思いを、気持ちを伝えなくって?前に進まなくって?』


あたしは答えられない。

木多ちゃんは真剣に言ったから。

木多ちゃんはフッと表情を緩めて、


『やっぱり成実ちゃんの側に私が居なきゃダメだね…。

ううん、私は成実ちゃんの側に居たい。』


うん?

木多ちゃんはまた真面目な顔で宣言した。


『成美ちゃん、私は来月東光高校受験する。』


『ええー?!』


びっくり!去年の事件から一年。

しばらく抜け殻だった木多ちゃんが?高校行く気になった?!

しかも東光高校?!


『私は成実ちゃんと同じ高校行きたい。

一緒に卒業は出来ないけども前に進む。

そんな勇気を貴女に貰ったから!』


『…良いと思う!良いと思うよぉ!』


あたしは木多ちゃんに抱きついた!

ビックリして嬉しくって夢中でぎゅーって!


バンバン!私の背中が叩かれる!


『はぁはぁ…そのおっぱい…凶器だよ?

はぁはぁ窒息するとこだったのにちょっと幸せ感じた…!』


木多ちゃんは照れを隠すように、真っ赤になりながらあたしのおっぱいを叩く。

痛いし!

…私立でうるさいお嬢様学校の麗䕃は事件起こした木多ちゃんに厳しいと思う。

公立で自由な東光の方が多分向いてる!

私は親友の復活が嬉しくて嬉しくてまだ早いけど春が来たような気がした。

また木多ちゃんと一緒の学校へ行ける…!

その日も時間ギリギリまで語り合った。東光のこと受験のことあたしの夢のこと。話はいつまで経っても尽きなかったんだ。


☆ ☆ ☆

今日の誤字


成実がチョコ渡すシーン。


あたはその言葉がうれしいやら恥ずかしいやら…


×あたす

⚪︎あたし


急に成実が訛りだしてた(笑)

訛りで脳内再生余裕でしたw

これはこれで可愛いかも?


☆ ☆ ☆

そんな成実の心境と木多ちゃんが前に進むはなしでした。


成実は不遇な女の子です。

中学時代は第2ヒロイン枠だったのに、高校進学で紅緒永遠登場でとわんこの親友ポジになってしまって登場人物紹介でも友達枠に居る不遇さw


派手な巨乳美人ギャルだけど内面はよわよわで乙女。友達思いで気が効く健気な女の子。

承に武将と同じ名前!って指摘されて以来の関係で承は香椎玲奈と同じだけ信頼しているけどいかんせん香椎玲奈が強すぎる…!

彼女はこれからどう成長して素敵な女性になっていくのか一緒に注目して頂ければ幸いです。


書いててノッて長めになっちゃいました、HJM3さんいつもありがとう!

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