第321話 お出かけの帰り道
ひー『でんしゃ♪ばーす♪ばすでんしゃー♪』
自作の今日の移動手段の歌を歌う幼児。
望『こってりらーめん♪岩のり、煮卵トッピングー♪
…ゆーりんちーはシェア?』
その幼児と同じ曲調で遅めランチの希望を主張する望。
帰りバスもニコニコひーちゃんに兄姉は目尻が下がる。
植物園でお土産に買ったキーホルダーをリュックに付けてひーちゃんご機嫌!
20分ほど揺られて俺たちはターミナル駅に戻る。
そして駅前のお気に入りのラーメン屋さんへ向かう。
13時ちょっと過ぎでまだ混んでる。
でも俺たちもたこ焼きやポテト摘んでるから?問題無く待てる。
…それでも匂いでお腹空いてきた!
15分ほど待って、テーブル席へ案内される。
俺とひーちゃん、望で振り分け。
店員さんにひーちゃんが注文する。
ひー『…おこさまラーメンください!』
店員『ジュースは何が良いかな?』
ひーちゃんは慌てる、
ひー『ええ?!ええと…りんごジュースがいいです。』
良く出来ました、頭を撫でて続きを言うよ、
『こってりラーメンセット!麺大盛り!』
望『こってりラーメンに岩のりと煮卵と…』
俺は口挟む、
『油淋鶏セット。』
望『…今日の兄ちゃん格好良い…♡』
現金な妹なんだよ…。
油淋鶏単品とセット値段30円しか変わらないなら?小鉢とライス分お得じゃ無い?食べ切らなきゃ俺が残り食べちゃうし。
望『やった!』
昨日香椎さんに言ったけど…俺最近いくらでも入っちゃう…だから残す事は無い(断言)
10分ほど待つ。
ひー『まだかな?あ!ちがうとこ…。みんなおなかすいてるもんね?』
隣のひーちゃんは嬉しそうにラーメンを待つ。
望は注文終わったのにまだメニュー見てる。
そうこうしているうちにラーメンが届く!
店員『お子さまラーメンのお客様♪はい、リンゴジュースとおまけのシャボン玉セットです♪』
ひー『はい!ぼくです!ありがとうごじゃいます!』
噛むひー。
店員お姉さんもニコニコ!
俺と望のこってりラーメンセットも続々配膳される。
『『『いただきます!!!』』』
ラーメンはいつ食べても、いくら食べても美味しいんだけど、
最初の三口が至高だと思う。
キタキタ!ってあふあふガッつく一口目!
一口目で味を確かめてからの味わいながらの二口目、
二口食べて冷静に麺の食感やスープの風味、旨みを理解する三口目。
それ以降もおいしいんだけどさ、最初の三口が最高。
望『ずるずる!ずるずるじゅる!』
話し聞けよ…。
ひー『…ちょっと水入れたい…。』
猫舌ひーちゃんは水を入れてヌルくしたい。
でも、お店でそれは失礼でしょ?
小鉢に麺を移して冷まして食べるよう指導する。
ひー『ねえちゃんすごい、あつくないの?』
望『熱い!…だがそれがいい!』
望は、はふはふ食べている。
油淋鶏も黒酢仕立てで揚げ物だけどさっぱりしてるから美味いんだよね。
ひーちゃんの食べるの見て、サポートして、時々ふーふーして、
食べ終わる頃、望はこってりラーメン、岩のり煮卵トッピング、シェアするって言ってた油淋鶏セット完食した。
結構な量あったはずだけど…まあ望だしな。
紅緒さんもこれくらいペロリと食べるよね。多分香椎さんも。
美味しかったな!
スープまで飲んじゃった。
またこようね。
三者三様のコメントをこぼしてお会計。
支払いが済むとひーちゃんが店員さんに、
ひー『ラーメンごちそうさまでした!おいしかったです!』
…店員側からするとくすぐったいけど嬉しいんだよね。
3人で外に出る。
ラーメン食べた直後の外の寒さは気持ちいい。
あー、たまんない。
外で伸びて、ゆっくり歩いてすぐそこターミナル駅へ移動する。
ひー『にいちゃん、しゃぼんだませっと…。』
大事そうに持ってるお子さまラーメンのおまけ。
ひーちゃん?リュック買ったじゃない?
ひー『あ!そっか!ぼくわすれてた!』
ひーちゃんは担いだリュックを下ろして、シャボン玉セットを大事そうに入れたんだ。
俺はその様子を見て企む、
『最後に?お菓子の量り売り行こう!』
ひー『はかりうり?』
ひーちゃんはキョトン顔。
望は良いね!って顔してひーちゃんを駅ビルへ誘う。
ひー『わー!しゅごい!』
駅ビルの3階にある、お菓子量り売りのお店。
でっかいタンクみたいなのに入った、色とりどりの飴、ラムネ、チョコ,マシュマロ、ガムがグラム幾らで売られてる。個包装やセットもたくさん!
ひー『あー!ぼくどうしていいかわからない…!』
一面お菓子と、キラキラの包装や色とりどりの駄菓子たちにひーちゃんパニック!
近所おばあちゃんの駄菓子屋さんとはちと違うよね?
望の説明にひーちゃんはやっと正常運転!
時間をかけてゆっくり選んで、
ひー『いいの?にいちゃんこんなにおかしかっていいのー?!』
ひーちゃん大興奮!
望『お父さんとお母さんに内緒!
嘘じゃないよ?兄ちゃんと姉ちゃんとひーちゃんの秘密♡』
人差し指を唇に当ててパチンってウインク。
…こういう仕草を伊勢さんから吸収してるんだよね…?
ひー『ひみちゅ…。』
このお菓子は3人でこっそり、少しずつお部屋で食べよう?
毎日少しずつ、分け合って。
大きな袋にみっちり入る色とりどりお菓子たち。
ひーちゃんはそれを嬉しそうに見つめると、
ひー『ぼくもつ!もちたいよぅ!』
じゃ、お願い?
ひーちゃんのリュックは荷物でパンパン!
大丈夫?ひーちゃんはへいき!って涼しい顔。
ターミナル駅から電車に乗って新川駅へ向かう。
はしゃいでたひーちゃんもはしゃぎすぎてもう眠そう。
…こくん、こくん…すぴー。
寝ちゃったよ。
俺と望は顔を見合わせ微笑む。
…うちの弟まじ天使。
望『ひーちゃん楽しかったかな?』
『楽しかったみたい。』
望『ふふー!弟が喜んでくれると嬉しいね?』
俺は望の頭を撫でる。
『妹が喜んでも嬉しいよ?』
望はニッコニコしながら、
望『やーい!兄ちゃんのシスコン!』
『…何が悪い?』
望『悪くは無い、けどキモい。』
『今晩から毎日、怖い話しと妖怪図鑑の恐ろしい妖怪の話を電気消してからする。』
望『…ごめんて。やめて…。』
望と笑いながら帰る。
駅に着いて、ひーちゃんをおんぶして家へ歩く。
望はひーちゃんリュックを担いでいる。
ひー『…ねちゃった…ててつないでかえろ?』
ひーちゃんがリュック担ぎ直して3人で手を繋いで帰ったんだ。
…きっといくつになっても、大人になっても今日の事忘れ無いんだろうなぁって思う。
思い出が色褪せて、朧げになって、記憶の山に埋もれても。
きっとなにかきっかけがあれば思い出すだろう、
高校生の俺と、中学生の望と幼稚園児のひーちゃんでお出かけした事を。
いつかあんな事あったね?大人になって語り合う日が来るのが待ち遠しい。
15:00過ぎ、冬は日が短くてそんなセンチな事を思い浮かべちゃう。
☆ ☆ ☆
帰宅後、夜。
ひーちゃんが3人で寝たいって言うからまた布団を並べる。
ひーちゃんはパジャマでニッコニコ!
リュックを取り出して、今日の宝物を確認する。
ひー『くるまのりゅっく♪えほんにさつ♪きーほるだ!
しゃぼんだませっと!おかし!たくさん!』
ひーちゃんご機嫌!
布団に広げてご満悦!
一回取り出して、またもう一度リュックに仕舞う。
ひー『まだ!まだたこやきにおいがするよぅ!』
ひーちゃんはご機嫌で笑い転げる!
絵本を読んで貰って、耳掃除してもらうともうおねむ。
ひー『…きょう、たのしかったな。
…ねちゃうのもったいない…。』
紅緒さんの事を思い出す。
彼女も明日が来る確証が無いって眠るのを怖がっていたし、明日に持ち越したく無いって考え方をしている。
不安があるの?心配なの?
紅緒さんの話しを聞いてからひーちゃんの身に…って考え無い日は無い。
望に紅緒さん話はしていない、心臓が悪くて長期入院してたとだけ。
『大丈夫、ねんねしな?』
不安を無視して、ひーちゃんおでこと髪を撫でる。
ひーちゃんは気持ちよさそうにしてるけどリュックを抱きしめて、
ひー『…ぼくのたからもの。
にいちゃんとねえちゃんがえらんでかってくれた、たからものだよぉ…。』
望『…寝た。ひーちゃん大満足の1日だったみたいだね?良かったね?』
望はまだお風呂上がりでホッカホカだから半袖Tシャツとホットパンツっていう露出度高い格好で布団でゴロゴロしている。
『だな。これで三連休終わり!』
望『デート三連戦お疲れ様でした!』
真面目に言われるから俺も真面目に、
『お粗末様でした!』
望『まあ?妹も混じってたけどさ?かなり綺麗どころと三連デートはすごく無い?』
しゅごい。
『…こんなの続いたら死んでしまう。』
本音だよ!疲れた!
2月も下旬、もうすぐ期末テストで、高校一年生も終わりが近づく。
そんな事を考えているとすぐに眠くなってしまう。
俺も疲れているのかな?眠りの神様の誘惑に耐え切れるはずも無く、意識を手放した。
…この三日間の幾つもの笑顔を思い浮かべて。
☆ ☆ ☆
ひー『いってきまーす!』
ひーちゃんはお母さんに送られて幼稚園へ登園する。
誇らしげに昨日買って貰ったリュックを背負って!
登園すると同じクラスの可愛い女の子ニナちゃんがやってきた。
ニナ『ひーちゃん♪
…リュック新しいね?格好いいね!』
ひー『えへへ!わかる?
たからものなの!』
ニナちゃん苦手なひーちゃんも新しいリュックを褒められたら嬉しくて饒舌になっちゃう!
連休明けひーちゃんご機嫌でニナちゃんも嬉しい!
ニナちゃんも連休楽しかったから話し盛り上がりたいよー!
ニナ『ひーちゃんはお休みどこか行った?
わたしは遊園地とお買い物行ったの!』
ニナちゃんは喜色満面の笑みを浮かべる!
ひーちゃんも負けない!
ひー『よかったね!ぼくもたのしかったよ!
でーとしたんだもーん!』
ニナ『…は?』
ニナちゃんの顔が急に劇画タッチになったのでひーちゃんは怯えて逃げ出した!
しかし回り込まれてしまった!
ひーちゃんは思った。
ニナちゃん…やっぱりにがてなんだよなぁ…。
このあとひーちゃん質問攻め!
ニナ『…ビックリした…。』
ひー『ぼくのほうがびっくり…。』
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