第320話 植物園!

バスは昨日同様、植物園に着く。

昨日バスで会ったお婆さんに今日も出会い、違う女の子連れてる!って叱られた…。


望『でも、兄ちゃんは3日連続違う女の子とデートする屑おとkふがふが。』


俺は望の口を塞ぐ。

事態をややこしくするな!


バスは植物園へ到着!

お婆さんに手を振ってバスを降りる。


望『兄ちゃん屑男に見えたんじゃん!』

ひー『にいちゃんはくじゅじゃないよ?』


くじゅ…噛むひーちゃんも可愛い。


全面ガラスのドームに温室がいくつかくっ付いた格好いい建物にのぞひー大興奮!


ひー『しゅごい!』

望『格好いい!でも寒い!早よ入ろう!』


入場券を買う…ひーが買いたいの?


ひー『おねえさん、こうこうせいいちまい?ちゅうがくせいいちまい!ようちえんじいちまいください!きょうだいです!』


お姉さんが目を細めてひーちゃんに切符を手渡す。


ひー『かえた!きっぷぼくがもちたいよぅ!』


そのまま切符をひーちゃんが持って中へ入る。

中は昨日同様暖かく、望は安心した表情。

寒いの苦手だもんな?


水槽の水中植物を見た後、チューリップやマリーゴールドの花壇のある温室へ向かう。


ひー『ここにははるのようせいがいつもいるのかな?』

望『電気代とか灯油代エグそう。』


ひーちゃんのコメントの方が明らかに優秀です。

のぞひーはキャッキャ言いながらチューリップの写真撮ったり、花の匂い嗅いだり、手を繋いで花散歩を楽しむ。

冬にお花見ると心が暖かくなるね!お花がキレイなのは一生懸命に咲いているからだね?

望はさっき俺にコメントダメ出しされてから良い言葉言おうと躍起になってる。


そんなハートフルな時間を兄妹弟で過ごす。

そしていよいよ、滝のある熱帯植物コーナー!


ガラス張りのドーム入り口でニパッって笑い合うのぞひー。

兄ちゃんは妹と弟にその顔させたい。

そのためなら何でもしてやりたい。



椰子の木や南国の木が植えられてふたりはウキウキ!

いよいよ近づくよ。

ゴゴゴゴゴ!って水の落ちる音がする。


望『結構本格的な音がする!』

ひー『たきってこんなおとがするの?』


あの曲がりくねったとこ過ぎると大きな岩山があるよ?そこだよ?


ダッ!


こら!ひーちゃんが小走りで走りだす?


望『ダメ!ひーちゃん走っちゃ!』


望もニヤってこっち見て走りだす!

捕まえるから!って顔。俺は頷く。


先行する妹弟を追いかけて歩く俺、昨日のドキドキに比べて心落ち着く事よ…!

昨日の香椎さんは…肌色多め、太もも露出、肩丸出しの胸の形丸わかり…。


『こうこうせいにはしげきつよい。』


ひとり呟く。

先行したのぞひーの音がしない?


我に帰り、滝へ急ぐ。

曲がりくねるルートの先にふたりは居た。

惚けるように滝を見上げて、


のぞひー『…。』


やっぱ、姉弟なんだよね。

…同じ顔してる。

ポカンと何これ?!すご!って顔。


望『兄ちゃんスマホの写真撮るの下手なの?!昨日の写真の倍位はあるじゃん!』

ひー『おもってたよりおおきい。

ぼくながされたらしんじゃう…。にいちゃんのせつめいとちがう。』


喜んでいるはずなのに何故俺がディスられているのか?

望はもうちょっとしょぼいチョロっとした滝だけど室内施設で見れる、暖かい、花見れるでここで良いんじゃない?って思ってたらしい。

高低差5、6mはあるこの規模の滝があるとは思わなかったんだって。

俺も昨日びっくりしたもん。


ひーちゃんは呆然と滝を見上げている。


ひー『しゅごい。』

望『しゅごいね?』


首痛くなるよ?

ふたりはしばらく滝を見上げていた。


俄然、岩山の雰囲気に洞窟も期待が高くなったのかひーちゃん興奮気味!

…興奮状態もあまり心臓に良くない…。


『待て!まだひーちゃんステイ!』


ひーちゃん『…。』

※目をキラキラさせながら待ってます。


望『ワンちゃんじゃないんだから。』


『…とわんことの癖が出ちゃった…。』


望は首を傾げて、


望『え?永遠ちゃんと?永遠ちゃんとそうゆうプレイしてるの?

高校生えげつない…。』


ひー『えげつない?』


ひーちゃん悪い言葉教えるなって!

それでなくても望はひーちゃんにちんちんって言葉を連呼させたりロクな事しないんだから!

58話弟のお迎え 参照。

※懐かしい(笑)香椎さんが『ちんちん』を連呼してましたw



望『もう!小学生の頃でしょー!

今は!もう!可憐なJCにクラスチェンジしました!』


『蛮族とかじゃないの?風呂上がり半裸で動き回って!』


望『蛮族じゃ無いですー!お嬢様ですー!』


唇を突き出してぶーぶー言う妹。


『お嬢様は無い。もう一回目を見て言ってみろ?』


望『…お嬢様は言いすぎた…。

可憐な乙女だもーん!』


可憐な乙女(自称)はそう言いながらスラッパーちゃんをハイソックスから抜く。

…アレめっちゃ痛いんだぜ?

公共の場で何する気だこのクソガキ!


望『なーに、峰打ちだよ?』


元々打撃用なんだから峰打ちしか無いじゃん!

またあの!視認出来ない超速の屑龍閃とやら…!

アレ食らったらまずい、絶対痛い。

ご機嫌でその技見せてきたけど俺には見えなかった。

音だけブバヒュ!みたいな複数発なんだってことしかわからんかったやつ。


望『…兄弟には使えぬ技もある…。』


『また格闘漫画に影響受けて…?』


紐でも切るの?兄は医者じゃ無い。兄弟に使えぬ技を兄には振るう猛獣。


ひー『にいちゃん!ねえちゃん!どうくつ!どうくついこうよ!』


ひーちゃんに急かされ、しぶしぶ兄妹ケンカは収まる。

危なかった。スラッパーちゃんマジで痛いんだぜ?

芹ちゃんだっけ?望の親友は何を思って凶器を与えたのか…。


洞窟に入り、食虫植物展を見る。

…面白いけど昨日見ているから感動が無い。

でも、ひーちゃんワクワク感と望の興味津々顔だけで俺は楽しい。


ひー『どうくつ…しゅごい。』

望『本当にハエ食べるのか…!』


ふたり熱心見てるから職員さんが実演して見せてくれる。


ひー『あー!あー!ハエさん!ハエさーん…ハエさん…。』

望『すご!あー!ジタバタ…!なんか見てられない…。』


見てられないのに。見てしまう不思議な魅力。

それが食虫植物。


植物を見ながらも洞窟の雰囲気は暗くてジメジメしてゴツゴツして、

もちろん整備された偽物の洞窟なんだけどひーちゃんは興奮しきり!


ひー『かっこいい…どうくつかっこういいよぉ。』

望『海賊の宝物とかあったら良いのに。』


植物園に何を望むのか?

とにかく洞窟の雰囲気が最高気に入ったひーちゃんはもう一回まわりたい!

って言うから、おやつ食べてからにしよう?って伝えて世界の蘭展を見て、昨日お弁当食べた公園の温室へ向かう。


やはり昨日座ったベンチに座り、ひーちゃんのリュックからたこ焼きとフライドポテト、持参のお茶入り水筒を取り出して皆んなで摘む。


ひー『たこやき♪たこやき♪

ぼくたこやきだいすきだよ!』


望『ひーちゃんはたこ焼き好きだね?』


『熱くなければね。』


もう購入後小一時間経ってるからほのかに温かいって程度。

かかってる青のりや鰹節はしんなり。

でも?


ひー『おいしいよぉ!たこやきおいしー!』


望『どれどれ…うまし!』


しんなりしちゃったフライドポテト摘みながら、洞窟が!滝が!ハエトリソウが!なんて語り合う。

ひーちゃんは滝と洞窟が最高だったらしくてもう一度帰りに見てから帰ることになった。…俺も昨日そうだったし。


ひー『…たこやきおいしいなぁ。たのしいからかな?

すっごいおいしいな。

…にいちゃん、ねえちゃんありがとう。』


お礼を言えるひーちゃんは流石だよ。

望は熱心に容器のはじのマヨや鰹節を削いで食べてる。

…食いしん坊だなぁ。


このあと、もう一度滝と洞窟を見て俺たち兄弟は帰途につく。

あとはターミナル駅で遅めランチ食べて家へ帰ろうか?

ラーメンで良い?


ひー『ラーメン!ラーメン!』

望『ラーメン!ラーメン!』

俺『ラーメン!ラーメン!』


結局似たもの兄弟なのだよ。

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