第316話 のぞひーとデート
別れ際の玲奈さんの固い寂しい表情を思い出して漠然とした不安を胸に抱きながら、16:00過ぎに家に帰る。
家に帰れば俺は『兄』って立ち位置。
すぐに妹と弟に揉みくちゃにされる。
ひー『にいちゃんおかえり!』
望『早くない?デートにしちゃ?』
『ほら、かしちゃんがくれたよ?』
俺は今は話したくなくて容易に餌付けを行うし、下の子達は餌付けられるの大好き!
ひー『わーい!なに?なにかな?!』
望『…重い…絶対美味しいやつだやった!』
夕飯前だけどガトーショコラを切って三人で食べる。
ひー『おいしいね!ちょこけーき!』
望『これはガトーショコラって言うんだよ?濃厚でしっとり♪』
ひー『…これがのうこう…!
こんなすてきなケーキくれるなんてかしちゃんでーとたのしかったのかな?』
ひーちゃんはモグモグにこにこ。
望は唸りながら噛み締めてる。
俺はいつも妹と弟に癒される…!
そうだよね?今日は楽しい1日だったんだよ?
俺はさっきの不安を払い除ける様に笑顔で話す。
『俺たち今日植物園行ってきたの。』
望はえ?って顔して。ひーちゃんは植物園って何?って顔して。
望『植物園?枯れた年配夫婦じゃないんだから…?』
『ところがだ。こんな感じで…。』
俺はスマホで写真を見せる。
望『えー?お花いっぱい咲いてる!暖かいの?!』
※望は寒がり。
ひー『…たき?!たきしゅごい!どうくつ?!どうくつあるのー?!』
『香椎さんの手作り弁当がな?
それは美味しくて美味くて…
…圧倒的な量が…。』
これも写真を撮っていたから見せる。
でも思いの外植物園に食いつくのぞひー。
望『良いな!良いな!』
ひー『ぼくここいきたいよぅ!
にいちゃあ!おねがい!ぼくどうくつとたきみたいよぉ!』
『え?いや?
兄ちゃん今行って来たばかりだし…?』
ひー『しょくぶつえん!しょくぶつえん!』
望『私も行きたい!植物園行きたい!どうせターミナル駅まで行くけどノープランだったじゃん!ひーちゃん!バス乗れるよ!』
ひーちゃんはうっとりした表情で、
ひー『あしゅはでんしゃのってばすものれるのか…。
…はやくねたほうがいい?』
デート3番勝負の最終日、
VSのぞひーは植物園を連戦になりました。三連休3日目。とは言え2日連続のデートは俺の精神をガリガリ削り取ってたらしくって。
昨夜も早々に寝ちゃった。
三人で寝るからいつもの布団2枚敷いて、三人で。
望『兄ちゃん?兄ちゃんってば!』
ひー『にいちゃん!にいちゃーん?』
『…むにゃむにゃ。』
…。そんなだったはず?
ぼんやりした記憶。
壁時計を見るとまだ5時…もうちょい寝よう。
しかし身体痛い…。
それもそのはず、右にひーちゃん、左に望を腕枕して寝てたんだね…。
…どっちも可愛いんだ…。
ふたりは兄ちゃんの宝物…俺はそのままもう一度眠りにつく。
…。
…。
…。
…!
…!!
うるさいな…?なんだよ?
望『デート!デート!』
ひー『でーと♪でーと♪』
なんか俺中心に円を描くように踊る妹弟。
俺生け贄にされちゃうの?
なんか奥地の生け贄文化の原住民みたいに奇声発する二匹。
『…10時出発じゃ無いの?』
ひー『ぼく!まちきれない!』
望『可愛いひーちゃんがこんな楽しみにしてるよ?
早よ!早よ!』
『まだ6:30じゃない。』
妹弟急かされて朝食後少ししたら支度する事に。
朝ごはん中に家族に植物園へ弟妹連れていくって言ったら、
祖父『承くん、これお小遣い。』
『え?良いの?』
祖父祖母から援助金が出た。
最初断ろうと思ったけどひーちゃん何処か連れて行ってやりたかった、さすが兄ちゃんだねって頭撫でられた。
きっと祖父祖母から見たら俺もひーちゃんも大して変わらないのかも知れない。
俺は弟妹の分も好意をありがたく頂いた。
9:00、予定より早く家を出る。
俺、ひー、望で手を繋ぎ歩く。
ひー『あるこー!あるこー!』
望『私も元気ー!』
歌詞違うだろ。
冬で寒いけどひーちゃんはモコモコのクマさん上着に耳あてまで付けて防寒バッチリ!
植物園で脱げるように対策もしてある。
望は薄紫のダッフルコートにセーターにフワッとしたスカート。
それに厚めなハイソックス。ズボンにした方が暖かいんじゃ?
望は伊勢さんそっくりのポーズ決めて。
望『今日はデートだもーん!兄ちゃんに恥をかかせられないよね?』
ひー『でーとだもーん!』
ふたり『『ねー?』』
ふたりはすっごい楽しそう。
…そうか。バイトするようになって休みの日のお出かけ連れて行く回数減ったかも知れない…。
妹も弟も寂しかったのかな?毎日一緒に居るけどお出かけはまた別かも知れない。
笑いながら新川駅に着く。
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