第313話 あの娘の手料理

ベンチに玲奈さんとふたり座る。

俺と玲奈さんの間にこれでもか!と敷き詰められる玲奈さんの手料理。

主食、

おにぎり7個、サンドウィッチ食パン5枚分。

おかず、

唐揚げ、ミニハンバーグ、唐揚げ、卵焼き、プチトマト、ちくわにきゅうり入れて輪切りにしたもの、ポテトサラダ、きんぴらごぼう。

結構あるね?

ビビってないよ?…でも残したら玲奈さんが悲しむ。

…そんなこと出来ないでしょ?

玲奈さんは適当に摘むって。

…玲奈さんは試食してるからそんなに食べないって…。


俺結構TVチャンピ⚪︎ンで大食い大会見てるからね?

そう言えばフードファイターの人が言ってたっけ…最後は気合い。


『いただきます!』


両手を合わせて、命と玲奈さんに感謝を捧げる。

玲奈さん、不安な顔するなって!

こんな美味しい料理ペロリと平らげちゃうぜ!



意を決して、プチトマトから食べる。


『それはね?うちの温室でママが作ったプチトマトだよ!』


『ジューシーで甘みある。』


むしゃむしゃ食べながらペースを考える、

本当は家では野菜よく噛んで食べてからご飯!って言われる。

…なんだっけ?血糖値?満腹中枢?そんな理由。

今日はちょっと違うでしょ。揚げ物、ミニハンバーグの気分転換に野菜系は間に食べた方がいいって思う。


じゃ!早速!唐揚げ!

俺唐揚げもハンバーグも大好き!

多分覚えててくれて?作ってくれたんだろうなぁ。


カリッと揚がったもも肉の唐揚げ。

…揚げ物って難しいと聞く。玲奈さんすげぇ。


一口齧れば肉汁が口の中に溢れ出す!

カリッとジュワッと冷めてるのに美味しい!


『美味い…。』


ため息混じりに玲奈さんの目見ながら言う。

目を見れば嘘言って無いの玲奈さんにはわかるはず。

…って言うか玲奈さんに面と向かって嘘突き通せるはずがない。


玲奈さんは俺の食べる様子を固唾を飲んで見守ってた。

俺のつぶやきに、


『…良かったよ…食べられるだけで良いよ?好きなだけ食べて♪』


『遠慮なく…。』


世の中には食べ物を食べられないレベルまで調理するヒロインも居ると言う。

食べたら死にそうな劇物を主人公はヒロインへの愛の為に身体は拒むが気力で食べる…そんな事もあると言う。

…好きな娘が手料理振る舞ってくれて不味くたって完食するのが漢だろ?

だったら俺は幸せ者だよね、こんなに手料理美味しいんだもん。

…ただ量がバグってるだけで。


唐揚げが12個、ミニハンバーグ10個。

4人家族位のお弁当じゃない?


食べるペースを組み立てる。

水は最低限!後からキツくなる。

フードファイターの人が言ってた、よく咀嚼した方が胃の隙間が作れるって。

丸呑みは消化が悪いし後から来るって!

炭水化物系は特に唾液でも分解する要素あるから咀嚼はしっかりした方が良いって言ってた…。


☆ ☆ ☆

大食いTV見ながら、


望『ほえー。なるほど!

大食いする時参考にするね!』


『…いつするんだよ?』


望『この辺には無いけどデカ盛りの店行ってみたくない?』


『一回行って見たいけど…な?

流石にアレは無理でしょ?こんなノウハウいつ使うんだよ!』


望『まあね。あー美味しいモノお腹いっぱい食べたいな!

お金の心配しないで!』


☆ ☆ ☆


…妹よ、お金の心配は無いけどまた違う心配が出てきた。

サンキュ望、ノウハウ聞いといて良かったー!


俺は美味しい唐揚げをむしゃむしゃ食べながらそれをおかずにおにぎりを食べる。


『美味しい?』


玲奈さんはまだ心配そうに聞いてくるよ。

俺はニカって笑って親指立てて!


『美味しい!玲奈さんの手料理最高!』


『嬉しいな!まだまだあるからね?』


うん、本当に美味しい!

唐揚げおかずにおにぎり最高。

おにぎりは梅、鮭、ツナマヨ。


合間にちくわきゅうりをかじる。

清涼感あるよね、きゅうり。


『ふふー!承くんが好きな卵サンドとハムサンド!』


『それどっちも美味いやつ!』


卵サンドはお遊戯会の時にも食べたけど刻み玉ねぎと少しカラシの入った逸品!

ハムサンドもハムとレタスに粒マスタードが挟まった絶品!


『どっちも好きだわぁ。』


『ふふー!そう?嬉しいな!』


みるみる減っていくお弁当に不安顔だった玲奈さんいつのまにかニコニコ!

…この娘は人の喜ぶ姿を見るのが大好きなんだよね。

その為に損したり、自分が頑張れば良いって思っちゃう素敵な娘。


合間にポテトサラダを食べるけどこれが濃厚で旨みが強い…!

あ、この濃厚さはちょっと…。


『おいしく無い?』


不安な顔するなって!


『ううん、濃厚で口当たり良すぎて何が入っているのか考え込んじゃった…。』


『ふふー!それはね?下茹でしたジャガイモに…』


意外とマヨネーズが重い。

…玲奈さんは上機嫌で解説してるけど今は正直それどころじゃ無いぞー?


『卵焼き…だし巻き玉子?』


『うん!出汁が入ると焦げやすく、水分が増えて時間かかるからこの中では時間かかる一品だったよ!』


うちの卵焼きは甘めって何処かで話したかも?玲奈さんきっと新しい味に挑戦したのかな?主婦ならわかる。

でもまだ高校生で、忙しくって学業も優秀、テニスも優秀本当に玲奈さんはすごい。…凄すぎて気後れする部分がある。


サンドウィッチを完食する頃、きんぴらごぼうを食べて一通り手を付けた。

きんぴらだけは違うテイストだった。


『最近知り合ったお姉さんから教わったんだ。ポテトサラダもだね。』


へー。交友関係広いもんなぁ。

最近大人の友人が出来てキッチンスタジオで料理会やったんだって。キッチンスタジオ?すげぇ。

※ご存知婚約関係の話しです。


食事開始から25分。


卵焼き、きんぴら、プチトマト、ちくわきゅうりは合間にアクセントとして使った、使い切った。

サンドウィッチもお茶で最後は流し込んだ。

まだおにぎりが2個、唐揚げ4個残している。


時間かけて焦らずここまで良いペースで食べてきた俺。

玲奈さんはおにぎり2個、サンドウィッチパン2枚分食べて、手が止まってる。

自分で言うのもアレだけど見事な食べっぷりに玲奈さんは嬉しそうにニコニコして頬は上気してる。


『あとちょっと♪完食しちゃうね♪』


胸の前で手をぐーにしてリズミカルに揺すっている。

…うん、さっきから胸揺れてる。

タイトなニットワンピは玲奈さんの身体のラインをくっきり浮き出していて、

前から思ってたけど玲奈さんはすっごい細い。

でも、必要なところには絶妙な肉付き…今は正直それどころじゃない。


胸より太ももよりくびれたウエストより、

今大事なのは鶏ももの唐揚げだろ。


『あー!美味しいな!

いくらでも入る!』


傾けかぶけ!俺!

好きな子の手料理美味いだろ!

お腹いっぱいなんておくびにも出すな!


唐揚げをむしゃむしゃ、おにぎりもぐもぐ!

でも本当に美味しいんだよ。二食に分けたかった。


そして、最後の唐揚げ、最後のツナマヨおにぎりを残すだけ…。

もう入らないでござる。


…!


一応聞いてみる。


『…れ、玲奈さん?

流石にもうお弁当残って無いよね?』


玲奈さんは上気した頬に潤んだ瞳、何故かうっとりした表情で、


『ふふー!わかっちゃった?

実はまだ…。』


ガサゴサ…トートバッグ空気読めよ!

※言いがかりです。


玲奈さんはにっこり笑っちゃって、


『なーんてね?

もうおしまい。もっと食べたかった?

次があれば…もうちょっと多めに作る?』


俺はまだ出てくる?!からの無かった良かったでちょっと弛緩状態。

真面目な顔で、


『これ以上は動けなくなっちゃうよ。』


それが精一杯、よっしゃ!セーフ!


これでおしまいと思えば限りなく限界の胃袋にも余裕が出てくる。


唐揚げもおにぎりもよく咀嚼して手を合わせる。


『ご馳走様でした!とってもとっても美味しかったです!』


『お粗末様でした。

…本当に食べちゃったね…うふふ♪』


玲奈さんは本当に嬉しそうにニコニコしながら手際良く片付けていく。

ご馳走になったんだから俺も片付け手伝わないと!…しかし身体は動かない。

手を伸ばすと腹部が…!圧迫!


『いいよ!承くんは座ってて?』


玲奈さんは手際良く片付けたり、しまったり。

鼻歌歌いながら上機嫌にくるくる回るように手際良く片付けていく。

向こうの水道で最初に手を拭いたおしぼりを洗いにいくって言い残し少し向こうまで歩いていく玲奈さん。

後ろ姿…やっぱあの服身体のライン出過ぎじゃない?


おしぼりで手や口周り拭いてね?って手渡された紙の使い捨ておしぼりで拭いてると玲奈さんが早足で戻ってきて、


『さっきテイクアウトしたパンあったよ!食べる?』


!!

リバースしそうになった。



俺は冷や汗かきながら、


『あんなに美味しいお弁当食べた後じゃ、食べる気にならないかなあ?』


『ふふー!そう?そうなの?

しょうがないなぁ…♪じゃこれは私がお駄賃に貰うね?』


『どうぞどうぞ。』


この答えは正解だったらしく、玲奈さんはご機嫌!

でも、多分見透かしているんだろうね、



『…無理しちゃって♪』


好きな娘の為にする無茶は無茶じゃないでしょ?


『美味しかったからいくらでも食べれた。

同じくらいまだ食べれるね?』


俺の強がりに玲奈さんはお腹抱えて笑った。

お腹いっぱい!すっごい美味しかった!

ただしもう入らない(断言)


こうして俺のフードファイトは終わった。

辛勝!

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