第312話 熱帯の誘惑

高温多湿の弊害   side香椎玲奈


…暑い。

説明不要だよ…。

熱帯の植物樹木のコーナーで気温は高め。滝を流して湿度も高め…。

そうだった、ここは結構暑いのだ。


今は冬。当然コートなど防寒着を着込んでいるわけで…。

私たちも例外では無い。

承くんはここに入って早々にコートを脱いで畳んで小脇に抱えて、ランチのお弁当入りトートバックも抱えている。


私…コート脱ぎたいな…?

ちょっと汗出てきたし。

でもね?この服…とってもセクシーなの!

ゲームであるよね?レベルもしくは必要パラメータが足りないと装備出来ない武具とか。

…このニットワンピース(しかもタイトでミニ)ちょっと今の私には悔しいけど適正レベル足りないよ!


悪魔お姉ちゃんの陰謀でこれしか着る服無かった…!

もう制服で来たら良かった?

そうもいかないでしょ…。


どうする?

汗びしょ女って思われたく無いよ…。

でも…これすっごいボディライン出ちゃうし、短いし、肩丸出しだし…。

私は葛藤していたんだ。


すると、


『わ!玲奈さん?汗かいてるよ?この後外出たら冷えて風邪引いちゃう。

今だけコート脱いだら?

なんなら俺持つよ?』


紳士的…しかしどうする?




『…下少し薄着だからどうしようかな?』


『あー。』


承くんもこの服装に違和感感じてるよね。

でも汗びちょ女は嫌!この後またふたりで座ってお弁当とかバス乗って接近するんだよ?


背に腹は変えられないよ…。

腹を括って、私はコートを脱ぐ事に決めた。

…脱ぐからには…セクシーに?セクスィーに!


『…承くん…ちょっとあっち向いてて?』


私は辺りに人が居ないことを確認して承くんにお願いする。

承くんはなんで?って顔したけどクルリと後ろを向く。

横のベンチにコートを畳んで置いて、


さっと脱いで、さっとハンドタオルで汗拭いて…。


なんでこんな苦労をしなければならないのか…。

お姉ちゃんめ…帰ったら説教しなきゃ!


☆ ☆ ☆

香椎玲奈をそんな目で見るなんてとんでもない

 


『…承くん…ちょっとあっち向いてて?』


なんでコート脱ぐ位で後ろを?

いや、女の子だから色々あるのだろう。


ここで良かった、もし静かな室内とかだったらさ?

シュル…とか脱ぐ音がして変な想像しちゃうもん。

…しかし…今日の玲奈さん…なんって言うかすっごい色っぽい…。

いや!ダメ!俺は紳士にして賢者!


『ごめん、いいよ?』


『あちゅ…』


俺は微笑みながら後ろを振り返るけど、バチって音を立てるほど目を両手で覆う!


玲奈さん…白いコートを横のベンチに置いてさ?


『髪の先が汗でまとまっちゃった!縛っちゃうね?』


玲奈さん…。

それダメな奴!

ベージュのニットワンピースは思ったより丈が短い。

…それは知ってた。

コート脱ぐとノースリーブなの!肩丸出しなの!

初めて見た…。

つるんとすべすべ。白くて丸くて華奢な肩。

そして微笑みながら両手を後頭部に当てて髪を括ってる…腋ぜんかい!

※承くんが好きなグラビアポーズです。玲奈はわかってやってます。

103話 香椎玲奈は忙しい 参照



俺は両手で目を覆い、後ずさる…。

洞窟の壁にぶつかり、背中をぶつけて俺は床に尻もちをついた。


『はかいりょくすごい。』


口調がひーちゃん…。

去年見た時より…魅力が凄まじい。


『承くん!大丈夫?』


『…れいなさんはすっっごいみりょくてきだからきをつけないといけないとおもいます。』


『ふふー!魅力的って思ってるんだね?』


『ぼくこどもだからよくわからない…。』


『ふふー!行こうか?ひーちゃんのお兄ちゃん?』


俺は玲奈さんに手を引かれる。

引かれるまま手を繋いで俺たちはドームを抜けて、次の温室。

蘭の世界展を見る。

蘭の世界の奥深さと美しさ、その複雑さに心打たれて夢中で展示を見て回る。

でも、俺はさっきより集中出来ない。


…それは俺が知ってる世界で1番魅力的な女の子がずっと俺の手を握っているから。

ずーっと楽しそうに笑っていて、しかも今日はなんかセクシー属性までついている。

…控えめに言って…ポニーテール玲奈さん最高なんですけど…!



たくさん歩き回って、たくさん話して、たくさん笑いあって俺と玲奈さんは最後の温室、公園になっている巨大な温室へたどり着く。


玲奈さんは嬉しそうに景色のいいベンチを選び、俺に座ってと促す。


『さっき言ったよね?言ったからには食べて貰うよ?』


玲奈さんはニッコニコで笑いながらお弁当を広げる。

…まだ出てくる?


…。


…。


…今日俺ひとりとデートだよね?

明らかに多いお弁当。


『…やっぱり多かった…よね?』


不安そうに聞く玲奈さん。

作り過ぎちゃったってわかってはいたんだ…あはは。

玲奈さんは悲しそうに笑う。

大丈夫!残ったらお姉ちゃんに食べさせるし?


俺は不敵に笑う、


『は?俺食い盛りの男子高校生だよ?

これ位丸飲みしちゃうぜ?』


好きな娘が、自分の料理に思うことあって俺が事前にパンを食べようとしたって思って傷付いた。

そんわけない!玲奈さんの手料理は俺の大好物!

きっと俺が喜ぶって思いながら今回も一生懸命作ってくれたんでしょ?

最高じゃん!

玲奈さんは俺に聞く、


『おにぎりとサンドウィッチどっち食べる?

どれ位食べる?』


『両方全部。

あ、玲奈さんが食べる分以外ね?』


フードファイト開始!

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