第311話 花は綺麗
本当に花は綺麗。
冬で雪に緑が埋もれて空も曇天な日々に余計に感じる。
なんて彩り豊かで瑞々しい命の美しさ!
…秘密の花園も見えちゃったし…。
本当に珍しいよね、絶対玲奈さんガードが固くて男子の目線レーダーでも付いているのか?って位の防御力。
突風で香椎さんのスカート捲れて太もも見えた!って興奮してる男子とか居たしね。
私服だってワンピースとかスカートも野暮ったく無い程度に長め好むし、今日の服装のチョイスどうしたんだろ?女子高生になったから?
…女子高生すげぇ…伊勢さんのミニスカートとはまた違う破壊力あるよね…?
『承くんはお花好きなんだね。そんなに真面目な顔して見るなんて思わなかったよ?』
うん紳士…いや賢者でもある…そんな漢…。
そうあらねばならん。
植物園に全集中!俺は色気になんて惑わされない漢…。
あの、香椎玲奈を…子供の頃からの憧れの女の子をゲスな視線で見るものか!
☆ ☆ ☆
え?植物にしか興味無くなった? 【side香椎玲奈】
ふふー!お花に目を奪われる承くん!
可愛いし花を見る目は優しいし、退屈せずに花に見惚れる姿勢にここをデート場所に選んだ私は胸を撫で下ろす…。
…でもね?私が横に行くとすっごい私を意識しちゃってる…。
ちょっと攻めたこの服のおかげかな?
温室のお花コーナーを一通り見終わる頃に異変に気付くよ。
…承くん?承くんお花と植物しか見てなく無い?
ちょっと?承くん!
ここにも見て欲しいお花居ますよー?
※見せる予定の無い花園は見せました。
次の常設展の県内の植物コーナーを見て、
『ありふれた植物だけど南の方には生えてないのか?』
とか
『へー!昔の人はそう言う意図でこの木植えたんだ…!』
…。
うん、正しい植物館の楽しみ方です…。
でもね?さっきから私に話しかけてくる内容が樹木の根っこの話しだけになったよ?
デートでこれはどうなの?そう思いつつも次のガラス張りのドームへ順路は向かう。
多分男の子はここ好きだと思うんだよね?
ドームに入ると空気が違う。
気温は一気に上がり湿度も上がる。
ここはそういった環境植物を展示しているから。
他の温室も暖かいけどこのドームは少し暑いくらい。
『少し暑い位だね。この冬場でこんなに暖かいの?』
『湿度も高いしね?理由はすぐわかるよ。』
『すご!ジャングルみたい!』
ここは熱帯の植物コーナーなの!
いかにも南国!って感じの背の高い樹木が順路の横に植えられている。
ディスプレイもジャングルみたいで承くん大興奮!
きっとひーちゃん連れて来ても喜ぶと思うな?
そして、目を引くのは!
『すっげ!滝!滝流れてるよ!玲奈さん!本物?!』
『人工の滝だけどね。でも結構大きいよね?』
ここの植物館のパンフレットには遠目の写真しか載せて無いけどもっとアピールした方が良いんじゃない?ってほど立派な滝。
岩山のディスプレイから高低差6m位の滝が流れている光景に承くん大はしゃぎ!すごい!を連発してる。
…私も初見でパパに抱きついて連呼したっけ。
『この後順路で滝の裏側通るんだよ?』
『え?!滝を裏側から見えるの?!』
『そうだよ!洞窟の中通って!男の子は洞窟とか好きでしょ?』
『好き!洞窟なの!』
もう!私の事なんてすっかり忘れて滝に夢中になってる承くん。
でもニコニコして目をキラキラさせてる承くんはいつまでも見てられる。
楽しそうで嬉しくなっちゃう。
ヤシの木やアマゾン原産の樹木コーナーを抜けて、いよいよ滝に近づく。
ドーム内は先ほども言ったが暑い。
植えてる木、植物の適性温度が他より高温多湿を好むから。
滝に近づくと湿度が上がって余計にそう思う。
隣の承くんは近づく滝に夢中。
轟音をたてる滝に視線は釘付け!
『あんまり近づくと飛沫で濡れちゃうよ?』
『ひーちゃんに見せたい。』
承くんは夢中で滝を撮影している。
微笑ましい。
順路は滝の横の洞窟コーナーへ。
洞窟の中は曲がりくねって光量は抑え気味。
ここは珍しい苔とか直射日光を好まないけど湿度と気温は必要な植物が多く展示されている。
『ハエ取り草!ウツボカズラ!すご!本当に虫食べるんだ!』
承くんの視界から私は外れつつある…。
ま、楽しんでくれてるから良いか?
私のお気に入りスポットだし、ここ褒められると私まで嬉しいし。
承くんは暑いのかコートを脇に抱えて、ランチの入ったトートバックをぶら下げて楽しそうに見て回る。
そして、
『滝!裏側からだとこんなんなんだー!すっげ!』
承くん大はしゃぎ!また撮影再開!
キャッキャ騒ぐ姿に初めて会った頃の子供の面影が見える。
大きくなって、成長して変わるもの。
でも変わらないもの、あり続ける気持ちや思いがあるよね。
単純そうに見えて承くんはよく悩むし考える。
…いつも夢や自分ついて考える。
その姿勢や行動に感心するし共感する。
私はいつもそんな君の勇気や人の為に頑張る姿を尊敬しているんだよ?
私はしゃぐ承くんに見惚れている。
楽しそうで、嬉しそうで、家族に見せるんだって夢中になってるその姿が眩しくて、可愛くて目が離せない。
…修学旅行のあの時みたい…。
68話 彼に笑顔を 参照
なんか、胸がいっぱい。
いつか…いつか、私もママはね?ここでパパと初デートを…なんて…?
えへへ。えへへ。
『玲奈さん?どうした?玲奈さん?』
気づけば真ん前で心配そうな承くんの顔!
『うわ!どうしたの承くん?』
承くんは不思議そうに、
『玲奈さんこそどうしたの?滝に見惚れていたの?』
『…滝にはマイナスイオンが…。』
私がもっともらしい事を言うと承くんはうんうん頷きながら、
『確かに滝にはなんか人を惹きつけるモノがあるよね。』
違うんだよ、私が見てたのは承くんなんだよ?
私はそうとは言えなくてただただ笑うだけ。
諸事情に雁字搦めな私は自業自得で何も言えないで。
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