第310話 植物園
バスで居合わせたおばあちゃんの冷やかしにふたりして真っ赤になってバスから降りた俺と玲奈さん。
バスから降りると目指す植物園は目の前だった小さい湖の湖畔に建物群と広い公園、ガラス張りの格好良い建物がいくつかで構成されている。
こんなとこに施設あったんだ?
あるとは知ってた。近いけど隣の市で知らなかった。
『ここが植物園だよ!』
玲奈さんはなんか楽しそう!
女の子だもん花とか好きそうだよね。
確かお母さんが温室で野菜と花すっごい育ててるって言ってたような?
県の公共施設だから入館料は結構安い。
『高校生ふたりお願いします。』
受付のお姉さんにお金を2人分支払って入館する。
『本当はね?お外の公園と湖畔の遊歩道はね?
四季を感じさせる季節の花や、樹木で季節折々の景観の楽しめる素敵な散策の出来る散歩道なんだよ?』
ニコニコ玲奈さんかわええ…。
本当に好きなスポットなんだなぁ。
ご機嫌玲奈さん俺もテンションあがっちゃう!
…でも水を差したくないから言わないけどさ?じゃ冬はイマイチなんじゃない?
我が県はなかなかの寒冷地。
冬は雪が多く気温は低いし、鉛色の空。
基本的に冬は晴れる事が稀な曇り空。
もちろん本日も例外では無い。雨や雪でこそ無いが曇り空で気温は寒い…。
植物園は外のコース歩けない程度に雪が積もっている。
季節の花なんて冬にはないでしょ?
まあ温室だから暖かいし?色々な色打ち見れるのかな?
『…承くん、冬は見どころ無いって思ってるでしょ?』
『いや!そんな事は!』
なんで?なんでわかるの?
…でも玲奈さんチョイスだから?きっと見せたい物があるんでしょ?
温室が4個、ガラス張りドーム一個で構成されてて順路がある。
最後の温室は屋内公園みたいになってるらしく、そこでランチ。
結構早く着いたし、ランチ時間まで結構あるけど…
ま、玲奈さんと一緒でしょ?絶対楽しい決まってる…!
『じゃこっち。承くん水槽あるよ?』
『…水中植物…魚綺麗。
熱帯魚屋さんも俺ずっと見てられるんだよね…。』
最初のコーナーは想像とちょっと違った水中植物コーナー。
海外のその川の綺麗な熱帯魚たちが泳いでいてキラキラした水槽が俺の興味をぐいっと持って行った。
☆ ☆ ☆
植物園 【side香椎玲奈】
うんうん、そうだよね?承くんのリアクションは予想通り。
季節の花と樹木の散歩道や湖畔の良さを聞いて冬にここ連れてきたらそんなリアクションになるよ。
ここはね?ちょうど出来て少しした頃、パパがママをデート初めてデートに連れてきたって場所なんだ。
…ママはパパが映画とか遊園地でなくここ?って思ったけど一緒に過ごす優しい時間が人柄や考えを知るきっかけになったって話してたの。
私とお姉ちゃんも子供の頃初めて来た時冬だったんだよね。
理由はすぐわかるよ。
…って思ってたら…。
『水槽魚も植物も綺麗だなぁ…。
水中で光合成?』
とか、
『え?水中で二酸化炭素が…?』
とか感心しきり。
承くんは意外とアカデミックなモノが好きだ。
何にでも興味を持つよね。なんか微笑ましい。
しかし、なかなか先へ進まないぞ?
見せたいモノはもう少し先だけど思ってたより食いついてくれて嬉しいやら困ったやら。
やっと水中植物コーナーを超えた。
次の温室そこは一面花畑。チューリップを中心にマリーゴールドやパンジーなど割と身近にある花々が温室ながらも土に植えてあって綺麗に咲き誇っている。
承くんはしゃがみ込んでチューリップをマジマジ見ている。
私が横にしゃがみ込むと、
『この冬の時期に見るから尚更綺麗に見える…。
温室で自然の法則を無視してる、でもこんなに力強く綺麗に咲き誇ってる…。
冬で花なんて最近見てなかった。
お花って見ててほっこりする…。だから冬にここだったんだ?』
承くんは私の意図を分かったみたい。冬に見るお花も綺麗なの!
勿論旬の物が1番!でも冬ってモノクロな風景に緑も彩りも少なくってお花のある光景って癒されるんだよ!
承くんはゆっくり歩きながらチューリップを見て回る。
しきりに花綺麗…冬にこんなお花見れるなんて…
って呟きながら承くんはふらふらお花を見て回る。
微笑ましいよ!でも一緒に見て回ってよ?
見せたかった一つ目が承くんの心をバッチリ捕らえたことに満足しつつも、一緒に見て回りたい私は承くんを追いかけるよ!
また違う色のチューリップをしゃがみ込んで見ている承くんの横にしゃがみ込むと聞いてみる、
『どの色が1番綺麗だった?
承くん好みの色は?』
承くんは遠い目をしながら、
『…ピンク…光沢がある…。』
『うん?チューリップは赤、白、黄色しか無かったよ?
おかしな承くん♪』
『『はははは!』』
☆ ☆ ☆
見ちゃいけない花
俺は紳士でありたい。
だからさ?ちょっとだけ玲奈さんと距離を置いているわけ。
でも、玲奈さんはニコニコ上機嫌で俺のそばにピッタリ着いてくれるの!
玲奈さん!ダメ!しゃがんじゃ!
見えちゃうって!
太もも眩しい…!目をそらせ!
…っ!
…指摘…ダメな気がする…。
知らんぷりしてあげる…それが紳士の取るべき行動ではあるまいか?
玲奈さんに何か聞かれて、条件反射で見えてしまった禁断の色を答えてしまった…!罪悪感半端無い…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます