第309話 バス移動すら楽しい


『…玲奈さん…今日のふ、服装すっごく綺麗で、可愛いけどさ…

スカートかズボン忘れたの?』


…玲奈さんは真っ赤になりながら俯いて俺を3回肩パンした。

いつもながら真っ赤になった玲奈さん…超可愛い…。

引力でもあるのか目が持っていかれる…!


『…これはこう言う服なの!

…私だって?もう?女子高生だからね。

中学生の頃よりお姉さんになったし?少しずつ格好も大人っぽくなっていくんだよ?』


なんとなくわかるけど、『?』が多い時は慌ててたり、ちょっと動揺している時なんだよね。

思い出した様に裾を気にし出す玲奈さんが可愛くって俺は思わずクスクス笑っちゃう。

短めだったニットワンピ?…俺のドストライク!

なんで?俺の好み把握されてる?

※望が流してます。



玲奈さんは赤くなったまま黙っちゃって。

裾を一生懸命伸ばしちゃって…いや?本当に伸びるよ?


俺は立ち上がり、コートを脱いでバスの座席の窓際に座る玲奈さんの膝下にかける。

恥ずかしがり屋玲奈さんは本当に愛らしくっていつまでも見てられるけど、楽しみにしていたお話しも出来ないし、何より可哀想でしょ。


『…ありがと。』


なんか落ち着いたのか、いつもの綺麗な笑顔で俺のコートで脚を隠す玲奈さん。

…いや、本当によくないよ。

玲奈さんが気にせずに居た時は全然視線行かなかったんだけどさ?

裾気にして太もも辺りを必死にガードしてると視線が行っちゃうの!


…香椎玲奈は俺の知る限り1番の完璧美人である。

何処も魅力的なんだけどさ?

太もも…俺そんな癖があったのかな?

すっごいの。

太いわけじゃ無い、絶妙な造形美。

細くてシュッてしてるけど、太ももはムチっとしてる。

スベスベ、ツルツル、スラリ、でもムチっと。

もう一度言う。

太いわけじゃ無い、でも艶々で、柔らかそうで、ハリがあって、弾力がありそうな健康的な色気?とにかく破壊力!


そんな物騒な剥き出しのセクシーは俺の心臓に悪い。

なんとなく思う、すっごい似合うし、魅力的だし、叶うならずっと見ていたいけど…?

玲奈さんの趣味じゃ無い気がする。


『ほんっっとうに!綺麗で、可愛いし、セクシーで、俺のドストライクなんだけどさ?

玲奈さんチョイスじゃ無い…ような?感じ?

無理してない?』


俺は思ったまま言う。

…あ!さっき失敗した奴!

俺は殴りやすいように肩パンどうぞ?って従順な姿勢をとった。



☆ ☆ ☆

私の事をわかってる?  【side香椎玲奈】


『…玲奈さん…今日のふ、服装すっごく綺麗で、可愛いけどさ…

スカートかズボン忘れたの?』


私は顔から火が出るかと思った…!

恥ずかしくって恥ずかしくって、承くんの肩を3回ぐーで叩いた!

条件反射でやった。暴力的な女の子なんて嫌われちゃうよ…。


私は『コレ』はこう言う服で?もう大人の女性になりつつあるから!

ってちょっとセクシーだっていけるんだよ?ってアピールする。

まぁ、お姉ちゃんみたいにはいかない事はわかってる。

でも、いつか!セクシーも似合うようになるだろうし?

…願わくば、承くんの心を鷲掴みにしてやりたい。


指摘されたらすっごい気になってしまう…。

自信ある脚…と言ってもやっぱり見られる事に抵抗はあるわけで…。

もちろん、承くんなら多少は見せても良いけど、こんな至近距離でこんな短い丈で太もも全開だよぉ!



私は意識しちゃって、頬は熱く、視線は気になり、黙ってしまった。

承くんは冬なのに自分のコートを脱いで私の膝元に掛けてくれて?

その気遣いに、私はお礼を言う。

紳士だね?嬉しいな。


…でも…それなら私のコートを膝にかけるから!

そしたら承くんコート羽織って?

さりげなくテイスティングくんくんとマーキングするのに!




承くんは恥ずかしそうに、




『ほんっっとうに!綺麗で、可愛いし、セクシーで、俺のドストライクなんだけどさ?

玲奈さんチョイスじゃ無い…ような?感じ?

無理してない?』


わかるんだ?

ちょっと驚く。

承くんは敏感と鈍感な部分が両極端。

でも女の子の事は基本的無知だと思ってた…。


私の好みやチョイスじゃ無い事わかっちゃうんだ?

嬉しいな。


そっかあ、そうだよね、長い付き合いだもんね。

中2で美術室でふたりで仕事しながら語り合った日々がある。

確かに高校生になって、学校は別れ会う頻度は極端に下がった。

…お出かけだってほとんどしていない。

なんなら意識して五年?初めてふたりで遊びに出かけた位だよ。


でも、積み上げた日々がある。

…ただ、学校が別れ、会う頻度が激減した今、承くんは私の知らない面も増えている…。

もちろんそれは私にも言える、言えないこともあるよ。

だから、だからこそ繋がりを強くしたい、そう強く思える。


承くんは、あ!って顔して失言した、これ肩パンだ!

って結論を出したのだろう、申し訳無さそうな表情で従順に肩どうぞ?

って身体を傾ける。


そうだね…?

それなら?




こてん



私は隣の座席の肩どうぞ姿勢の承くんに頭を預ける。

思いっきりもたれかかって承くんにくっついて話しを再開しちゃう!


承くんは緊張してるのか、赤くなりながら片言で話してて可笑しかった!

私だって緊張してるんだよ?


バスはもうじき目的地。

まだ何にも始まって無いのに楽しいな、ドキドキするな。

もう幸せな気分!

到着が嬉しい様な残念なような。

…ギリギリまで頭は預けたままでいよう?



そう思ってたがバスは到着、通路側の承くんが立って、私に手を差し出す。

座席狭いし、助かるな。

承くんの大きい手をそっと掴んで立ち上がる。

承くんの手…良いよね。


立った所で手を離すと後ろから声がする。

後ろの座席に座っていた年配のおばあちゃんだよね?


おばあちゃん『あらあら、初々しいね?お付き合いし始めかしら?

微笑ましいわぁ!

彼氏くん、手を離しちゃダメよう!バスは段差あるし、揺れるし、大事な彼女さんでしょ?

手は繋いだまま♪』


私と承くんは顔を見合わせると同時に真っ赤になりながら、おばあさんに会釈してバスを降りた。





…手は繋いだままだったよ。

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