第308話 意見陳述
※意見陳述…裁判時,被告人または弁護人から起訴状に対する言い分を聞くこと。
☆ ☆ ☆
…初めてデート…玲奈さんと…?
お出かけでしょ?植物園行って見て回って、玲奈さん手作りお弁当食べるのかな…。
最高でしょ…。
『あの』『憧れの』『手に入らないモノの象徴』『香椎玲奈』とふたりっきりでお出かけしてお弁当だよ?
子供の頃の俺が聞いたら信じないだろう。
しかも…デートって…お出かけとか前の望のプレゼント選び!とか理由を付けるんじゃなくってただ、男女で遊びに行く…デート…?
…デートってなんだ?デートの定義は?
柄にも無く浮かれて、悩んで、デートって考え過ぎてゲシュタルト崩壊起こしそうになる。
横で見てた望がひーちゃんに頬擦りするのを止めて、
望『…考えるな!感じろ!』
『…案外そうゆうもんかもな。』
ひー『デートだったらかっこうよくしなきゃね!』
ひーちゃんに望は話したらしい。
望は頷く、
望『いつもの様にも良いけど、やっぱデート時はキリッと格好良く、さりげなく気遣いとか漢が問われるよね?』
『漢とはなんぞや?』
ひーちゃん『あさってはさんにんでデートだもんねー?』
望『ねー?ひーちゃん良かったね?明後日は電車乗れるよ?』
ひーちゃん『でんしゃ!やった!』
望とひーちゃんが盛り上がる中、俺は考え込む。
翌朝。
気もそぞろに朝ごはんを食べて(普通に)、身支度して家を出る。
…早め、すっごい早め1時間以上は早く着いちゃう。
ターミナル駅に電車で15分位?到着する。
格好良く…先週髪は切ったばかり。
身だしなみは昨日も紅緒さんとお出かけしたばかりで整ってる…はず。
服も今日おろしたてのシャツにパンツにコートで結構良さげな感じ…自分感覚だけど。
これ以上何が必要?
足りない知性を補う為メガネかける?
漢らしさをアピールする為ジムで筋トレでもしてバンプアップする?
ふー。俺動揺してる…。
あの香椎玲奈とデートだぞ…中学生時代何度か向こうが俺に借りを感じて誘ってくれた事はあるよ。
でも俺は玲奈さんに釣り合わないから…なんかんや断ってた。
…本当は一も二もなく行きたかったし、すっごい胸はときめいた。
一度は諦めようって思った玲奈さんを俺はまた…。
離れて見えたモノ、離れて気づく気持ちがあったよね。
…視点を変える…。
!!
今から格好良いは難しい、なら?格好悪いを出さない様にすれば良いんじゃ?
俺はデート1時間半前逆転の発想を思いつく!
俺の格好悪いとこ…
…。
…。
…。
生きるの辛い…。俺欠点多いなぁ…。
もうちょっと気をつけて生きていかなければならない…。
デート直前、ダークサイドに堕ちかけようとする俺。
ま、悪い癖?言動?態度?
色々気をつけて行動するしか無いよね…。
そこで思いつく。
(おなかちょっと減った…。)
☆ ☆ ☆
香椎玲奈裁判官への意見陳述。
人通りの多い駅ビル通路の真ん中からパン屋のイートインスペースへ移動するふたり。玲奈もコーヒーを注文して承の座ってた席へ2人で移動する。
※ここから主に承くんの玲奈さんへの語りかけです。
※承くんは大変怯えているので口調が硬いです。時々玲奈が口を挟みます。
承
『早く着きました。色々今日の事考えてました。
俺今日すっごくすっごく楽しみにしてて。
お弁当も楽しみで!俺香椎さんの手料理大好きだから…。』
玲奈は軽く俯き、涙目で、
玲奈『…嘘つき…お弁当の前にパン2個も食べる気だったんでしょ?』
(涙目玲奈さん…可愛すぎるし、胸が痛い…。)
俺は観念して打ち明ける事にする。
俺の恥ずかしいとか一生懸命にお弁当作って来てくれたのに傷付けちゃった事に比べればなんの意味も無い…。
『…俺…ちょっとコンプレックスがあって…。
…前々からなんだけど…食いしん坊なんだよ…。』
玲奈さんはそれが?って顔してる。
『高校生になった頃からさらに食べる量増えて?
動くからデブってはいない。
でもね、すっごく食べるんだ…。』
玲奈さんは涙目のまま、
玲奈『…そうなんだ。それが?』
『この間のひーちゃんお遊戯会の時とかも俺貪り喰らう様に食べちゃって…後から…恥ずかしいなって思ったの。』
玲奈さんはジッと俺の目を見てる…。
嘘を吐いたら絶対バレる策士モードの玲奈さんだ!
玲奈『男子高校生ってみんなそんな感じじゃ無いの?』
『…最近毎日の様にご飯3杯食べて?いくらでも入っちゃう…。』
玲奈『いっぱい食べる男の子良いと思うけどなぁ。』
少し恥ずかしそうに玲奈さんは呟く…良い娘さんだよね…!
でもさ、
『ほんっとに食べるの、腹減ってると夢中でがっついてすごい勢いで食べちゃうの!恥ずかしいよ。』
玲奈さんは怒る半分、嬉しい半分って顔で言う。
…なんでだ?
玲奈『良いじゃない!食べれば!夢中でがっつけば!』
玲奈さんはチクチク言い募る。
今日の献立、いっぱい作って、こういう工夫して、昨日遅くまで仕込みしたし、今日も早起きして作った、栄養のバランス、色味、俺の好物、美味しく食べて欲しい!
そんなに?そんなに一生懸命作ってくれたの?!
俺は感激しちゃう!本当に玲奈さんは食べ手の事まで考えてて…きっと誰にお弁当作ってもこうなんだろう。本当に玲奈さんはすごい。
※さすがに玲奈可哀想。
『だから!
だからこそ、味わって、一品一品美味しいよって感想言いながら作り手に感謝と敬意を伝えなきゃいけないって思うんだ。
でも、俺、がっつくとうまい、うまいって夢中になって没頭して食べちゃうの。
すっごい勢いで!時間かけた力作もペロリと!
…好きな娘が作ってくれた、手料理は特別で、絶対こんなに美味しいモノは無い!
断言出来る!それを冷静に食べる為におなかに余裕を持たせる必要があったんだ!』
※必死です。
玲奈さんは真っ赤になりながら、まだ目を潤ませながら、
玲奈『本当?本当に私のお弁当楽しみにしてる?
嫌だからパン食べてた訳じゃないのね?』
『誓って。』
俺は頷く。
玲奈さんは少しぷんすこしながら、
俺を店から出るように促す。パンは店員さんに頼んで袋に入れて貰った。
玲奈さんは挑発的に、
『そこまで言うなら?責任持って食べて貰うよ?
私は作りすぎてしまったかな?って思ってるんだよ?』
玲奈さんの持ってるトートバッグを手渡される…重い!
俺はその重さに顔をニヤらめる。良いの?こんなに?
俺の笑顔を見て、玲奈さんも笑う。
笑い合いながら俺たちはバス停へ向かう。
結局1時間早い行動になった。
玲奈『じゃ、バック返して?』
『俺持つよ。楽しみだなぁ♪』
玲奈『そんなに楽しみなの?ふふー!』
玲奈さんもご機嫌治ってバスに乗り込む。
ふたりでいつもの様なたわいも無い話をする。
…バス内は空いてて座席で隣同士に座り小声で話す。
俺はさっきからずっと気になってたけど雰囲気的に聞けなかったことをここで聞く。
『…玲奈さん…今日のふ、服装すっごく綺麗で、可愛いけどさ…
スカートかズボン忘れたの?』
…玲奈さんは真っ赤になりながら俯いて俺を3回肩パンした、
…結構痛かった。
俺は罰として甘んじて受け入れた。
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