第301話 バレンタイン編 訃報【side香椎玲奈】
金曜日、放課後部活の途中にママから急報が入った。
…ママのママ、おばあちゃんが亡くなったって…。
だいぶ前から容体が悪くて覚悟しておいてね?って言われてたけどその時が来た。わかってたけど悲しい。
木曜日の放課後にクラスの女の子のお願いでバレンタインチョコ作成を手伝って?
それが好評で土曜日に大掛かりな私講師のチョコ作成会を開催頼まれてたけど事情が事情なので説明して、キャンセルさせてもらった。
後で皆んながお悔やみメッセージをくれた。
ありがとう。
それでね、部活を切り上げて、駅前にママとお姉ちゃんと待ち合わせして病院へ向かい、おばあちゃんと対面した。
なんか放心状態で悲しいんだけど他人事みたいな変な違和感があったけどママが泣きはじめたら私もお姉ちゃんも大泣きしてしまった。
…認めたく無かったのかな。だから違和感があったのか。私たちはしばらく泣いた。
おじいちゃんが呆然としながら私たちにおばあちゃんは最期苦しまずにあっさり逝った事を教えてくれた。
しばらくしてパパも駆けつけて、色々な手配をして家に帰ったのね。
翌日土曜日朝におばあちゃんは家に帰り、棺に入り安置される。
私も制服で1日おばあちゃんの家で過ごす。
ママは呆然としてるおじいちゃんの代わりにせっせ動き回る。
近親者(叔父や叔母といった親の兄弟やその家族)への連絡や医師から死亡診断書を受け取る、葬儀社の手配と打ち合わせ(火葬の手配を含む)、
葬儀に参列してほしい人へ向けた、訃報と葬儀日程の連絡、遺体の搬送と安置、通夜式~葬儀~火葬の葬儀会社との打ち合わせ、ご近所やお友達への報告など連絡業務。
ママ『優奈、玲奈、これからおばあちゃんのお友達や近所の方とかおばあちゃんに会いに見えられるの。
…ママも悲しいし、泣きたいけど泣いてばかりより働いた方が気がまぎれるでしょ?
何よりおばあちゃんの娘や孫が泣くばっかりでダメダメなんておばあちゃんの顔潰せない!しっかり対応するよ!手伝って!』
『『うん!』』
私とお姉ちゃんはママの指示で動き回る。
お茶やお茶菓子の確認、足りない物は買いに行く!
最近おじいちゃんの一人暮らしでちょっと汚れた家の中をモップやワイパーでさっと拭いて回って、玄関や駐車場を掃き清めるよ!窓も拭いちゃう!
仏壇ある広間におばあちゃんは安置されたから、居間と客間を徹底的に綺麗にしながら来客用に座布団やお茶碗など確認!
…確かに、忙しい方が悲しさから目が逸らせるね…。
ママは私達に指示を出しながらも葬儀社と連絡、おばあちゃんが残したリストに一件一件連絡!
パパはおばあちゃんの顔を見て出勤、どうしても引き継ぎ諸々あるから出社する。
明日は休みを取るから仕事を処理する、早めに帰るって言ってた。
午後からおばあちゃんの友達や親戚達がおばあちゃんと対面する為に集まる。
叔母や遠縁の方たち、おばあちゃんのお友達。
ひっきりなしに訪問があるから私とお姉ちゃんが対面後、居間や客間に案内してお茶飲んでいってもらう。
出来たお孫さんだね!とかおばあちゃんの若い頃そっくりとか言われる。
ママの言う通り、おばあちゃんの孫しっかりしてる!って言うか素晴らしいおばあちゃんだったんだ!って伝わって欲しい。
私とお姉ちゃんは精一杯の歓待をする。
お話に付き合って、お茶汲みして、お菓子足りなくなって買い足して。
夕方くらいにはへとへと。
ママは数倍大変だったはず。
おじいちゃんはまだ呆けている。
一通りお客様が帰って、やっと家族の時間。
おじいちゃんは合気道の師範資格持ってる溌剌とした印象だったけど…見る影もない。
私たちもやっと手が空いて、おばあちゃんの顔見たらまた悲しさがこみあげて来ちゃってまた泣いちゃった。
家へ帰りヘトヘトでシャワー浴びて何食べたかも覚えてないけどすぐ寝た。
珍しく勉強もストレッチもロインも処理せずに寝た。
翌日土曜日もおばあちゃんの家に詰めて、弔問客を応対するママを手伝い、あっという間に夕方になり、夜に家へ帰る。
なんか友達とかから連絡きたけどバタバタしてるからで全部対応した。
日曜日はお通夜だった。
昼まで家に居て、午後からまたおばあちゃん家行って、棺を送り出して、おじいちゃんとママ、叔母さんが付き添って私たちはパパと一緒に葬儀場へ向かい、受付担当した。
お通夜振る舞いでママの付き添いで挨拶して回って、色々やって。
おじいちゃん、ママ、叔母さんはおばあちゃんと最後の晩を過ごす為斎場に泊まる。
パパの運転で家に帰るけどへとへとでもうしんどい。
心と身体が疲労困憊。
(日曜日…明日のバレンタインにむけて今日はチョコレートを作って過ごすつもりだったっけ…?)
どうしよう、承くんにロインした方が良いかな?
…おばあちゃん…悲しくってちょっと何も手につかない…。
今は許してもらおう。
聞かれたら実は…って言えるけど、私から身内に不幸が…ってなんか言いにくい…。
買ってきて渡す?ううん、私は断然手作り派だし。
明日のバレンタインデーが葬儀、火葬だから…それが終わって一息ついたらまた承くんに連絡しよう…。
ああ、承くんに会いたいなぁ。
会ったら少しだけ甘やかしてくれないかなぁ…。
そんな事思いながら私は寝落ちしてしまう。
翌日、バレンタインデー当日も忙しく、葬儀、火葬、お斎と目まぐるしく1日が過ぎていく。
私とお姉ちゃんは酔っ払った親戚のおじさんやお爺さんから美人になった!綺麗になった!って褒めちぎられて居心地悪い。
お姉ちゃんはノルマだけこなしてめっちゃ食べまくってた。
私はママの横にずっと付いてた。
おばあちゃんの家に着き、
お骨を祭壇に安置すると、ママが泣き出した。
ずっと忙しかったからね。
ママはずーっと泣いてた。
パパがずっとそばに居た。
私だってママがもし…想像するだけでゾッとする。
私はママに抱きついた、お姉ちゃん同じ事想像したのか反対側からママを抱きしめてた。
ママは泣きながら私たちを抱きしめてずっと泣きじゃくってた。
ママ『娘たちの前で恥ずかしい…ママ泣いちゃった♪』
ママはおどけて言うけど、今はゆっくり休んで欲しい。
夕方18:00やっと家に着き、私がある物でサラダとパスタを作って家族みんなで言葉少なに食べてそれぞれの部屋へ戻った。
慌ただしい数日だった。
おばあちゃん…。
ママ…。
ぼんやりここ数日に思いを馳せる。
頭が働かない。
『コーヒーかな?ハーブティーかな?』
今必要な成分はなんだろ?コーヒーのカフェインかな?リラックス効果のある暖かいハーブティーかな?ココアとかでも良いな。
迷いながら台所へ向かう。
…数日間動いてない。土日月と全く動かなかったもんね。
走るか散歩行きたいな…でももう夜だしなぁ…?
思考はまとまらず、何がしたいか、何が飲みたいかもわからない。
身体も鈍って、頭もぼんやり。
もう寝ちゃおうか?って思いつつ台所へ向かうとピンポン!ってインターホンが鳴る。
誰なの?インターホンを起動させる。
セールス『ちわー!ご近所を只今周らせて貰って居て?実は!』
『結構です。すいません。』
私は不機嫌に断るよ。
セールスの人に今日葬儀が…なんてわかるはずもない。
でも、ほんっと今だけは許して欲しい。
我ながら珍しく、感じ悪い対応。
ピンポン!まだ何か?!
ガチャって受話器を取り、不機嫌に言うよ!
『まだ用事ありますか?』
承『…ごめんなさい。立花です。
俺バレンタインチョコ作ったんだよ。
香椎さん、いつもありがとう。
良かったら食べてね?ここ置いとくね?
それでは失礼します?』
顔を引き攣らせて、承くんがペコって会釈する。
フッと承くんがモニターから消えた。
承くん?
バレンタインチョコ?
なんで?!
さっぱり意味はわからない!
私は頭に?をつけながらダッシュで玄関を飛び出したんだよ!
☆ ☆ ☆
今日の誤字
お通夜の帰り、疲れたって玲奈が弱音吐くシーン。
パパの運転で家に帰るけどへとへとでもうしんどい。
×心と身体が疲労コンバイン。
⚪︎心と身体が疲労困憊。
疲労のあとこんばい→予測変換りたーん!コンバイン!
読んでクスッときたけどどっと疲れた。これは疲労コンバインですわ(笑)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます