第297話 バレンタイン編 成実の初めて

そして放課後。

青井は小幡さんと待ち合わせの為急いで帰った。

仙道はチョコを大事に抱えて今日は帰るって。

紅緒さんは…大っぴらにバレンタイン大会を派手にやった首謀者として、生徒会に呼び出し受けたw


目立たないようにチョコ渡す位は黙認ってルールをめっちゃ大掛かりに配って渡して、カップル成立までさせちゃって。

許可を得ていない催し物扱いで事情を説明して欲しいそうな。



稲田『…今日だけは、不問にするように働きかけるから!

くれぐれもバカな事言わないでね?』


紅緒『私悪い事してないもーん!』


稲田さんはイライラニコニコそうだよね、早く帰りたいよね?

告白成功したんだから事情聴取されてる場合じゃ無いでしょ。


稲田さんは生徒会書記だから多分大丈夫。

俺は社会科教室でぼんやり過ごす。

俺今日、バイト休み。

今日なんの予定も入れて無い。



がら!今日は髪を二つ結びの成実さんが入ってくる。


伊勢『お?立花だけー?』


『うん、伊勢さんは帰る?』


伊勢『ううん、今日木多ちゃんち寄って帰るんだー!

バレンタインチョコ交換するの!』


木多さん…大分変わったよね…元に戻ったって言うべきかもだけど…。

その木多さんとチョコ交換か、いいね!


伊勢さんはモジモジカバンを持ったり下ろしたり…してる?

あ!ひょっとして?


『こないだ言ったチョコ?』


伊勢『あー!覚えてるん?

そっかー?やっぱ忘れて無いかー?』


『そりゃそうでしょ。』


伊勢さんは真っ赤になりながら、真っ赤な包装の箱をその主張する胸に抱いて、えいっ!って感じで両手で俺に差し出してくれた!



伊勢『特別サービス!

立花とは長い付き合いだけど、生まれて初めて作った手作りチョコレートだよ!』


伊勢さんは目をキュッて瞑ってて

(><)←こんな感じ。



俺も両手で賞状受け取るようにうやうやしく受け取る。


『有り難き幸せ!』


伊勢『ほんとだよ?私の初めてだよっ!』


なんか聞いてて恥ずかしくなるけど、

一生懸命に作ってくれたのは伝わって…。


2月の16:00頃はもう夕暮れで。

オレンジ色に輝く室内で真っ赤になったのか夕暮れなのか伊勢さんはすっごく綺麗で俺はガラにも無く照れちゃったりして。


『…結局伊勢さんがいつも1番側に居るんだよね…中2の頃から。』


伊勢『そうだよ?立花は香椎と班一回しか一緒になって無いけど中2から卒業までほぼあたしと完くんと一緒だったんだよ?』


伊勢さんは胸を張る。

ああだ、こうだと2人で中学時代の話しをする。

修学旅行、マラソン大会、体育祭、文化祭…そうだね、伊勢さんはいつも近くに居てくれた。



伊勢『…何気に…立花は私の初めていっぱい持ってるね?』


『え?!』


ドキッとする。

伊勢さんの初めて?!

俺そんな大それたこと?!



伊勢さんはまた真っ赤になりながら、



伊勢『男の子自分から班組んだの初めてだし、初めての男友達だし?

…マラソン大会でほっぺにちゅうした…。

そして?今回の手作りチョコ…。』


恨みがましく言われる…そうだ…頬にちゅうしてもらった…!

思い出すとドキドキする…!

79話 ダブルブッキング参照


真っ赤になった伊勢さんはお世辞抜きで可愛くて、室内は沈黙に包まれる。

なんか恥ずかしいし、居心地悪い…。



伊勢さんは、あ!って顔して、



伊勢『じゃ!あーし!そろそろ行かなきゃ!

木多ちゃん待ってるー!

チョコの感想だけ教えてねー!』



社会科教室を出て行こうとする伊勢さんに俺はもう一度、お礼を伝える。


わかってる、手で合図する伊勢さんは教室を出る時少し立ち止まり、思い出した!って顔。



伊勢『これ、望ちゃんとひーちゃんに渡して?』


『え?あいつらのも?ありがとう、絶対喜ぶ…!』



俺の知ってる伊勢成実って女の子は一見威圧的なギャルに見えるけど、本当に良い娘なんだよ。

思わずこぼれる、


『成実さんはすごいね。

…綺麗で、気配り出来て、面倒見の良い、優しいおしゃれな女の子で。

夢を見つけて、友達思いでフォローも欠かさない…本当にすごい。』


伊勢さんはちが!てれ!とか目の前で手をブンブン振って照れてたけど、

ごほん!って咳払いして俺の前に戻って来てピッて人差し指立てて、



『…立花だってさ?

大人になったよ?背丈だって大きくなったし、バイト初めて色々変わった。

クラス委員長なんて初めて会った頃なら絶対引き受けなかったでしょ?

神崎くんや保利くんの件だってすごいな!ってあたしびっくりしたよ?』


その人差し指で今度は俺をツンツンしてくる!くすぐったい!

でも、昔からそうだ。

伊勢成実はいつも俺を見てくれて、求めれば色んな事を教えてくれる。



伊勢『皆んなそうなんじゃない?

人と比べて、人の良いとこと自分のダメなとこ比べちゃう。

あーしだって!ダメダメ!

…ずっと思ってる事を口にも出せない…。』


悲しい表情のあとに、

たはは!って笑って陽気なギャルはまじまじと俺を見つめる。



伊勢『…背高くなったね…?前は、初めて会った頃はそこまで変わらなかったのにね?』


こんなに伊勢成実って小さかったっけ?急に感じる女の子らしさ。

至近距離で手で自分の頭と俺の頭の差がこーんなにある!

ってはしゃぐ伊勢さんと目が合わせられない。

俺照れてる…!


伊勢『…!』


意識しちゃったのかバッて離れる伊勢さん。


伊勢『あはは!ずーっと一緒だったから距離感バグってんね?

じゃあさ?行くね?』



伊勢さんは恥ずかしそうに荷物を持って出て行く。

俺はそれを見送る。


伊勢さんは俺をいじめから助けてくれた恩人なんて言う。

違うよ、俺は伊勢さんに何度もフォローしてもらった。

伊勢さんこそ俺の恩人でしょ。


伊勢成実って女の子は今日も俺の悩みを真面目に聞いた上で笑い飛ばし、友達の為に奔走するカッコいい女の子なんだって思った。


そんな女の子から手作りチョコを頂く…素直に嬉しかった。

俺は頂いたチョコの包装紙を撫でてカバンに仕舞うよ。

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