第296話 バレンタイン編バレンタイン大会

紅緒『バレンタイン大会はーじまーるーよー!』


女子『おお!』


伊勢さんが司会らしい。昼休み始まるやいなや始まった催し。


ギャル『よ!しげー!』

ギャル『男前!成実!』


伊勢『歌舞伎じゃないんだから…!』


女子はワイワイ、男子は何これ?

って雰囲気。

バレンタイン大会、会長の紅緒さん発案のイベントらしいよ。

ここ1-4では少し前から昼休み教室に居ること推奨!って説明が。


紅緒『私はね、入院して何年か学校行けなくてね?

すっごいバレンタインに憧れがあって…高校生になったらこういうのやりたかったの!』


紅緒さんは友チョコでも良いし、気になる子に送るのでも良い。いつもありがとうとか感謝の気持ちでも良いよね?

でも、チョコを作る、贈るってたくさんやったら楽しかったりドキドキしないかな?そうゆう会をクラスでやれないかな?って昨日のチョコ作成大会で話しをして今日の催しになったのだとか。

要はいずれチョコをあげる予行練習みたいな?


伊勢『だから!男子!君たち女子手作りチョコ貰える!

これを機に好きになっちゃうかもよ!』


男子『『おおお?!』』


ただし、伊勢さんから注意説明が入る。

今回、チョコをあげるって体験、チョコを貰うって体験をたくさん皆んなにして貰う為ハードルを思いっきり下げたよ!だから、あいつ俺好きなんじゃん!って付き纏ったり勘違いしないように!

チョコはたくさん作りました!俺にくれたのにあいつにもあげたのか!みたいな嫉妬や怒りを持たないで!

くれぐれも遊びだから本気にならないように!


注意事項が全部本気になるんじゃ無いぞ?って釘刺しに士気が下がり始める男子…。


でも、伊勢さんが胸を張って最後の注意事項を宣言する。


伊勢『でも?義理に見せかけた?本命の可能性?

少し良いな…?って思って贈る子も居るよ!

期待しすぎずに?紳士に?乙女に?そんな感じー!』


紅緒さんが横でうんうん頷いて前説明は終わった。


紅緒『まず手始めに?私から?


…くん、…くん、…くん、目白くん!』


呼ばれた4人はモジモジ出てくる。

目白くんは紅緒さん好きなのにこれ大丈夫かな?


紅緒さんは、体育祭の時のアレありがとう。ドーナッツショップの時ありがと!

目白くんには、


紅緒『ごめん、目白くんには感謝してるんだ。

チョコ貰ってくれない…?』


目白『…ありがとう。』


目白くんは紅緒さんが好きで。

でも、紅緒さんが俺を好きって宣言してから目白くんは辛そうで。

…このイベントは良し悪しだな…そう思うけど大変な盛り上がり。


クラスの女子が男子を壇上に呼び、理由を説明して小さい手作りチョコをあげてる。

クラスの盛り上がりに他クラスから見物客が大勢来て、羨ましがってる。



伊勢『仙道!』

紅緒『仙道くん!』


仙道は挙動不審に壇上に上がる。



伊勢『義理だけどうまいはず!』

紅緒『いつもありがとね!』


仙道『忠誠を誓います…。』


跪き、手の甲にキスしそうな勢い仙道にクラスは大笑い!



大体の女子が終えたとこで、クラス女子が津南に親切にしてくれたって2人同時に津南を呼んでチョコを渡す。

義理とわかってても嬉しいのか壇上に上がった津南もニコニコ。

それを気に入らなさそうな稲田さん。

稲田さんは美人だけど目元に険のあるちょっとキツめないじわる美人。

それに紅緒さんは煽る。


紅緒『稲田さん!津南くんにチョコあげれば?ここで?』


稲田『なんでよ?!』


稲田さんは真っ赤になりながら、紅緒さんに噛み付く。


紅緒『津南くん、すぐ他の女子口説くけど…良いの?

私だったら嫌だな…?はいチョコ。』


津南『くれるの!紅緒さん!』


嬉しそうな津南に苛立ち稲田さん。


紅緒『ほら、こんな簡単に他所見ちゃうんだよ?

ちゃんと縛っておいて?他女子にこいつは俺のやぞ!ってアピっておきなよ!勇気出せ!稲田さんのタイミングあるだろうけど!

ここで!ここで決めろ!』


煽るなとわんこ。

稲田さんと津南は早々にカップルになるって見られたけど、

稲田さんがベタ惚れになったって津南が確信して稲田さんをキープしながら紅緒さんを始め綺麗どころに片っ端から声かける。

時々戻って稲田さんとイチャイチャしてまた紅緒さんにちょっかいかけるみたいな。

紅緒さんはそれで良いのか?って言ってる。



稲田『良いの?私に譲って?

津南くん…いや尚樹はもう逃さないよ?』


紅緒『どうぞどうぞ♪』


稲田さんは、カバンから綺麗に包まれたチョコを取り出して壇上へ上がる。



おおおおおお?!

クラスは突然始まった本番にどよめいた後、ピタっと静まりかえる。

他クラスからの観客も静かに見守る。




稲田『尚樹くん…好き。付き合って欲しい…。』



津南『…。』


津南は迷ってる。

今のままの稲田さんをキープして好きに他女子に声かけれる自由が惜しいのかな?


女子『稲田さん乙女!』

ギャル『男らしくないよー!津南!』

ギャル『ここまで来て保留すんなー!』


ヤジが飛ぶ。



津南は稲田さんからチョコを受け取り、そっと稲田さんに囁いた。

稲田さんは小さくガッツポーズをする!


おおおお?!

目の前でカップルが成立した!

クラス大盛り上がり!


俺は紅緒さんに聞いてみる。


『強引だけど…キューピッドだね?』


すると、紅緒さんは良い笑顔で恐ろしい事を言った。


紅緒『玲奈にうざい男子と私を目の敵にする女子が居て、くっつきそうなのにちょっかい出してくるって愚痴ったら、

『くっつけたらどうかな?』って。

あいつやるよねー?』



こわ!女子こっわ!

稲田さんに恩を売りつつ津南の動きを縛るって事?

さすが香椎さん…綺麗なだけじゃない…。


会はすすむ。

クラスの女子の中には本命っぽいチョコを渡す子も出て来て?

皆んなで作ったトリュフチョコやハートチョコを配ってクラス全員にチョコが行き渡る頃、紅緒さんが俺を壇上に呼ぶ。



クラスの皆んなが息を呑んで見ている…。

居心地悪い…。


青井は大変だな?って顔。

仙道は羨ましいって顔。

目白くんは穴が開きそうなほど凝視してる。

津南は気に入らないって顔。



紅緒『はい!承くん!』


可愛くラッピングされたピンク色包装のチョコレートを俺は頂く。

紅緒さんは爽やかにニッコリ笑って手渡してくれて…。


『ありがとう、後で頂くね。』


クラスの皆んなに冷やかされた!

…紅緒さんにしてはおとなしく、普通の渡し方で、ちょっと安心した。


こうして、お昼休みのバレンタインチョコ放出大会は好評のうちに幕を閉じた。

…これをきっかけに意識した、良い雰囲気になったって組み合わせが何組も出たんだって。

もちろん、チョコは本命にしか渡したく無いって子はみんなで食べる生チョコとかに回って貰ったから無理強いはしてないよ!

って紅緒さんは胸を張る。

…その行動力すごいなぁって心から思う。

キャッキャ盛り上がるクラスを見ながら紅緒さんは、儚く、透明感を感じる笑顔で言い切った。


紅緒『…命短し、恋せよ乙女っていうでしょ?

思いを伝えるって練習になれば…もしこの中の1組でも結婚したらさ?

…あの時紅緒が企画した会がキッカケだったなって私のことを思い出してくれるかもしれないでしょ?』


『…縁起でも無い…。』


紅緒『あはは!皆んなの思い出になったらいいな。』


誰よりも自分の思い出作りにこだわる癖に、誰より皆んな思いのこの娘も香椎さんと違うアプローチで皆んなの為にを体現する女の子なんだって思う。


クラスの盛り上がりを満足そうに見守る紅緒さんは控えめに言っても綺麗だった。

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