第291話 小規模なテニス大会【side立花望】

冬はフィジカルメニュー尽くしで嫌になるよね。

寒冷地あるあるだけど雪でコートが埋もれる事があって否応無しにフィジカルフトレーニング。


先生『ほら!立花!シャトルラン!』


『はいはい、フィジカルフィジカル。』


私だって重要性はわかってる。

でも、思いっきりラケット振り抜いて挨拶をまともに返せない気に入らない対戦相手にサービスエースでボッコボコにしたい。


そんな時に県のテニス協会の県内中学生の競技レベル向上の為の大会の招待状が届いてね?勝ち上がれば一日で4回も試合出来て?優秀者にはテニス協会からなんか備品関連くれるんだって。

備品関連欲しくて参加するの私くらいだろうけど1日何回も女子中学生の県内有力選手とやれるのは楽しみ!

中学生のみ参加で、三年生は受験だから1年か2年生しか出ないらしいから来年の夏の大会へ良い練習じゃん!


室内コートはあまり使ったこと無いし、1日に4回試合っていうゴリゴリの詰め込み企画も私好み!

ワクワク準備!



☆ ☆ ☆

『えー?!にいちゃん明日アルバイトなのー?!』


一度見に来たいって言ってた兄ちゃんがバイトで大会見に来れないって!

そんなー!せっかく買って貰ったラケットのウイちゃんの勇姿を見せてあげようと思ったのに…!

256話 兄とクレープとラケットと 参照


兄『明日、宏介が俺カレ来るんだよ。』


『何それ!あたしも行きたい!』

※もし来てたら愛莉先輩とかちあって地獄でしたw


『大会頑張って来い?応援してる。』


兄ちゃんは頭を優しく撫でてくれるからしばらく撫でられてた。

ひーちゃんはもうよだれ垂らして寝てたから私の布団へ引っ張り込んで抱き枕みたいにして寝た。


翌日、朝早く起きて新川駅で待ち合わせ。

連れの委員長こと、相川 芹アイカワ セリが一緒。芹もテニス部。強さは普通、成績は最近どんどん良くなってる。

※名前付きましたw


芹『望ちゃん?忘れ物無い?』


『乙女心忘れたー。』


芹『あはは!無い無い!』


『あるし!』


会場まで、キャッキャ騒ぎながら向かう。

一回戦は初めて聞いた一年の選手。

すごく上手くてすぐにテニスアカデミー出身の選手だってわかった。

カテゴリーが同じ中学生女子でも、アカデミー出身の子は中学の部活に入らずアカデミーから大会だけ出てプロに至る選手も多いんだって。


同い年ならまだしも!年下に負けられないよ!

乱打戦を制して私の勝ち☆


『すごく強かったね、また勝負しよう?』


試合後。


芹『乱打戦のエキスパートだもんね、望ちゃん。

ノーガードで乱暴な殴り合いが真骨頂!』


望『うるさいなぁ。』


でも、すっごい上手かった。

勉強になる技術が多くあった。

後で芹に分析してもらおうっと。


勝ったことを自分で受付に申請しに行く。

小さい大会あるあるだね。

1回戦を同時に多くやってるから2回戦まではインターバルがある。

決勝はインターバル短いよ!雑!


2回戦の相手は秋に一回大会で当たった事ある、私立中の同い年の娘。


彼女はね?パワー系なんだよね…。付き合うと疲れちゃう。

…だから全力で前半勝負!

早い時間から一気に寄り切るよ!

私の勝ち!


『強い打球だったね?危なかったよ。』


試合後。


芹『ここでご飯食べとく?』


『うん、決勝前は食べたく無い。』


おにぎり3個(梅、鮭、ツナ)と唐揚げ。うまし!


3回戦の相手は、去年負けた相手…私をベスト4止まりにした相手!

この子はバランス良く強い!

ちょっと小幡先輩っぽい。

インテリジェンス重視の隙のない試合運びに技術で裏付けられた細かい攻防!

私はそれに付き合い、上回って見せた!

去年負けて悔しくて小幡先輩が来た時めっちゃ相手して貰ったもん!

私は香椎先輩の全部上回って押し切るような横綱相撲みたいなスタイルから最近はがっぷり組み合って力比べから転調して変幻自在に崩すスタイルを得意としている。

要は力比べからチェンジペースで私のペースに持ち込んじゃう!


小幡先輩も私のペースに巻き込んじゃうんだよ?

私のペースなら…!ほら!

私は競り勝った!


『今度は公式戦で白黒付けてようね?』


試合後。


『芹ー!決勝勝てば!備品とガット張り替え券もらえる!』


芹『それそんな欲しい?』


『まあ備品も欲しいけど、特待生が欲しい。』


そうなのだ、こうゆう大会にもスカウトの目が光ってるし、良い結果なら声が、打診が来るらしい。

私見来年高校受験だもん。



決勝戦!県内の同学年では最強の呼び声高いアカデミー出身の私でも知ってる娘。

この子が上手くて強い。何度か見たから知ってる。

…でも、私が普段相手にしてるの香椎玲奈だよ?!


熱戦はタイブレークまで持ち込まれた。


(ここで使わなきゃいつ使う?)


ギリギリの試合展開、疲労とプレッシャー。

ここで決めるから必殺技でしょ!



相手の打球を…私自身が一回転して撃ち返す!!

いっくよー!


『トルネードアクセル!!』


おおおお?!

コートがどよめいた!

派手でしょ?


自身の回転を加えた鋭い回転を与えたフィニッシュブローだよ!

鋭い回転をかける事でボールの軌道が途中で代わり、軌道の頂点に達した後、ボールは落ちるの。

これで飛距離が出てアウトになる打球や高さがあってもコートに入る!鋭い軌道で!

難点は普通は一回転する暇がない事w



これが決勝点!あたしの優勝!


『今度やる時もまたあたしが勝つ!』


試合後。


芹『なんで最後だけ煽ったの?』


『絶対にまた当たるから。』


☆ ☆ ☆


表彰式終わって、何校か問い合わせがあった。

特に私立の二校は具体的な条件を出してくれた。

一校目、



女性『うちに来たらさっきみたいなふざけたストロークは絶対にさせない。

…もっと…!』


あたしこの人の教え子じゃないんですけど…。

特待生で学費免除で全寮制、制服、食費など負担無しは魅力。

でも、ガッチガチで上手くいかない時のペナルティも具体的かつ厳しい。

でもその女性は県内テニス強豪ならうちしかないでしょ?うちに憧れてるでしょ?って態度。


あたしもスンってなっちゃって、



『…良いお話しですが…お断りです♪』


芹『望ちゃん!オブラート!』


女性はイライラしながら帰っていった。



芹『あの、ふざけたフィニッシュショットは確かにバカにしてるよ。

…前々から練習してたのは知ってるけど…。』



そうだよ!やっぱ必殺技って必要なの!

これで研究してくる人は『アレ』が頭にあるはず。

それだけで武器だし、決まればでかいんだよ?


芹『あれ?なんだっけ?』


『トルネードアクセル!格好良いでしょ?


芹『格好良いかな?なんかマンガとかから?』


『わかる?そうなの!

やっぱ必殺技と言えばマンガでしょ?』


芹『マンガ由来の必殺技で試合決めるにもあそこまで威力出すのも一種の天才だけど…そんなテニスマンガあったっけ?』


『シュート!のフィニッシュショットだよ!』


伊藤宏って天才レフティが使うの!

第4部の主人公なんだよ!


芹『サッカーマンガじゃん!』


『だって兄ちゃんスポーツマンガはバスケかサッカーしか持って無いんだもん。』


芹『望ちゃんは天才的なお馬鹿だね…。』


親友引いてた。

なんにせよ!小さいけど大会優勝☆




帰ろうとすると、ニコニコしたお姉さんが話しかけてきた。


女性『こんにちわ、立花望さんよね?

私は私立北翔高校の女子テニス部のコーチをしている者です♪』


あたしは思っても見なかった名前を聞いて思わず立ち止まった。

北翔…通える距離、テニス強豪校、…宏介くんの通う学校か…。

私は話を詳しく聞いた。

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