第289話 持て余す【side小幡千佳】

初体験したわよ!ってすぐに言いに行くにもアレだから2日後の休日に玲奈に会いに行く事にしたの。


休日の午後なら居ると思うんだけど…?

わざわざこんな内容の話をしにアポとって行くのも気恥ずかしいし?


コンビニに向かうついでに家の前通るから部屋の感じ見て居るようなら何か買って玲奈のとこに寄ろうかな?


私の家から3分かからない玲奈の家の前を通る…

あ、多分居ないな?居るとカーテン開けてるかライト付けてるから何となくわかる。

まあ、急いで?話さなきゃいけないような話じゃ無いわよね?

そう苦笑いして、思いの外自分がこの話しを玲奈に聞いて欲しいのがわかっておかしくなっちゃう。

思ったよりあっけなく、でも一生忘れないそんな体験だったんだよ?

玲奈!聞いてる?なんtrやり取りを1人で想像して私は笑っちゃう。



家出たついでだからとコンビニで細々としたモノを買って家に帰る。



帰る途中、玲奈の家の前に知らない青い車。

お客さんかな?

…その青い車から玲奈が降りて来た…。

玲奈はよそ行きの綺麗な服装でお出かけだったんだろう。

私は声をかける!


『玲奈!』


玲奈『千佳?!』


何故か慌ててる玲奈。

知らないおじさんも降りてくる?親戚?


『こんにちわ、玲奈の友人の小幡です?』


玲奈『千佳!千佳良いの!今日は!ちょ!』


慌てる玲奈?どうしらのかしら?

太ったおじさんはよく見たら30代位。玲奈との関係性がわからない?


おじさん『あぁ、玲奈さんの?初めまして?』


『初めまして?』


玲奈『千佳!千佳お願い!今日はね?行ってくれない?』


釈然としない玲奈の対応。まあ後で教えてくれるでしょ?

じゃ、失礼します?

私は横を通り過ぎる。


なんかいざとなったら言いにくいわね…私の初体験!ってどう切り出せば良いのかしら?

冷静になった私は気恥ずかしさと話したいって衝動がせめぎ合ってよくわからない精神状態。

そんな事を考えていると、後から聞こえた声が信じられない内容だったわ!




おじさん『玲奈さん、隠さなくっても良いんじゃ無い?

仮の仮の仮とは言えだよ?

お友達紹介してよ?』


玲奈『新二さん!!!』


玲奈の悲痛な声が、嘘じゃ無いって物語ってる!!

玲奈に婚約者?!

こんな年上でパッとしないでぶ中年が?!

私の玲奈と?!



私の初体験どころでは無いでしょ!

婚約者?!あんな人と結婚するの?!

私は玲奈を問い詰めた!

玲奈は黙って俯いて一言も発しない…!


元々別れ際だったのかおじさんは私の剣幕に慌てて退散した。


『玲奈!黙ってちゃわからないよ!』


玲奈『…。』


『玲奈あんなおじさんと結婚するの?あんなおじさんの何処が良いの?!

ねえ、何があったの?

…承くんは知ってるの?良いの?ねえってば!』


承くんって言葉にだけビクンと反応する玲奈。

ああ、わかった黙ってるつもりなら…!


『私今から承くんに聞いて来る!

玲奈の婚約者の話し知ってる?って。』


玲奈『…止めて。』


『じゃあ話して!何があったの!

なんで?!承くんが好きなんじゃ無いの?

玲奈結婚したら…ううん、婚前交渉とかであんなおじさんにピー!されるちゃうんだよ?

今まで言ってたうっすい同人誌みたいなあんな事やこんな事!

あんなでぶのおっさんに!』


私はキレてちょっと口にしちゃいけない用語を並べ立てる。

一つ言えるのは玲奈がそんな目に遭うのを絶対見過ごせない!

絶対そんな玲奈見たく無いよ!



優奈『あはは、小幡ちゃん?うちの前でピー!とか婚前交渉交渉とかJKが叫んじゃダメでしょ。うち入って?

…ね、玲奈?』


気づけば優奈さんが側に居て、私は家へ移動して居間に通された。


そこで私は玲奈に聞かされる。

玲奈パパが経営してる家業が調子悪くって?

さっきのでぶおじさん会社と実家が太くて今切られるとヤバくて?

玲奈を気に入ったあのでぶおじさんは婚約申し込んで?

玲奈はそれを受けたって事?



『バカじゃ無いの?』


思ったより辛辣な言葉が出ちゃった。

でも、思った事。

玲奈は俯き加減に、モゴモゴ言う


玲奈『でも、私が上手くやれば?会社もさっきの新二さんも?向こうの会社もうちの家族もみんな傷つかずに上手く行くんだよ。』


『玲奈を犠牲にして?』


玲奈『うまくやれば大丈夫だよ。婚約は仮の仮の仮だから?

まだ私結婚出来ない年齢だし?』


『でも、今日みたいなデート?お出かけ?何度もあったんでしょ?』


玲奈『…まあ。

何度も行ってるよ。』


『承くん知ってるの?』


玲奈『…承くんは知らないよ。

…黙ってて。』


『玲奈は好きな人居るのに、好きでも無い人とデート出来る娘なんて思わなかった!』


玲奈はイラつき初める、


玲奈『さっきから千佳なんでそんなに怒ってるの?』


『玲奈がバカだから!』


私は抑えられない!


『玲奈がバカで!何で今まで私に相談してくれなかったの?!って怒りと!

親友がこんな目にあってるのに気付かずにるんるんだった自分が腹立つ!』


自分の能天気さに腹立つ!

玲奈はなにかあれば自分が皆んなの為にとか自分が上手くやれば!とか背負い込んじゃうタイプ!

そりゃ人様の家の事だよ?

でも、これは高校生には手に余るよ!

承くんが体育祭や文化祭で玲奈を助けたとかと全然違うピンチ。


玲奈は婚約自体は破棄できる。

実家の会社の業績自体は回復中だし?

相手新二さんとやらも傷つけたく無い。

だから今、その新二さんと学生時代思い人の再会を演出してそっちとくっ付けて?私はフェードアウトする策を実行してるんだ!って玲奈は言う。



『そんなに上手く行くかな?』


私は疑問に思う。

自分よりだいぶ大人でしょ?

特に好意恋愛絡みで?

私が男なら玲奈みたいな超絶大当たりな美人と結婚出来るなら?多少の無理はする価値あると思うんだよ…。


玲奈は頭も良いし、度胸もあるし、心も強い。

…でも危うい。背負いすぎるし、人を信じすぎる。

そして最悪自分が犠牲になっても良いって考えちゃうところがある。


玲奈話は一見理が通っていて、説得力がある。

だからこそなんか怖い。

そんなうまくいく?


私は親友に忠告する。


『でも、承くんには伝えておいた方が?』


玲奈は大きく首を振り、


玲奈『絶対承くんは納得しちゃって身を引く。

絶対に知られちゃいけないんだよ。』


『私は何処かで見つかって?知られて?

大惨事になっちゃう気がする…。』


玲奈『怖い事言わないでよ…!

うまくやるから!』



結局私は玲奈に他言無用と約束させられた。

家に帰ってコンビニの袋からすっかりぬるくなったカフェオレを取り出し弄ぶ。

…私の初体験どころじゃ無いでしょ?

このままじゃ玲奈あんなおっさんのお嫁さんになっちゃうんだよ?

本当に破棄出来るのかな?


私は口は堅い方だけども生まれて初めて人の秘密を持て余した。

親友の危機を思いびとに伝えた方が良いんじゃないか?

何も出来ないだろうけど知ってた方がお互いのためになるんじゃないか?

答えは出ないまま、コンビニで買った暖かいカフェオレは私の手の中でどんどん冷たくなっていった…。


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