第286話 紅緒永遠は遠慮しない

そう言えば、永遠ちゃん…玲奈さんと会ってから永遠ちゃんって呼べってうるさいんだよ…。

そう、永遠ちゃんがまた変わった。


昼休み、社会科教室。

お弁当を食べていつものメンバーで談笑していると、



永遠『ねえ?ちょっと聞いて欲しい…。』


それは、紅緒永遠の暗黒時代の話、告白時に聞いた闘病生活と死にまつわる話し。

そして自分の再発率の話し。

夢の話だけはぼかしてたけど…。


俺と伊勢さんは聞いていた。

でも青井と仙道は知らなかったわけで。



青井『…そんな良くないんか?医学でどうにかならんの?』


仙道『…そうだったんだ…。』


ショックを受ける2人に謝りつつ、


永遠『だからね?毎日が楽しいし、大事。

気を使わせたくないって思って黙ってたんだけど、人から、

知らないで後で後悔させちゃうんじゃないかな?って言われて話す事にした。

…これからも仲良くして欲しいな…。

出来ればそんな気を使わずに…ね?』


永遠ちゃんはそう言うとまた透明感のある笑顔で微笑む。

ほんっとそれやめろ。


永遠ちゃんは俺に玲奈さんの話しを聞きたがる。

伊勢さんにも聞いてたけど、


伊勢『…あーし、香椎玲奈とは友達じゃないから…。』


って断られたんだって。


永遠『…って言うの。あんな人当たりの良いなるみんと外面だけは良い玲奈がなんで?承くん知ってる?』


俺も詳しく知らないけど…?木多さんの暗躍があったんだよね…。


『子供の頃色々あったみたいよ?』


そうなんだ…永遠ちゃん思案顔。


永遠『こないだ、玲奈とロインで写真交換したんだけど…なんで玲奈が承くんの学ラン着てるの?マラソン大会玲奈のキスかかってるって勘違いして?限界まで走って優勝したの?』


最近新たな情報を得たのか永遠ちゃんの追求は収まらない。

めんどくさいなぁって思いつつ、



『仲良しだね?すっかり?』


永遠『仲良しじゃ無いよ?仲悪い。

…でもさ?高校の(承くんの)写真送ると中学の(承くんの)写真送ってくれるの!』


『まじ何してるの?中学と高校の校舎の?写真交換して何が楽しいん?

…嫌がらせ?』



あの日のふたりは一日中険悪でさ、

望がその険悪さを真似しながら、


「コレ(立花くん)わしのぞ?シャー!」

「何を言うん?わしのぞ?シャー!フー!」


って可愛い猫同士が毛並み逆立てて威嚇しあってるような感じだったね!

って腹を抱えて笑ってた。

※ @nakasimanakasimaさんのコメント欄より。秀逸な光景が思い浮かぶコメントありがとうございますw



いいの!

もうライバルにも会ったし?これからライバルから学べば良い!

怖いもんなんてないもーん!

永遠ちゃんは机に頬杖つきながら笑うんだけど…

俺は切り出す。



『やっぱ女の子を下の名前でなんて呼べない。

違和感強くて会話に集中出来ない…やっぱ紅緒さんで。

…時々とわんこでお願い?』


紅緒さんはガバッと体を起こして、


紅緒『なんでよ?!いいじゃん!

玲奈は玲奈って呼ぶでしょー!』


『あれだって長年矯正されて…それでもすぐ香椎さんって呼んじゃうんだから…。

とにかく、無理!』


紅緒さんは不貞腐れて、ぶつぶつ言いながら食後の薬を用意し始めた。


紅緒『大体告白後にも一回名前で呼んで?って頼んではぐらかされて?

今回やっと玲奈のどさくさに紛れてやっと永遠ちゃんって呼ばせたのに!

…ふーんだ、もう良いもん!…どうせ私なんて…。』


よよよ、って泣き崩れて見せるけど口元笑ってるじゃん!


紅緒『ふーんだ、もう薬飲んで不貞寝してやる!

処女だし、彼氏も居ないけど不貞して寝てやる!』


ぶつぶつ言いながら、出るわ出るわ薬がどんどん溜まっていく!

え?そんな飲んでるの?そんなに薬飲んで大丈夫なの?!


紅緒『嫌だなぁ、病院から処方された薬だよ?身体に悪い訳がないでしょ?

…まぁ見た目よろしく無いから今までは遠慮して洗面所で飲んでた。』


紅緒さんなりに気を使ってたらしい。

まあ薬くらいここで飲めばいいじゃない?


紅緒『じゃあ失礼して…。』


小さい一山ある。

色とりどり錠剤やカプセル。

それが小山になって10錠じゃきかないよね…?

なんか薬それだけ飲むだけで嫌になるって言うか食欲が無くなりそうではある。



それを紅緒さんは水も使わず一飲みにする。

え?一飲みなの?


紅緒『…どくん!』


自分でどくんって言ってるじゃ無い?


紅緒『心臓と血液に働きかける薬だから摂取してすぐドクン!って『きた』ってわかるの。』


大したことじゃ無いと言わんばかりに説明する。

そしてにっこり笑って、



紅緒『…長生きして出来る恋愛なんてたかが知れてるでしょ?

今日強くなれるならば明日はいらない。』



仙道『バキですなw』


青井『ジャッ⚪︎だ…。』


格闘バトル物の有名タイトルを呟く青井と仙道に元ネタバレた紅緒さんは赤くなりながら言い訳してる。


紅緒『入院中のおじさまたちが少年漫画のバトル物ばっか持ってくるから…!』




今日も紅緒さんは自由です。

名前呼びはなんとか勘弁してもらったよ!

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