第285話 ボールを持てば主役

2月初日の休日。

バイト先俺カレにて


『…って事があってさ?』


俺は先日にあった、修羅場の話しを人名は伏せて保利くんにする。

保利くんはすっかりバイトに慣れて週4午前シフトに入っている。


保利『…立花くんてそんなに陽キャのモテ男だったんだね?』


『俺が陽キャでモテ男?無い無い!

保利くん見る目無いね!』


保利『…ヌシちゃんに伊勢さん?それ以外の子でしょ?』


伊勢さんも常連だから知ってるんだよね。

ヌシちゃんって永遠ちゃんのあだ名定着してんだね。。


『それより!聞いて!あっちゃんがさ!』


保利『その女の子たち報われないね…?』


俺はあっちゃんに寄り添うって決めてから、ちょいちょい家行って?

おやつ食べながら話して?話ししない時は黙って持ち込んだ漫画とか読んで?

わざと置いて帰って、後日感想聞いたりしてんの!


保利『…丁寧に執念深く友好度上げてるって感じする。』


『で!今日の夜!

あっちゃんとバスケするの!ふー!』


保利『だっけ、立花くんご機嫌なんだ?』


『あっちゃんとバスケ四年以上ぶり!

あの頃はあっちゃんの独壇場だったけど…今なら…?

俺教えてあげられるかも…?』


保利『…つくづく、その女の子たち報われない…。』


保利くんは俺を呆れた目で見てたなんでだ?


☆ ☆ ☆

その夜、俺カレ近く国道下バスケコート。


厚樹『うっす。』


『おっす。やる気マンマンじゃない!』


あっちゃんはジャージ姿でうっすら汗かいて登場して体を温めてきたらしい。


景虎『おっす、承の友達な?よろしく!

ポジどこできそう?』


厚樹『…いや、詳しくやった事無くって…すいません。』


景虎『いいって!なんかスポーツやってるの?』


厚樹『…いえ?全然。』


俺は景虎さんにフォローする。まあ事前に幼馴染と再会したって話しはしてた。

運動神経はすごい良かったんですよ?って。


景虎『…いや?俺が聞いたのはアレすごいフィジカルだぞ?』


3on3は目まぐるしく攻防が変わる早い展開が売りのバスケだけど…、


うん、俺、調子に乗ってた。

教えてやれるかも?


厚樹『承!ワンツー!』


あっちゃんの鋭いドライブで対戦相手の大学生を引き離し、俺にボールを預けて抜け出すあっちゃんの先にボールを出すとそれをすごい勢いで半回転しながら振り向きざまにシュート!あっちゃん今日20点目!


才能?身体能力?

体育の授業の手を抜いたスポーツしかやって無いって言ってた男は俺の憧れのヒーローそのままの姿で輝く。

そう、昔からスポーツは彼の独壇場だった。

ブランクあるはずだけど、小学生の頃と違い成長期に入ったあっちゃんの身体能力はえげつないほど高く、身長172cmって聞いたけど、俺より低い身長でとんでもない高さの打点のシュートを放つ。

それは綺麗な弧を描き,ゴールに吸い込まれる…!



景虎『な?アレはバケモノの類だぜ?まともにスポーツ志せばそれなりのプロになって成果だせるぞ?そうゆうタイプの人間だな。』



俺はそれをうっとり眺めて、景虎さんに誇らしく語る。

そうだった、いつもボールを持てば彼が主役!それがあっちゃん!

俺が憧れた男!


『あれが、俺の太陽だった男。俺のヒーローあっちゃんです…。』


景虎『…今日の承…キモい…。』



好きに言うが良い。

試合で大活躍のあっちゃんは、


厚樹『あ!スタミナ切れそう!』


ってセーブした動きになった。

これなら十分抑えられちゃう程度の動き。

…ブランクあったもんね?


2時間ほどたっぷり汗をかくとあっちゃんはもう息も絶え絶え。

後半は流石にバテバテ。


厚樹『…承はスタミナすげぇな…?』


『あれからずっと走ってるからね?』


厚樹『あの頃…楽しかったなぁ。』


『また、楽しくなるよ?その為に走ってるんだよ?』


3話 俺にとってのヒーロー 参照、古い(笑)


あれからずっとだもんね…。

あの頃小4だった俺たちは高1になって。

一時はもう会えないとまで思ってた親友とまた同じボールを追う事が出来る嬉しさに俺は泣きそう。


『…バスケ部、作れてたら違ったかもね?

サッカーも楽しかったけど?』


厚樹『…はは!ははは!

…俺、服の中びちょびちょ。汗拭いてくるわ。』



あっちゃんは国道下の柱の影でジャージを脱いで顔を拭いてた。

丹念に時間をかけて、ゆっくり。


鼻をすすり、啜り泣く声が聞こえた。

俺は知らんぷりをした。



きっと久しぶりのバスケは、友達とのバスケはすっごい楽しかったんだろう?

俺も超楽しかったし。


もう少し、もう少しで、あっちゃんがあっちゃんを取り戻す気がする。


宏介が言ってた。


宏介『人は変わって行く所が良い。

でも、変わらないところも良いんだよ。』


俺もそう思う。

どんな大人になるかなんてわからない、

でも、自分の思い描く自分になりたいよね?


あっちゃんの思い描く自分はどんななんだろう?

過去の自分?今の自分?それとも理想の形があるのかな?


人は自分が主役の人生をそれぞれ生きている。

でも、自分は人の人生にとっては脇役な訳で。

出来るならあっちゃんや宏介たちの人生において俺は良い脇役でありたいなって思う。



この日から、あっちゃんは走り込みを初めて身体を鍛え始める。

そして時々一緒にバスケをしてくれるようになった。

…そして、それは内向的だった、東条厚樹って漢を少しずつアクティブにポジティブに変化させていく。

俺がそんな男に救われるのはもう少しだけ先の話し。




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