第282話 修羅場は続くよ

2階から茶の間へ戻って来た香椎さんに、ひーちゃんと俺が紅緒さんの胸元見てるところ見つかった。


いや!違うの!

これはね?紅緒さんの胸元にある手術痕をひーちゃんが…。

さっきはひーちゃんが胸元開けて傷痕見せてて…!

頭の中ではするする答弁が浮かぶが声は出ない。


玲奈『望ちゃん?みんなそこに正座させて?』


望『はーい!』


紅緒さんはまだ胸元開けたままニコニコしながら正座する。

ひーちゃんと俺は居心地悪そうに正座した。


玲奈『小さい子に何してるの?

子供に教育上良くないよ?』


声は穏やかで大きくないのだが、威圧感半端ない。

香椎さんはひーちゃんと俺に向かって、


玲奈『…ひーちゃんはとにかくお兄さんは何をしてたのかなあ?

そんなに、お、女の子のおっぱい見たいの?

でも、もごもごもご…。』


香椎さんは問い詰めながら赤くなっていき、もごもご呟いて頭から湯気出そうな感じ。


『いや、これはね?紅緒さんの胸元に…』

紅緒『胸元に興味があったんだよね?』



ちょ!おま!



香椎『ふーん…。』


香椎さんの目が冷たい!ヒュッ!って喉が鳴る、待って話し聞いて!


望『あ、とわちゃんも胸元に手術痕あるんだったね…。』


望が呟くと、紅緒さんはガバって音を立てて胸元を覆い隠す。

…気軽に誰にでも見せたいモノじゃ無いんだろう。

コンプレックスあるって言ってたもんな…。


望が紅緒さんに話しかけて、違う話しをしてる間に香椎さんに紅緒さんの心臓の話をかい摘んで話す。



香椎『!

それでひーちゃんと…。』


『うん、そうなんだ。』


香椎『…でも、あんなに胸元覗き込んで…。』


香椎さんの冷たい視線が辛い…。

でも、これで少しは…?

後ろから望の素っ頓狂な声が響く!


望『え?!

兄ちゃんとわちゃんの胸元にキスしたのー?!』


なんて事言うの?!

止めて!

そろそろ後ろの香椎さんを振り返ると…。



顔だけは笑っていらっしゃる…。

でも、目は笑ってなくて…。



☆ ☆

花の慶次 佐渡攻めにて。

怪力無双の大男、蛮頭大虎がその剛力で扉をこじ開けた際に槍で体を貫かれて、もうダメだってわかったシーンより、

慶次に大虎があれ?って表情で話しかけるんだよ、



大虎『わ…わし、死ぬのかな?』


慶次『あぁ。』



☆ ☆ ☆


『俺死ぬのかな?』


玲奈『何言ってるの?まだ話し終わって無いよ?』


香椎さん、目が怖い…。

追求は止まず。


玲奈『女の子の胸元にキスしたの?どうゆうシチュエーションで?

なんで?ね、なんで?承くん?』


香椎さん怖い…!

冷静に根掘り葉掘り聞いてくる所がすっごい怖いー!


ひー『かしちゃん!ぼくがね?おむねのキズのことでないてたらにいちゃんとねえちゃんがキズにちゅってしてくれたの!それだよ!』


ひーちゃんが助け舟を出してくれる!


玲奈『…それを同じ年の女子高生にしたの?

胸元にチュッて?承くんが?紅緒さんに?』



紅緒『文化祭の後夜祭の時!告白した後!お願いしたんだよー!

そして、薄暗い社会科教室で?もちろんふたりきりで?

承くん…情熱的に…胸元にチュッて♡』



玲奈『有罪。情状酌量の余地は有ると思うけど…死刑かな…?』


『…弁護士って求刑はしないんじゃ?』


玲奈『ギルティだよ…。』


紅緒『大丈夫、責任とって貰って?お嫁さんにしてもらうから。』


玲奈『…。』



またピリピリからビリビリに空気感が戻ってきた…。


望『じゃあ!そろそろ人生ゲームやろうか?』


このタイミングで?!


ひー『わーい。ぼくじんせいゲームだいすき!』


ひーちゃんありがとう。食いついてくれて…。

じゃあ、トイレ行ったり?俺またお茶淹れてくる…煎餅も持ってくる…。

俺…お茶淹れるの好きになった、今日だけで何回救われた事か。

望はテーブルのセッティング、ひーちゃんは2階から人生ゲームを運んでくる事になった。


☆ ☆ ☆

ひーちゃんを取り戻せ  side香椎玲奈


ふー。思ったより紅緒さん立花家に食い込んでるよ…

正直予想外。

高校入学時に会ったって事はまだ一年も経ってないのに?

家に遊びに来て?お嫁さんならない?って言われて?

特にひーちゃん!私の手懐けて!


悔しいよ!

お遊戯会では私を呼んでくれたのに?

今日は基本的にずっと紅緒さんの側に居る!

心臓の事、胸のキズ。

共通項で親しみやすくなったのかな?


私のひーちゃんをたぶらかして!

私はこのままにはして置けなくって、懐柔を試みる。

要は紅緒さんに向いちゃった感心を取り返したいの!

2階に人生ゲームを取りに行ったひーちゃんを私は手伝おう。



『ひーちゃん♪』


ひー『…かしちゃん。。』


ひーちゃんは申し訳無さそうに私に対する。

良いんだよ?ひーちゃんと同じ悩みわかるから紅緒さんと仲良くなったんだよね?

私はひーちゃん頭を撫で撫でしながら、良いよ?って伝える。


『今日これしか持ってないけど、またおやつ作ったら食べに来てね?』


クッキーの小袋を渡す。

いつもひーちゃんと承くんと望ちゃんの事をかしちゃんは思ってるよ?

そう一言添える。


ひー『かしちゃん…かしちゃんだいすき…ぼくはどうしたら…。』


『みんなで楽しく遊ぼう?ね?』



ひーちゃんはうん!って頷いて、私と手を繋いで茶の間に戻ったよ。

少し私に戻って来たかな?


☆ ☆ ☆

対香椎玲奈対策   side紅緒永遠


人生ゲームのセッティングに和室に大きなテーブル持ち込んで望ちゃんが用意してる。

私はそれを手伝おう。



望『とわちゃんありがとう!』


『ううん、大丈夫!

…こないだのタイガー家さんの羊羹どうだった?』


望ちゃんは警戒するように、


望『もう全部食べたから、返せないよ?』


そんな!返せなんか言わないw


『今日は香椎さん来るなんて思って無かったよ。』


私が呟くと、


望『前も言ったけど?香椎先輩は世話になってる先輩だから、とわちゃんに味方は出来ないよ…?』


うんうん、わかってる、わかってる。


『大丈夫!望ちゃんだって義理や立場があるもんね?

中立で良いの。香椎さんの味方!って感じじゃ無ければ?』


望『…でも、私先輩に…。』


私はリュックから、『コレ』を取り出す。


望『こないだ先輩からハーゲンダッツ詰め合わせ貰ったから?

今は甘いモノは?』


ふふふ、丁度良いね。

私はそっと望ちゃんに握らせる。

握らせるって言うには大きすぎる存在感だよ!



『何コレ?

…ハム?!こんな立派なハム?!

貰って良いの?!』


『望ちゃん、厚く切ったハム表面だけ焼いたり、ありえない厚みのハムカツ食べた事あるかな?』


ゴクリ、望ちゃんは明後日の方を向いて言ったよ、



望『こないだ言ったかもだけど?

恋愛は個人個人問題だよね…。いくら先輩と言えど…。』



望ちゃんはハムに名前を書いて隣のキッチンへ仕舞った。


コレで五分以上でしょ?

ひーちゃんを味方に、望ちゃん中立なら私有利!


☆ ☆

修羅場を楽しむ女   side立花望



兄『じゃ、人生ゲームするか?』


『じゃあ兄ちゃん銀行(進行)ね?』


兄ちゃんは助かる、中立で居られる!って顔してる…!

とわちゃんからハム貰ったし?先輩にも義理あるし?

中立だけど面白くしたいよー!

こんな提案はどうかな?


『折角だから賭けようよ!勝った人はうちの兄ちゃんとデートはどうかな?』


ふたりの目の色が変わったよ!

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