第278話 寄り添うだけ。

『わかった。

あっちゃんの気持ちはあっちゃんにしかわからないって事だけは…。』


俺のヒーローが転校後に連絡を絶った理由を、何があったのか聞いた俺はそれしか言えない。

今まで自分を構築してたものを全部無くして、ある意味否定されて、どれほど辛かったんだろう?

…俺だって香椎さんや宏介が居なかったら、いじめられて、否定されて潰れてたかもしれない。

人と関わって知った事。学んだ事、感じた事、人は人に学ぶんだってわかった。



そうゆう人の繋がりを無くしてしまった事があっちゃんの不幸だと思う。

自分で絶った部分、離婚や引っ越しで無くした部分一概には言えないけど大事な時期にそれが無かった。

わかったふりしてもしょうがない、軽くわかるよ!なんて言われたら腹が立つだろう。




俺は伝える、


『また来る。』


あっちゃんはこいつわかってねえ!って顔をして念を押す。


厚樹『いいか?絶対来るなよ?絶対だぞ?』



なんだ、前フリじゃない!


『わかってるって!絶対!絶対来るなよ?って事は?』


絶対に!絶対来るなよ?!

これは来いって合図でしょ?


俺は知らんぷりしながら、はいはいって適当に返事をする。

辛い話で、悲しい話でもあったけど知る事が出来た、

俺に出来る事なんか無い。

でも話し聞くことは出来るし、側に居ることは出来る!


経緯はともかくとして、誰にも話さなかったであろう過去の話しを俺にしてくれたって事だけは満足して家路に着いたんだ。



☆ ☆

厚樹『お前さ?こないだの話わかって無いでしょ?』


『いや?正しく理解してるけど…?』


翌週、あっちゃんち家。

俺はまた上がり込む。

学校で声かけるのは減らした。

だから家押しかけて話しをする。


最初は嫌な顔するあっちゃんもまあまあって上がり込んで、買って来たおやつ摘みながら話しをすると、会話に飢えてるのかボソボソ話し出す。


俺はあっちゃんが居なくなったあとの話しであまり思い出したく無かったカットした部分を、ゆっくり語る。

漠然と外町と敵対したみたいに話した部分を、委員長にさせられて、諸々の嫌がらせや首になった話、クラス為に泥被った話し、弟のひーちゃんが心臓悪い話し、その医療費で生活苦しい話し、言いにくかったり、恥ずかしいからカットした部分を話す。


…香椎さんとの日々は実行委員や修学旅行の班一緒って事以外あまり話せなかった…恥ずかしすぎる…。



あっちゃんも聞けば感想や自分の話しをする。


そんな日々を俺とあっちゃんは過ごす。


俺が感じた事で


あっちゃんは否定されている。

特にお母さんに。

気持ちはわかるけど日に日にお父さんに似てくるあっちゃんをそうなって欲しく無いんだろうけど否定する。

あっちゃんはお母さんが大事だから言いなりじゃないけどそっちに寄せてる。


引越して、お母さんも頑張り働いているんだろうけど、あの世界的な感染症の流行で職場がダメになって、収入減り今のアパートに引っ越して生活も苦しいらしい。


お母さんとも会ったんだけど、

俺を見て懐かしいって顔したあと、顔を固くしてもう大人になったんだからバカな遊びはしないでね?って釘刺された。

あれはあっちゃんが発案ですよ?と言いたいw


あ!でも遊び!

それは良い考えだ!

お金使わせる…って遠慮してたけどさ、お金使わないで遊べば良いじゃ無い!



『あっちゃんさ!バスケしない?』


厚樹『…しない。』


『ボールあれば出来るしさ?

俺、バイト先の人たちとバイト後にバスケやってるの!

青井もよく混ざるし、宏介も今高校でバスケ部なんだよ!』


厚樹『…へぇ…。

…でも何年もまともにスポーツしてないし…。』


あっちゃんは転校後サッカー辞めた。

今は時々ランニングする位なんだって。

勿体無い!小学生時代あの完くんを完封してどんな競技でも大活躍してた万能運動神経持ち主が?本当に勿体無い…まあ部活もお金はかかるもんね。。

学校の体育しかスポーツしないし、手抜いてやってるんだって。


まあ、気が向いたらで良いよ?

俺は提案するだけ。

無理強いも押し付けもしない。

ただ会って話したいからそれだけは押し付ける。


友達が側に居るのに理由なんていらないでしょ?

俺は焦らずにじっくり腰を据えて話しをする機会にしっかり話す。

それだけ心掛ける。


そんな日々が続く。

3学期、冬。俺はあっちゃんと過ごす時間が多かった。

あとはバイトと勉強に注力して、

景虎さんとバスケしたり、組み手っぽい事したり。


そんな日々を過ごした。


☆ ☆ ☆

そんな日々を過ごしてたんだけど?

お昼、いつものメンツで、


紅緒『…私放っておきすぎじゃない?』


はあ?紅緒さんはスネながら言う。


紅緒『ヒロインとしての待遇を要求するよ!』


紅緒さんが暴発しそう。

まあまあ今度?また今度な?


紅緒『もう、ぐれる。

髪の毛金色に染めて生徒指導室のお世話になる!』


すっかりやさぐれた紅緒さんはしゃがみ込んでうらみ言を言いながらチラチラこっち見てる…こっち見んな。


伊勢『間接的にあーしディスられてるんですけど…?』


伊勢さんは入学式の日に金髪にして来て初登校で校門から生徒指導室へ直行って伝説を持っている。



『どうしたらいいの?』


とわんこはパッと顔を輝かせ、



紅緒『おうち!承くんち行くー!

承くんとひーちゃんで逆ハー!!』


『…逆ハー??』


俺は疑問符だらけ?


伊勢『多分逆ハーレムだよ。』


とわんこは最近狡猾で、ひーちゃん宛に電話してくる。

ひーちゃんも自分宛に来る電話嬉しいし、スマホ放置出来ないから俺は必ず近くに居るから兄弟でとわんこの暇つぶしに付き合わされるのだが…。

またひーちゃんと紅緒さんめっちゃ仲良いんだよね。



紅緒『じゃ立花家へ週末遊びに行くね!』


そんな約束を強要されてしまった…。

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