第267話 立花家訪問記【side紅緒永遠】

土曜の休日の朝、初めて新川駅へ降りる。

…うちの東光駅よりは栄えてる…。


改札口はひとつ、先にひーちゃんと承くんが見える。


ひー『とわちゃん!とわちゃーん!』


『ひーちゃん!えーい!』


ひーちゃんとハイタッチする!

こないだ仲良くなった距離感そのまま!

可愛い!ひーちゃんきゃわわ!!


承くんは横で困ったように、


承『なんかひーちゃんが無理言ったみたいで?ごめんね?』


『ううん、今日なるみん家に泊まる約束してるから、ちょうど良いんだよ!』


これは本当。

ちょうど新川へ行く事になってたからむしろ一石二鳥!


承くんが私の小型スーツケース持ってくれて?

ひーちゃんを真ん中で3人手を繋いで歩く。


『学校へはどうやって行くの?』


『ああ、この道を左折すると大きな橋が…』


承くんの生活に触れながらひーちゃんもお話ししてくれて、楽しい散歩。

いつもなるみんたちと待ち合わせるコンビニでお茶を買って一息。

…香椎さんはこの辺に住んでるんだろうか?


少し休んでまた歩く、児童公園を過ぎて、歩道橋を渡り、

小学校の横を通る。


(ここが承くんが話す小学校…宏介くんやあっちゃんと遊んでたんだね。)


で、幼稚園の横を通り、ひーちゃんがぼくここにかよってるんだよ!って大はしゃぎ!


いよいよ、立花家前へ。

ちょっと身だしなみ整えて、衣類の裾や襟を直して帽子を脇に抱えて、お邪魔する。


『おじゃまします。』


ひー、承『いらっしゃい。』


お祖父様『おお?承くんが女の子連れてきた!』

お祖母様『ひーちゃんじゃ無い?ひーちゃんモテるから。』



『承くんの彼女志望です!…なーんちゃって?』


『『おおお?!』』


お祖父様とお祖母様が笑って出迎えてくれた。


客間みたいなとこで、荷物下ろして座ってると、お祖母様がお茶をいれてくれた。

お祖父様もお祖母様も私に興味津々で、質問責めにあっちゃって。

私は笑いながら、恥ずかしがりながら答えた。


お祖父様『良いお嬢さんだ。。』

お祖母様『承くんのお嫁さんになってくれたら良いねぇ…。』


『ふぁい!』


承『紅緒さん?!』


お祖父様とお祖母様は笑いながら居間へ戻られた。


承『おい、とわんこ!調子乗るなよw』


承くんは苦笑い。冗談だと思ってるね?

良いんだ、外堀から埋めていくんだもん。


『あれは他所行きの顔だもーん!』


ひー『とわちゃん!あそぼ!おせろしよー!』


ひーちゃんは最近オセロを覚えたんだって。

私はひーちゃんとオセロで対戦して、承くんと対戦して、兄弟対決をして。

ひーちゃん一位、私二位、承くんが三位だったのね。

…良いお兄さんだね?私は微笑ましくって目尻が下がりっぱなし。


今日、お母様はお仕事、望ちゃんは部活、お昼には帰ってくるらしい。

トランプしながら、さっきのオセロもだけど立花家の面々はよく話す。

学校の方が無口なのかな?違うね、ひーちゃんがお話し大好きなんだね。


承『ひーちゃんも望も怖い話だけはダメだけどね。』


なんて言ってた。


お昼時になって、私は申し出る。


『承くん、私お弁当作ってきたの。

もし良かったら…食べてくれないかなあ。』


ひーちゃんも承くんも、


ひー『なになに!たべたい!ぼくおべんとうたべたいよぅ!』


承『え?良いの?』


じゃん!早朝から作った自信作!

たまごサンドとコロッケと諸々だよ!


承くんもひーちゃんもむくむく音を立てて食べてくれて、嬉しい!

承くんは健啖家でよく食べるから多めに作って来たんだけど作り過ぎたかな?

って量作っちゃった…。


ひょい、


横から白いスラっとした手が伸びる。

あ!妹さんの?望ちゃん!

俺カレで一度お会いしたのね、



望『うま!お姉さん美味しいよサンドイッチ!

…でもこないだの香椎先輩の方が美味しい…かな?


ただいま!妹の望です?

…紅緒さんでしたっけ?』


そうだよ、こんにちわ。

それより?


望『ねー?こないだひーちゃんのお遊戯運動会の時来てくれたの。

香椎先輩、唐揚げも美味しくって…。

コロッケうま!』

223話立花家の食事光景 参照


むむ!ラーメン断られた日のアレだね?!

望ちゃんはもりもり食べながら、


望『あ、こないだより表情が優しくってニッコニコで一瞬わからなかったです。

どうしよ、先輩に報告しなきゃ!お兄ちゃんが女の子連れ込んでるー!』


『きゃー!もっと言って!』


本音出ちゃったよ。やっぱり聞いてた通り望ちゃんと香椎さんはテニス部の先輩後輩で強い繋がりがあるね。

私が味方に引き入れるのはひーちゃん!

ひーちゃん!君に決めた!

…うん、それ以前にひーちゃん可愛い♡


妹の望ちゃんが帰って来て、立花家は大賑わい!

笑顔と笑いが絶えない家。

三兄弟は陽気で優しくて私は憧れちゃう。

うちひとりっ子だからさ。兄弟や姉妹に憧れがあった。


…もし、もしも、いつかこんな妹弟が出来たら素敵だなぁ…。


承くんが離席したタイミングで、真面目な顔して望ちゃんは私に言った。


望『私…香椎先輩大好きなんで…応援はしてあげられないよ。』


うん、そうだよね。

はい、望ちゃん。


望『何コレ?』


贈答品で貰ったタイガー屋さんの羊羹。


望『え?良いの!わーい!

紅緒ちゃんから羊羹貰ったー!

応援はしてあげられないよ?でもこうゆうのは本人同士の事だからね?』


食べ物に弱いって承くんの言う通りだった(笑)

邪魔されたり嫌われないだけで充分!


そうは言っても望ちゃんも素直で天真爛漫な女の子で楽しい子!

なるみんと仲良しなら私も仲良くなれるはず!


午後も4人で遊んで、キャッキャして。

おやつ食べながらおしゃべりしたり、楽しい時間。



なるみん『こんにちわ、望ちゃーん、とわわん来てるー?』


望『来てるよー!上がってー!』


なるみんも来てみんなでガヤガヤおやつをつまみながらボードゲームしたり、トランプしたり、すっごい楽しい!

夕方4時に立花家を出て伊勢家へ向かう。


『おじゃましました。』


玄関で頭を下げて、お礼を言う。


ひー『またきてねー!つぎはしんけいすいじゃくしようよ?』

望『サンドウィッチやおやつごちそうさまでした!』

承『スーツケースあるから伊勢さんちまで送るよ。』


さっきの歩道橋の下流の橋を渡って伊勢家へ移動した。

(良いなあ、私が病院でモノクロの日々を送ってた頃、こんな日々を送ってたんだ…。)


寂しくなると同時に、少しでもこんな日々を送りたいと心から切に願う。

私立花家好きだな。


そう思った。



☆ ☆ ☆

その夜の伊勢家


伊勢成実の部屋着はフリース生地の真っ白半袖ショーパン上下にグレーの大きなサイズのダボっとパーカー。


紅緒永遠は花柄のパジャマ。


さっきまでキャッキャ話しで盛り上がってたふたり。

9時を回った頃になると…


成実『…ねぇ、とわわん。寝たら?むしろ寝て?』


永遠『もったいない…寝れないよ…明日が来る保証は無いんだよ…!』


永遠は閉じる瞼に抵抗して、目と眉間がバッキバキになっていて成実は見ていて辛かったという。


☆ ☆ ☆

今日の誤字。


中盤、永遠のごはんを喜んで望が食べるシーン。



望ちゃんはモリロリ食べながら

⚪︎MORIMORI

×MORIRORI


ぺぺぺーってタイピングしてMとRを間違えたんだけど…


モリロリってなんだろう?

なんかパワーワードっぽいw

もろロリじゃなくて良かったね(笑)


望『ロリじゃ無いもーん!大人のオンナだもん。』


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