第264話 逃げるけど追ってきて欲しい【side香椎玲奈】

私は待ちぼうけで、心配して、追いかけてやっと承くんに会えたら、

承くんが興奮気味に厚樹くん…小学生の頃転校した元親友の事を熱く語るのを聞いてどんどん心が冷え切ってきて。


(承くんにとって、厚樹くんは特別…仕方ないよ…でも…。)


昨日からるんるんでクッキー焼いたり、お茶の支度、サンドウィッチ、何を話そうかな?ってウキウキしてた自分、

承くんが来なくっても、遅れても心配してた自分が

その間、私の事なんか全く全然カケラも思い出さなかったって事実に怒りより虚しさが溢れ出した。


承くんは謝ったり、送るとか言ってたけど今はそばにいて欲しくない。

そう、思うと帰り道の足取り重く、惨めで惨めで泣きそうになりながら家へ帰った。


あ、公園にクッキーや諸々置きっぱなしだ…。

なんであんなにひとりで盛り上がってたんだろう?


滑稽、滑稽、烏骨鶏ウコッケイ


はは、私ダジャレの才能あるかも。


公園はもう真っ暗で誰も居ない。

東屋のクッキーは…うん、無事だね。

…まぁこんなクッキー誰も盗らないか…。



これ処分するのも大変だ。残して置いても気に障る。

お姉ちゃんに食べさせるにもきっと理由を追求される…。でも食べ物捨てるのは嫌。


私は重い気持ちで家へ戻り、シャワーを浴びて部屋着に着替えてゴロンとベッドに横になる…。



『…う、う、うえぇ…。』


涙が出たらもう、止まらなかった。

なんて惨めな女の子だろう、好きな男の子をもてなす為にあんなに頑張って忘れられて。


10分も泣いたら、落ち着いた。

ママやお姉ちゃんにバレちゃうよ。

私は目元を冷やして軽くメイクをして何事も無かったように振る舞う。


その甲斐あって何も突っ込まれる事も無く夕飯を食べて、自室で勉強、ロイン処理をこなす。


食後だけど作ったサンドウィッチとアイスボックスクッキーを食べながら仕事をこなして思う。


(味は良い出来!…でもこれだけ食べたのにまだこんなにあるよ…。

承くんだってこんなにクッキーばっかり食べられないでしょ?

そうゆうとこなのかなぁ。)


自分のあらと承くんの欠点ばかり見えてくる。

それだけじゃ無い、欠点以上の長所をたくさん知ってるのに今日は私は嫌な所ばかり見ちゃう女の子なんだ。

そんな嫌な女の子じゃ…。思考は堂々巡りで負のスパイラル。


そうして、ロイン処理中に承くんからのロインが来た。

いつもはキャー!ってなるけど今日はスン…って気分で全く高揚しなかった。


なんか謝ってたけど、もういいよ、大丈夫とか返信した。

その後も来たから初めてスタンプで対応した。



今日はダメだ!私はもう寝る事にした!

明日になれば落ち着くでしょ…。



でも、翌日も、その翌日も気分は上がらずスン…ってテンション。

承くんから謝りロインは来るけどスタンプでわかったとだけ返す。


意地悪してるみたいで自己嫌悪がある。

その反面もうちょっとだけ反省したら?って気分もある。

その気持ちに気付いて愕然とする。

私そんなに嫌な女の子だったのか!って。


もう、こんな事やめよう

次に承くんがロインくれたら私もごめんなさい!って謝って仲直りしよう。

少しだけ、私が楽しみに楽しみにしてたのにすっぽかされて腹を立ててしまったんだよって伝えて。

わざとじゃ無いし、厚樹くんが特別な親友なのは知ってるんだから。

そうしよう!


明日から両親は出張で、お姉ちゃんは用事があったから今日は両親と私で外食をした。

食事中もスマホが気になって仕方ない。

合間を見てはチェックするけど…来てない…。

3人で帰宅して、自分部屋で勉強とロイン処理などをこなすけど…。


(…来ない…。)


がちゃ



優奈『れいなー!』


お姉ちゃん…邪魔だよ…。


優奈『ねえねえ!明日パパママ出張じゃん!』


なんで楽しそうなの?

迷惑そうな顔をしてるけどお姉ちゃんにはこの程度効かない。


優奈『明日さ、外食にしよ?』


『え、良いけど…今日も外食だったけど私?』


優奈『いいのいいの!じゃ家から19:00ね?』


部活18:00までだからまあ丁度良いかも。

でも途中で駅とかでお姉ちゃんの車で迎え来てくれたらもっと早くて楽じゃないかな?


優奈『なるほど…いや!それはダメ!19:00出発ね!ヨロシクー!』


いつもながら騒がしい姉である。

でも入る時はノックして欲しい。


私は仕事を終わらせる。

…来ないなー、来ないなー。



昼間に一回来たのをスタンプ一回でピシャリと断ったからだよね?

あー、ダメな子だな私。

矛盾してた。

腹を立てて離れるけど追って来て欲しい、

面倒くさい女だなぁ。


不思議な物でシンクロしてる時は連絡欲しいなって思うと来るのに、今みたいに気持ちに間が開くとタイミングは外れる。


そうゆうものなのかも知れないね?

人間同士のタイミングって。

ふふ!そう言えば承くんと私はタイミングや言う事がピッタリ合いすぎる事があるよ。

同じタイミングで謝ったり、同じ言葉で謝ったり…全然違うのに、時々全く一緒なの!

そうだ、私はわかってるんだ。

こんな意味の無い仲違いはもうヤメにしよう…!

明日、もし明日ロイン来たらもう許して仲直りしよう!


だけど、翌日の日中連絡は来なかったんだよね…。


ちょっとしょんぼりしながら家に帰るよ。

18:30、お姉ちゃんとの約束よりちょっと早い…。早い分には問題無いよね?


『ただいまー。』


優奈『げ。』


げ。ってなんなの?

お姉ちゃんはなんか不審な動きをしていた。

こんなの気にしてたらお姉ちゃんの妹はやっていられない。。


『お姉ちゃん?19:00出発で良いの?』


私は確認する。


優奈『あー。やっぱうちでご飯食べよ?』



また始まったよ…お姉ちゃんは気まぐれ。

私はため息をついて予定を組み直す。



まあ、外食より家で食べた方が時間は多く使えるよね。


私はドタバタするお姉ちゃんにシャワー浴びるよ!って伝えてシャワーを浴びる。

部活終わり家に帰ったらまずシャワーでしょ。

頭洗って身体洗って、トリートメントを念入りにして、上がるとフワっとカレーの良い匂い!

身体を拭きながらたまらず聞いちゃう、


『お姉ちゃん?今日カレーなの?』


優奈『んー。』


『さっきまで匂いしなかったのに…すっごい、良い匂い!』


くんくん。いつもよりスパイシー!

短い丈のルームウェアを着て上はちょっとはだけた状態で脱衣所横のキッチンへ出ようとすると。



優奈『あー!玲奈!ダメ!キチンと着て出てきな!』


『お姉ちゃんなんていつも半裸でしょ?』


優奈『ほら!ヒートショック!心臓に、血圧が!』


『お年寄りじゃないんだから…キッチンだってエアコン効いてるでしょ?』


なんか、お姉ちゃんがおかしい。

まあおかしいくらいお姉ちゃんなら普通か?


ダイニングキッチンのテーブルに座ってお姉ちゃんがカレーを出してくれるのを待つ。

今日は…スパイシーなチキンカレーと粉吹き芋?あとはサラダだね。

ごく、カレー美味しそう!


『『いただきまーす!』』


サラダを先にもぐもぐ食べてから…カレー美味しそー!



ぱく!



しゅっと鼻に抜けるスパイシーないい香り!

辛みも爽やかで辛いけど旨味がある!

お姉ちゃん!カレー上手だね?!


そう、お姉ちゃんは気まぐれだけど気分が乗るとすごく美味しいご飯が作れるのだ!


夢中で3口も食べるとたまらず聞く、これ市販のカレールーじゃないよね?

そう尋ねると、お姉ちゃんはドヤ顔で言った、



優奈『これを作ったのは誰だ!』


知ってる、なんかグルメマンガの怖いおじいさんの真似だ…!

作ったの誰ってお姉ちゃんじゃないの?


すると…奥から承くんが申し訳無さそうに出て来た?!

承くん?!なんでー?!

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