第262話 再会

小石『厚樹居た。覚えてる?

神崎厚樹。』


もちろん。


マラソン大会終わりに同中の小石から聞いたこの言葉に俺は動転した。

東光に?あっちゃんが居る?!



小石『ほら、驚いた!

お前厚樹大好きだったじゃん。教えよう教えようって思ってたんだけどさ。

なんか全体イベントしか会わないし?タイミング合わなくって?』


俺はもう、それどころでは無い!


マラソン終わりの昼休み、喉は乾くがまだ食欲も無い、

小石に聞いた本校舎の四階奥の1年7組へ走る!

小石が言ってた、


小石『苗字変わってたぞ?あと雰囲気全然違う!ビックリすんなよ!』


俺は期待と不安に信じられない程ドキドキしながら校舎を駆け抜けた。


俺7組に知人は居ない。

7組に着き、クラス内を見渡すが…あっちゃんらしき人は居ない…。

クラスの人に尋ねる、



『すいません、厚樹くん居ますか?』


男子『厚樹?誰?苗字は?』


『あ、苗字変わってるって…。ごめん。』


その男子は、


男子『…厚樹…ああ、東条トウジョウかな?』


俺はぼんやり鸚鵡返しに


『東条…厚樹。』



まるで知らない人みたい。

本当にあっちゃんなのか?

まあ、昼休みだし、マラソン大会終わりだしね。

居ないならまた、放課後でも…。


『失礼しました、じゃあ。』


その男子は訝しげね、


『東条はボサボサ頭のもっさいメガネかけた陰キャだから見ればすぐわかるよ?』


はあ?あっちゃんが?

あの爽やかで、おしゃれな伊達男。

運動神経抜群のコミュ力MAXの陽気なイケメンが?!



小石の見た目全然違うって言葉が信憑性を帯びて来る。

俺は教室に帰り、飯が喉を通らない…。

あ!水分!

俺はもう一度自販機コーナーで飲み物を買ってやっと水分補給出来たんだ。


☆ ☆ ☆

青井はバテバテで、自分のグループと今日は昼ご飯。

今日は伊勢さんと、仙道とお昼。

とわんこは救護班とお昼なんだって。

紅緒さんの世界が広がるのは良い事だよね。


俺は伊勢さんに聞いてみる、



『ね?伊勢さん、1年7組の東条って男子知ってる?』


伊勢『東条?7組?

…暗い男の子?』


知ってる?!


伊勢『あたし、文化祭回って衣装関連の友達増えたんだけどさ、7組は出し物で?お化け屋敷だったんだけど受付がゴスロリでね?作成話で盛り上がって、そこに東条って呼ばれてる…陰キャっぽい子が居たよ?』


マジ7組…。


その東条くんがどうしたん?って聞かれて、

小石から、神崎厚樹が、あっちゃんが苗字変わってここ東光に、7組に居るらしいって聞いたって話しをした。

伊勢さんもびっくり!



伊勢『え?神崎くんってあの頃女子人気ダントツで外町か神崎かってほど人気者だったよね?全然感じ違うけど…?』


伊勢さんも首を傾げる、

昼休みはもうそんなに無いし、学校の反対まで行くから短い休み時間では行っても何も出来ないから、放課後ダッシュで7組へ行き、確認する事にした。



放課後。


紅緒『むう。今日はだめなの?』


『だめ。じゃあ!』


俺は荷物まとめて本校舎へ急ぐ。

すぐに行かないと…なんせ仮校舎と本校舎の4Fは離れすぎてる!


7組の教室前に着く、室内を見渡すけど…。



居た!ボサボサの長髪前髪で、メタルのメガネかける猫背の男子。

俺は意を決して、話しかける。



『…すいません…?』


『はいー?』


ん…全然違う?長い時間離れたから!いやこの人違う。

すいません。謝って教室を出ようとする。


その時、教室に戻って来た、男子。


彼だ!

すぐわかった!


身長は173cmの俺より少し低い?俺より細身でスラッとした感じに見える。

黒髪で前髪で目が見えないほど伸ばしてて、黒いセルフレームのメガネをかけている。顔を隠しすぎて表情は見えない…でも、わかる。


ああ、あっちゃんだ。

俺のヒーローだった漢。

俺はそっと話しかける、



『あっちゃん、久しぶり。』


あっちゃんは驚いた顔をして、


『何でわかった?』


『見ればわかるよ…しっかり見れば…元気?』


『…まぁ元気。じゃ。』


あっちゃんは出て行こうとする!


『待って、久しぶりに話さない?』


『いや、特に話す事無いし。』


『まあまあ、そう言わないでさ?』


『…うざいなぁ。』


俺は笑顔で頼み込みながら、冷や汗が出る。

確かにあっちゃんだ。

…何故にあんなに陽気だった漢がこんなに荒んだ空気を纏ってる?

俺の知ってるあっちゃんは…。


あっちゃんは、薄く皮肉っぽく、


『なんか、違うなあ?っ思ったんだろ?俺が。』


『うん正直、なんかこう幼馴染ってもっと劇的な?再会?とかあるじゃん?』


『こんなもんだろ?子供の頃ヒーローでも、大人になりゃ普通の人。

よくある話し。』


俺は宥めて、頼み込んで自販機コーナーへ引っ張ってジュースを無理に奢り(本日二度目)、横のベンチへ誘導する。



なんとか、ポツポツ話出したのは、

小6で転校したのは両親の離婚。

姉が居るが、姉はパパの連れ子で半分しか血が繋がってない。

あっちゃんはママに引き取られた。

東光駅の一つ先の駅前マンションに住んでる。

転校後はあまり幸せじゃないみたい…。

俺のことは歩き遠足で見つけてた。



え?俺が東光に居るって知ってたん?


『見つけたなら言ってくれれば良いのに…!』


『別に会う必要も無いし。現に承は俺に気づかなかったろ。』


そうだけど!小石に聞くまで全く…。

それでも俺は会えて嬉しい!

俺が7話すとあっちゃんは渋々3話すペースで、俺は一生懸命語る。


あっちゃん転校後のこと、俺外町と敵対して、青井と戦ったり、完くんと勝負したり。男同士の話だから香椎さんの話しはしなかった。


あっちゃんは、

『完くん!ゴリ元気?』

『青井めちゃ背伸びたな!』

『宏介は北翔なんだ…。』


俺の話に興味無さそうだったけど、知ってる人が出る時だけ、食いつく。

俺がニヤニヤしてると、あっちゃんは顔を赤らめて、


『懐かしい名前が出たから。ちょっと気になっただけ…。』


新川の事、忘れて無いんじゃん!

俺は嬉しくなって語り続ける!時間を忘れて、子供の頃を小学生時代を語る。

あっちゃんは、やっと笑いながら話しをする様になった。

しかし、話がひと段落すると、クールな表情に戻り、



『懐かしくて、話込んじまった…。

俺さ、あの頃の俺と違うんだよね。

…承、もう来るなよ。あと、あっちゃんは止めろ。』


じゃ、そう言ってあっちゃんは去っていった。

何のかんの盛り上がれば以前の様な陽気なお調子者の血が、

子供の頃の様な距離感に戻るんじゃ無いか?って思ってたから、あっちゃんの拒絶は少しこたえた。


でも、4年経つんだっけ?

会わない期間が長いんだから多少の疎遠は仕方ない。

…でも、俺はあっちゃんに会いたかったし、会えたならやっぱりまた友達に親友になりたい。



それでも拒絶はちょっと悲しい。

俺はぼんやり考え込みながら帰る。

今日は色々あったなぁ。。マラソン大会にあっちゃんとの再会。


夕日はだいぶ傾き、日が落ち始める。

もう5時過ぎ、秋の日は釣瓶落としなんて言うけど落ち始めるとすぐ暗くなる。


ぼんやり考え込みながら自転車を飛ばす。

送り風で自転車は軽快に走る。

大きな川を渡り西エリアへ到達し、西エリアを突っ切って歩道橋を渡り、小学校、幼稚園の横を通り自宅へ帰る。


あー。諦められないでしょ?

明日から放課後あっちゃんに会いに行こう。

バイト日以外毎日通ってやろう。

そして、また友達に!


俺はそんな事を考えながら

自転車を降りて、カバンを下ろして家へ入る…。


カバンからお弁当を出して、キッチンに出す。


ふーい。上着を脱いで、ワイシャツ姿になった時、

ポロリと上着からスマホが転がり落ちる…。


ありゃ、あ?着信?ロイン?




香椎さんからめっちゃロイン来てる?着信も?








…あ。



【ロイン】

玲奈 16:30過ぎたよ?承くん?今どこに居る


玲奈 玲奈です、今どこに居るのかな?


玲奈 玲奈です、今公園に居るよ。


玲奈 玲奈です、今歩道橋に居るよ。


ヤバい…俺最低な事しちゃった…。

ロインには玲奈さんから何件も。

着信も全て玲奈さん。


ぴろん!


玲奈 玲奈です、今承くんの家の前に居るの。


『ひいっ!』


喉の奥から悲鳴の様な音が漏れる、軽くホラーなロイン履歴。

玲奈さんの事だから、メリーさんに寄せた訳じゃない、絶対心配してロインを連打したはず…。


俺は、祈る様な気持ちで家から飛び出す!



家の門の前、玲奈さんさんは祈る様なポーズでそこに立ってた。

可愛いって有名な天月高校の制服でこんなに薄暗くなっても眩しいほどだった。


俺の顔を見て、玲奈さんは泣きそうな顔で、


『承くん?良かった…。無事だ…。』



俺は泣きそうになりながら玲奈さんに謝り謝る。


『大丈夫だったら良いよ…なにかあったの?』


俺は、東光高校にあっちゃんが居た事、全然雰囲気が変わっていた事、

たくさん話した事を玲奈さん夢中で語った。


『…そっかあ、厚樹くんとの話しに夢中で…忘れちゃってたんだ…。』


玲奈さんは暗い瞳で、わかった、そうゆう時は連絡欲しいよ。ってポツリと呟いて帰って行った。


俺しでかした!

そう思ったが、とても引き止められなくって…。


『ごめん、玲奈さん、送るよ!』


黙って首を振り、


『ううん、いいよ。また。』



初めて見る玲奈さんの冷たいってよりは虚しいって顔に俺は自分のしでかした事に改めて恐れ慄いた。


この日から俺と玲奈さんのロインはプツリと途切れた。



☆ ☆ ☆

新年一発目からしんどい展開でした。

クリスマス回の1話目で言ってた2回目のケンカ編スタートです。


石川県では無いのですが地震の影響で落ち着きません。

今日は宏介お休みです。


お正月企画、書いてあった初の短編公開してます、よろしくお願いします!


あけましておめでとうございます、今年もよろしくお願いいたします!


ある

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