第261話 待ち侘び玲奈【side香椎玲奈】

承くんとロインして!

久しぶりに会おう!って提案しちゃった♪


っていうか、ひーちゃんのお遊戯運動会で?久しぶりに会って、ロイン交換して。

そこからは私たちはまあまあの頻度で?ロインのやり取りしてる。

学校のこと、私の部活、承くんバイト、バイト後店長とバスケしたり組み手っぽいこと。お互いの生活が見えるやりとり…。


うん、これは良いんだ。

でもね、話すだけなの。

あれから2ヶ月ちょっと経った。

何も無い、本当健全。


先週文化祭の代休で妹の望ちゃんラケット購入手伝いで久しぶりに会えたけど3人で一緒だったし、当たり障りのない話だけ。


…帰りのバスで望ちゃん挟んでちょっとだけ会話できた。

文化祭どうだった?って告白の事は言わずに聞いた。

実は告白されたんだ…って正直に教えてくれた。

でも断ったんだって承くん。

それ以上はその時聞けなくって…。

もうちょっと、もうちょっとだけ詳しく聞きたいよ!


それで、承くんがマラソン大会ある!なんて言うから?お疲れ様会?

と称して久しぶりに会おうよ?って提案した…!


結構ドキドキした…!

確かに簡単にお出かけとか誘えないよね…。

こないだ会ったって言うから、ラケット選びは会っただけだし、ひーちゃんお遊戯からもう2ヶ月以上たったよ?って言うと、『そっかあ…。』って言って了承してくれた。



デートじゃ無い!だから有責にはならない!

これは中学校時代の同級生と久しぶりに会って、お話しするだけのお疲れ様会なのだ!

…中学時代の同級生…これはある意味正しく私と承くんの間柄を説明した言葉。

なんか寂しい。



でもさ!

久しぶりにクッキー焼くよ!

初めて美術室で一緒に仕事して、食べたアイスボックスクッキー!

承くんが楽しみにしてる!


私は昨日ルンルン♪で夜遅くまでクッキー焼いてた。

焼くそばからお姉ちゃんがつまんでて、怒ったよ!


姉『玲奈クッキー美味しいなー?私にも焼いて?』


『せめて、形悪いの摘み食いしてー!』


姉『玲奈は隙が無さすぎる、ちょっちかたひ悪い方がだんひ喜ぶっひょ?』


食べながら話すから聞き取り辛い!

私は形や見た目を気にしちゃう。やっぱり綺麗な最高の物を見せたいし、食べてもらいたいよ…。



姉『男子に作ってるの否定しないんだね?…承くんに言ってやろ?』


お姉ちゃんはニヤって綺麗な顔を歪ませて言う。


『承くんのだもん!』


あ!


『あっま!このクッキーあっっま!』


お姉ちゃんは笑いながら出て行った。

もう!こんなに食べて!

私は図星だったのと照れで怒って見せたんだ。



で、16:00最速で私は帰宅した。

今日は学校の都合でいつもより1時間早く終わる日だった。

天月からスクールバスでターミナル駅、そっから三駅、徒歩15分、

勝手知ったる通学路。

同級生に急いでるって伝えて、振り切り早歩きで家へ向かう!



家の前の公園!チェック!

まだ…来てない!

一旦家に入り、用意したクッキーをカゴに入れて可愛い布を被せる。

お湯を沸かして、どうしよ?コーヒー?紅茶?

コーヒーは砂糖なし、ミルク少しが好きだったよね?



玄関から公園の入り口は見える。

ちらちら公園チェックしながらお湯を沸かして、お手拭きを用意して、クッキーの横に色々用意するよ!


スマホチェック!うん、連絡は無いね!

早くしないと承くん来ちゃう!


食べ盛りの男の子だもんね?

…なんか食べる物あったかな?


即席だけど、食パンを切って、昨日の残りで悪いけど照り焼きチキンを刻んでレタス挟んでサンドイッチも作るよ!

これを短時間でこなして、私は公園に向かう!


公園内はブランコや滑り台の遊具コーナーに小学生が数人居るけど、

藤の花が絡んでる東屋には人は居ない。


私は東屋のテーブルと椅子を雑巾でサッと拭いて、さっとどちらにもマットを敷く。

持参したクッキー満載のカゴに、少しサンドイッチ、沸かしたお湯を水筒に詰めて、コーヒー、紅茶をすぐに出せるようにスタンバイ!



うん!じゃすと!もうすぐに16:30になるよ!

私はドキドキしながら待つ。


承くんは性格的に真面目で時間は厳守するタイプ。

そろそろ来るな…。


さっき家で鏡見たけど大丈夫だよね?

一回家に帰ったけど、制服のまま。

って言うのも一回制服姿見せたいよ!承くんも帰り道だから?制服姿だろうし。

毎日駅で東光生は見るからどんな制服かは知ってる。


天月高校の制服は薄いエンジみたいな紫の前の開いた上着に同色のベスト、同色のスカート。袖やスカートの縁はチェックになっていてシャツにリボンタイと児童公園の中ではゴージャスでちょっと派手。


承くんもターミナル駅ですれ違った時チラッと見てるかな?あれ夏服だったでしょ?

ふふ!どんなリアクションかな?

可愛いって褒めてくれるかな?

鏡を出して前髪チェックして、リップをしゅっと引いて準備は万端!

…なんだけど…もう16:30になるよ。

時間にきっちりな承くんらしく無い…。



16:30になった。

もう、遅れるならロインでも電話でもしてくれたら良いのに!

…来たらちょっとチクチク言ってやろう!

承くんの事だから?平謝りで?私は許さないのw

それでしばらくしたら謝罪を受けるけど…交換に次回何か付き合ってもらおうかな?

プンプン怒ったフリしちゃおう!




16:45。

うーん、来ないなぁ。

昨日の今日だし日にち間違ってる訳無いよね…?

ロインを見返し、キチンと明日の16:30って、この公園って書いてある。

もう!私はこんなに楽しみにして、準備してるのに!

遅れるなら連絡してよ!スマホ慣れてないから?

私ばっかり楽しみにしてるみたい!少しだけど腹が立つ…ううん、それは心狭いでしょ。

結局の所私が楽しみにしすぎてるだけだね、反省。




17:00。

おかしい。承くんがこんな遅刻して来るはずが無い…。

私はさっきまでプンスコしてたのと一転、不安になっていた。

何かあった?

ロインしてみる、待ち合わせから30分、おかしくは無い。



【ロイン】


玲奈 16:30過ぎたよ?承くん?今どこに居る?


…既読は付かない…。


どうしたんだろ?バイト忘れてて行っちゃった?

それなら良い…何かあった?

さっきのプンスコはどこへやら、私は不安でたまらない。

もし遅れて急いで何か…とか?

連絡出来ない事…?事故とかじゃ無きゃ良いんだけど…。



17:15。


もう一度ロインをチェック、既読も付かない…。


胸騒ぎ?不安でたまらない…。承くん…。



もう一度ロイン!


【ロイン】


玲奈 玲奈です、今どこに居るのかな?


既読は付かない…。


不安は募り、心配でたまらない。

無事なら良い、遅刻だってごめん!って言ってくれれば全然許すから!

なんで遅れたからちょっといじめてやろうなんてバカな事考えてたんだろう?

承くん…。


私は暗い気持ちで、公園の東屋で胸の前で両手を祈る様にきゅって握る。


17:35。

すっかり暗くなってきた、子供たちも家に帰り、公園には私だけ。

子供の頃からこの公園は家の前にあるから私の家の庭みたいに思ってた。

それが今は初めて見たような気分。

ロインは既読も付かない…。



無視?まさか…。

何があったんだろう?承くんの家行ってみる?


その時、しゅっ。




公園の前を一台の自転車が通る、



…?!



承くん?!?!




承くんだよね?!




スマホを見る、ロインの画面!

既読はついていない!



はあ?

ロイン画面だったからすぐに打ち込む、




【ロイン】


玲奈です、今公園に居るよ。


既読付かない…。


電話もかけるけど出ない…。

一瞬だけど…ぼんやりしてた?



不安に胸が潰されそう…。


家の方へ走ったよね?

私はクッキーなどをその場に残し、公園を飛び出し走りだす!

制服姿のまま、派手な天月の制服で人の注目を集めちゃうけどそれどころじゃない!

コンビニ前を抜け、小学校横、歩道橋前!


スマホチェック!

反応無し!

車が切れるまでの短時間で、


玲奈です、今歩道橋に居るよ。


送信、既読は付かない…違ったか?いや、あれは承くん。

間違えるはずは無い。



スカートを翻し、私は走る。

…承くん!

私は夢中で新川町を駆け抜けた。



☆ ☆ ☆

ここがキリ良い!ごめんね!

おまけもどうぞ。


☆ ☆ ☆

ひーちゃんの大晦日


ひーちゃんは年越しを起きて迎えたい。

去年は気付けば寝ちゃってて。姉ちゃんが抱っこしてくれて暖かくて、抱き合って寝ちゃった。


望『ひーちゃん♪おいで♪

姉ちゃんと一緒に年越ししよ?バラエティ見よ?』


ひーちゃん『や!』


望『ひーちゃんがぐれた!』


望はショック。


承『じゃ、兄ちゃんとゲームするか?』


ひー『や!』


承もショック。


兄や姉と一緒だと絶対背中掻いてくれたり、耳こちょこちょしたり、頭撫でてくれて気持ち良く寝ちゃうんだ。


…今年は…!

爺ちゃんと婆ちゃんと一緒ならどうかな?


爺『ひーちゃんと一緒は嬉しいな。』


婆『ほんとほんと。』


時々両親や兄姉のとこに行くけど基本ジジババと一緒。

兄ちゃんと姉ちゃんもジジババの部屋へ来た!


ひー『ぜったい、ねかせないでね?』


結局奮戦虚しく紅白の演歌でひーちゃんはあっという間に寝落ちちゃう。


承『しょうがないなぁ。』


ちゅ。


望『起きれる訳ないのにね。』


ちゅぱ。


実はひーちゃんは毎年、年が変わると兄、姉からちゅうされるのを知っている。

今年はぼくが兄ちゃんと姉ちゃんにちゅうするぞ!って気合い入れてたけど今年もひーちゃん夢の中。

0:00の壁は分厚く高い。

ひーちゃん年越し今年も失敗!



☆ ☆ ☆

お正月企画!明日から3日で3話カクヨムコンの短編に出す新作出します。

不幸な女の子が幸せになっていくラブコメです。

気が向いたら読んでいただければ幸いです。


今年はカクヨム初めて色んな人から読んで頂けて嬉しい一年でした。

来年もよろしくお願いします、良いお年を!


ある

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