第258話 俺らしさ

宏介の家に着くとすでに田中くんが居て、宏介に熱く語っている。

友永さんの事が話題。

…こないだ俺カレに宏介と一緒に来たあの友永ゆかりさん…。

紅緒さんの話にも出てきた娘だ?


宏介と、付き合う直前だったらしい!

えー?!三島さんの時あんなに凹んだのに?!


親友の新たな恋に一瞬テンション上がるけど、ああ、ダメだったのか…。

でもさ?友永さんって…冬の紅緒さんの白ワンピにカップラーメンのあき容器で泥水ぶっかけた女の子でしょ?…良かったんじゃない?

俺、そんな話しを胸に秘めたままたまに宏介の彼女に応対出来ない…。

俺はこのメンツで唯一の彼女持ちの青井をスマホで呼ぶ。





田中くんの懺悔ともとれる宏介への謝罪は、宏介の為になればって動機から彼の創作論まで熱い、友と自分の理想をこれまでの期間は無駄じゃ無かったって熱いやりとり…。

この2人に割って入りたくない、俺はスマホをいじりながらふたりの熱いやり取りを聞いていた。







田中『僕は宏介くんに、借りがある、俺君の力になりたかった…。

僕は君の友だちだって胸を張って言いたかった…!』



つい先日、文化祭の後夜祭で同じようなやり取りが青井と俺の間にもあった。

俺は宏介を後押しする様に頷いて見せる。



宏介『…気にすんなよ、結果的にこうなっただけで、田中くんが俺を思ってこの企画を考えた事は知ってるし、感謝してる。

俺と承はそうだけどさ、貸し借りは無いんだよ、親友同士は。

俺も当然田中くんが困ってたら動くし。

田中くんだってそうだったでしょ?

もう、ずっと一緒に居るんだし、同じ高校に進学したし?

もう俺たち親友じゃない、野暮な事言うな。』


田中『…俺、宏介くんの親友なの?』


田中くんはまた泣き始める。


ここで俺も口を挟む、


『…俺も3日前、青井とほぼ同じような話しをした。

やっぱり口に出すって事は大事なんだな。』



宏介『…無口な俺へ皮肉?』


あははは!って笑って宏介とグーパンぶつけ合う。

子供の頃からなんか続けてる習慣。

それを田中くんが羨ましそうに見てる。

ほら!俺は田中くんを目で誘う。

田中くんも泣きながら一緒にグーパンをする。


泣き止んだ田中くんは、言い切った。

この3ヶ月の努力の作品は破却すると。

友永ゆかりは許せない!必ず報いは受けさせる!と。


そしてさらに田中くん情報で早速、6組で友永さんがやらかしてる事を知った。

文化祭明け初日にクラスのトップに謀反起こして、みんな友永さんに協力するフリだったらしく一瞬で鎮圧され、一軍女子から追放されたんだって…。


田中『見る?』


そこにはクラス女子が集まった所で友永さんが小佐田さん?トップの娘が友永さんに忠告しようとするのを遮ってNOを突きつける姿が、


ここで小佐田さんがカメラの方を向いて、ああん?っって威嚇的な目つきで睨みつける!この娘こわ!

田中くんが会釈したら、向こうの小佐田さんも会釈してた…え?良い子なの?


田中『うーん、インテリヤクザみたいな義理は通すし、グレーゾーンの扱い上手いみたいな?』


なんだそれ?

で、一瞬自分がクラスのトップ発言からの小佐田さんのどっちにつくの?って一括でクラス全員小佐田さんについて、私が支持するってあっさり他の一軍女子の擁立に動いてからの、


小佐田『じゃあさあ、あんた追放な。

うちのグループ出禁だわ。』


他人事だけどめっちゃ面白く無いか?これ?!

信長の野望やってて謀反起こして1ターンで滅ぶ明智光秀を見た時のなんとも言えないこの気持ち…。



今のタイミングなら話せる!

ここで、紅緒さんの昔話で友永さんが出てきた事、

いじめっ子に加担して親友を裏切り、白いワンピースに泥水をぶちまけるエピソードを話した時に宏介と田中くんは目を見合わせた。


田中『こっわ!それで白いワンピース自分で選んで苦い顔してたの?!

よく白いワンピース選んだな…!

心臓に疾患ある子に真冬にカップラーメンの汚い容器で冷たい泥水を白いワンピースにぶっかけた…ひく。』


宏介『友永さんの話しだと、

その紅緒さんの友だちだったんだけど気弱で流されやすいからその時味方になってあげられなくて申し訳無く思ってた、

でも学校に来れなくなったのはいじめじゃ無くて病気らしく中学時代は一度も登校しなかったのだが、今東光高校へ進学して元気そうで安心した。

って言ってたよ?!

随分自分に都合よく話しを解釈している…。』



紅緒さん視点だよ?そう断りつつ、

俺の語る友永さんエピソードに宏介と田中くんは震撼してた。


宏介『…俺、本当に人を見る目が無いらしい…。』


宏介はショックを受けている。

まあ無理も無いよな…もし玲奈さんがそんな性悪だったら…


ゾワ!!!嫌な寒気がする…こうゆう想像を玲奈さんは許さない。

大丈夫、玲奈さんに限って人に言えない秘密や隠し事なんてしないだろ。

まあ、知らない事はいくらでもあるんだろうけどね。


『『『結局、女の子はワンダーランドなんだよ。』』』


3人でそう結論付ける。


青井『おいっすー!』


『黒井!』


青井『色違い!』



あはははは!

思ったより受けた!

青井もうちょっとクロちゃ⚪︎に寄せて!


『三井!』


青井『俺は諦めのわるい男…。』


宏介『…黄色い!』


青井『バナナかよ!』


田中『千佳は?』


青井『俺の全て…って何言わせんだよ!』


3人『『『流石に惚気がすぎる。』』』


4人でゲラゲラ笑う!


そこで俺も紅緒さん公開告白事件の話しをした。

詳細はぼかすけど身体が弱く、苦労した娘で…。

でも、俺香椎さんが好きだから…。って断ったんだけど

友達以上の女の子として見て?って…。

3人にぐちでは無いけど聞いてもらった。



宏介『…そこまで思われるのは、奇跡的な事なんだぞ?』

田中『なぜ僕には…フラグすら立たないのか…。』


結局またゲラゲラ笑い合って9時まで宏介宅にお邪魔した。

宏介は笑っていたけどまだ凹んでる。

でも俺たちの顔見て少し持ち直したように見える。


これからどうするんだろう?

宏介は意外と強情だからさ、気にしたり、俺が避けるわけには行かないとか思ってそう…。


誰か支えてくれる女の子が居たら良かったのになぁって思う。

そこは田中くん同じ高校で良かったってつくづく思う。


俺と宏介は親友同士だけど結構似たタイミングで何かが起こる。

俺が思っても無い告白されたり、宏介は告白される予定が裏切られたり。

人生って思い通りにには行かないよね?

そう痛感した15の夜。


でもね、最後にショックな事を親友達に言われた。

俺宏介励ましに行ったはずなんだ。

でも、


田中『立花くんは大人になったね。

…昔のような不安定さが無くなった。良い事なんだろうけどね。』


え?


青井『今の立花も好きだけど…香椎玲奈の為に静かに傾いてたかぶいてた立花が最高っしょ?』


は?


宏介『結局、承は厨二っぽい事を言ってる時が絶好調でしょ?』


俺が?大人になって?

小さくまとまったってニュアンスの事を言われた…。

なんか不愉快…俺、大人になったんじゃない?って自分評価だったのが…親友達は『なんか違う』って俺に言う。

俺は帰り道、ひとりつぶやく。


『俺らしいってなんだ?』










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