クリスマス編 大好きの形【side香椎玲奈】
承くんがつっかえつっかえ話す内容はどれも私を想いながら、思い悩みながら「これ」を選んだってエピソード。
それは一途にひたむきに私を好きって言ってるような物だった。
だってそうでしょ?こんなに想いが伝わってくる。
でも、多分承くんはいっぱいいっぱいでそれに気付いていない。
どれだけ悩みながら、どれだけ苦しみながら「これ」を選んでくれたのか?聞いてて胸と頬が熱くなる。
これもう、告白じゃ無い?
そして、卒業式の件はこれだけ彼を苛んでいることも知った。
まだ許せないけど…承くんも苦しんでいるんだって思うと一方的になんて責めれない。
そもそも婚約者(仮仮仮仮)が居る身としては責める権利も無い…。
でも、「これ」は絶対、絶対欲しい!
そんなに悩んで私の事を想って選んだ初めてのバイトの初給料で買った品…。
その想いが嬉しくて、涙が出る…いや泣いちゃうよ。
承くんは自分の無力を、情けなさに自分を責めるけどそんな事無い。
頑張ったんだね。その言葉しか出ない。
ほら頑張った君がこんなに愛おしい。
ふたりして泣いてる橋の上、薄暗い川の上で私は尋ねる、
『開けて…良いよね?サンタさん?』
ひーちゃんからかぶらされた真っ赤なサンタ帽を揺らして承くんは頷く、これが例え私の趣味じゃ無かろうがそんな事は問題無く、承くんの気持ちが嬉しくて、また涙が出ちゃう。
包装紙を丁寧に開けると、有名シルバーアクセサリーのロゴ。
箱をカパって開けると…。
そこにはシルバーのチェーンネックレス。
ヘッドには銀色の結び目っぽいモチーフに一個だけ小さい石が入った綺麗なネックレス。
私は『わぁ!』って声を漏らす…。
好きな男の子が、私の為に必死に働いたお金で、あの頃連絡する術すら無かったのに私の事を考え、悩み抜き選んだプレゼント。
それは綺麗で素敵なシルバーのネックレス!
これが嬉しく無い女の子なんて居るわけないよ!
『ふぇぇぇ。ありがとう、承くん。
嬉しい、嬉しい、嬉しいよぉ…。』
私は気の利いた事も言えずに涙が止まらない…。
承くんは困惑した表情で、
『でも、今してるネックレスの方が豪華で高価で綺麗だよ…?』
私は今してるさっき新二さんから貰ったクリスマスプレゼントを投げ捨てようかと思ったけど、悪気の無いプレゼントなこと、作った人やお店の人を思い浮かべて流石に自重する。
乱暴に外して、バッグの箱に仕舞うと、
『私は、これが良い、これがあれば他のは要らない!
…ねえ、承くん…着けてくれる?』
マフラーを外し、カーディガンも脱ぎ脇に抱える。
承くんは恥ずかしそうに後ろから必死にネックレスを着けてくれる、必死なのが可愛い。
私のうなじ、背中綺麗かな?自分じゃわからないから不安になっちゃう。
着けた!
首元に承くんのネックレス。
それは綺麗で可愛い銀の結び目をモチーフにしたネックレス。
リボンみたいに甘めでは無く、普段遣いには絶対良い!
シルバーだから何にでも合うし!
スマホで写して見るけど…うん!私はお世辞抜きに気に入ってしまい、何度もお礼を言う、
これが私たちふたりを結んでくれてるような、そんな予感さえ感じる。
『ふふー!似合うかな…?』
『うん、勿論!
…でも、さっきのネックレスに比べたら…』
まだ言うの?
『さっきの関係無い、私は「これ」が1番嬉しい!
こんなに嬉しいクリスマスプレゼントは産まれて初めて♪』
そう言うと承くんは目を細めて、ほうって吐息を吐いて、
『良かった、本当に良かった…。
長々と寒いのにごめんね。』
『ううん、ありがとう、ケーキ食べてね!メリークリスマス!』
『うん、メリークリスマス!』
承くんは用事済んだ!って帰ろうとする。
うん、寒いし、時間も時間だし、当然だ…、
どうしよう、渡したケーキじゃ貰ったものと釣り合わないでしょ?
寒いけど頬と胸は熱い。
体の芯がジンジン熱い。
『承くん。』
一声かけると承くんが振り返る、
ぎゅっ!!
私は承が振り返ろうとする横から抱きついた。
もう、たまらない!その頬にちゅっ!って口付けする。
『ありがとう、サンタさん。』
『な?!』
呆然とする承くんを抱きしめながら、耳元で
『こんなに泣かせたんだから責任とってよね?』
囁いて、もう一回ちゅっ!!って強く唇を頬に押し付けてパッと離れた。
『ばいばい!』
承くんは遠目で薄暗い橋の上でわかるほど真っ赤になっていた。
私たちは橋から降りて見えなくなるまで手を振り合った。
ひとりになって爆発しそう!
頬にキスなんて…中学生の頃してるのに…
抱きついて2度もしちゃった…でも中学生の頃より濃厚な抱きしめながらのほっぺにキス!私にしては大胆…!
でも我慢出来なかったの!あんなサプライズがあるなんて夢にも思わなかったから!
本来ならこれは有責行為だよ。
でも我慢出来なかった…。
こうゆうの本来嫌いな私…やっぱり嫌だよ…早く何とかしないと…!
家に帰り、着替えてママを手伝い家族とクリスマス。
楽しく、幸せな時間。
私がニコニコしてる事に気づいたお姉ちゃんは私の胸元を見て何か察したみたい…でも、何か言いかけてやめた。助かった!
ゲームして、いっぱい話して、夜もふける。
※ここから性的な表現があります、ご注意くださいな。
私はもこもこな短い部屋着に着替えて、ベッドに横になる。
もう、今日は嬉しすぎて幸せな1日…。
心も身体も昂ってる…。
ネックレスだけでも嬉しくて嬉しくてたまらないのに…。
私は今日そのまま着て帰った承くんの「カーディガン」を取り出し、顔を埋める。
ぐりぐりすーはー!
くんくんくん!
くんくんくんくんくんー!
『…ふーっふーっふーっ!
…ふにゃあぁ…♡』
私は気付くと人に見せられない格好で…
危なかった…。
『…このカーディガンは…夏場と違い…汗かかないからって承くんが数日着回してる冬特有の…。
…結構なお手前…。』
きっと私は承くんソムリエ二級を名乗れるよ…。
賢者タイム…。
私は今日の流れをおさらいする…。
小さいサンタさんからの継投で大きいサンタさんがプレゼントをくれた。
それはもう、嬉しい嬉しいプレゼント!
…でも、躊躇して渡せなくてこれ貰えない可能性あったんだよね?
もしくは立花家でケーキ渡す→ありがとう!→おしまい。
OR
立花家でケーキ渡す→ありがとう→ひーちゃんがこれ!→香椎さんどうぞ?
ロマンティックでは無いな…。
今日の展開を偶然と取るか運命って取るかで意味が変わるよね…?
でも今日痛感した!
もう我慢出来ない!このままの関係じゃ嫌だよ!
私をこんな気分にさせたんだから最低でもお嫁に貰ってもらわなきゃ納得できないよっ!
私は早めに婚約問題をなんとかする事を誓ったんだ。
※最低でもお嫁さん(笑)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます