第251話 同じ夢【side紅緒永遠】


あれ?どこまで話したっけ?

あ、そうそう、冬をリハビリに費やしたって話ね。

そう、本当に身体は錆びついたように動かない、筋力が無いから何でも辛い。

しかも心臓に負担かけられないからリハビリも30分以上は出来ない…。

その上、私は倒れた時のトラウマで走ったり歩いたりがすごく怖くてね…。

リハビリは地獄だった。

うん、理学療法士のお姉さんは某熱血テニスの人みたいなタイプで


お姉さん『出来る!絶対出来る!』


『知ってるよぅ、今は無理…。』


お姉さん『無理なんて無い!』


でも、それが良かったんだよね。時間割の時間以外でも私のリハビリに付き合ってくれて、こまめな休憩に、激励。私はだんだん歩けるように、なっていく。

お姉さんとは今も連絡とってる。熱い、笑顔が暑苦しい素敵なお姉さん。

尊敬してるんだ

それ以外にもお姉さんの勧めで握力を鍛えた。

倒れる時、日常生活、握力はあっても困らないし、あんまり血圧に影響でないから。

ハンドグリップって言うの?あのバネの握力鍛えるやつでにぎにぎしてたっけ。


承くんが口を挟む。


承『だから、貧弱なわりに肩パン痛いんだ?』


『貧弱って言うな。』


それでね、GW頃には私は久しぶりに1人でお風呂に入った。

手術後多少動けるようになってから介助付きでお風呂に入れるようになって気持ちいいし、嬉しかったけど1人で入るお風呂は最高!

気兼ねなくゆっくり入れる!

介助中は人のペースだもん。恥ずかしいし。

もちろん、お風呂中にお風呂場に監視してる人は居るの、トラブルや事故無いように。

それでも1人で好きに入れるお風呂は最高で!

まあ血圧の関係上時間は決まってたけどね?


自分で歩き、お風呂、トイレに行ける。

そろそろ一時帰宅!

…まだ早かったのね。


夏になる頃、私は一般病棟に移る。

今までのずっと胸にペタペタくっつけられてた管はほぼ無くなり、血圧?バイタル?あれのセンサーだけになる。

この病棟は心臓の疾患系の患者だけ。

だからみんな多かれ少なかれ同様の疾患を持ってるんだ。

だからなんかみんな好きになれた。


そこで私はふたり友達が出来る。

1人は信子ちゃん、私より1つ下の女の子。

私より前に入院していて、あんまりリハビリの進んで無いおっとりした女の子。

同年代の子が信子ちゃんしか居なかったから、病室を覗き込んでる信子ちゃんにすぐ話しかけてすぐに友達になった。


もうひとりはおばあちゃん。他のおばあちゃんもいっぱいいたんだけどその滝沢さんっておばあちゃんは優しくて、上品で素敵なおばあちゃんで。

お話し上手で色んな話を聞かせてくれた。

私や信子ちゃんを『可愛い、可愛い!』っていつも褒めて可愛がってくれる優しい朗らかなおばあちゃん。



そう、夏。

私はもう春に中学生になっていた。

リハビリも進み、病棟から出る事は許されないけど病棟のその階は歩き回れる。

信子ちゃんと歩きまわったり、おばあちゃんとお話ししたり、邪魔にならないように看護士さんの仕事のぞいたり、医師の先生のモノマネしたり。

結構楽しかったな、不自由な生活が緩和したから。


ある日、おばあちゃんが言った。


おばあ『永遠ちゃん、信子ちゃん、人生は長く若い貴女達は社会へ戻り、普通の生活へ戻るのよ。

だから勉強も大切、学校へ行きたいでしょ?』


永遠、信子『行きたい!』


おばあ『人生は勉強!学んで、動いて!楽しんで!恋をして!人生楽しまなきゃ!』


勉強!すっかり忘れてた!

頭は良い方だったけどすっかり勉強しない生活にどっぷり。

私と信子ちゃんは教科書を家族に持ってきてもらった。

今中1だけど真新しい6年生の教科書。

信子ちゃんは一学年下だから同じように5年生のもの。


信子『全然学校行ってないのに年下の教科書って恥ずかしいね…。』


『わかりすぎる。』


でも真新しい教科書はワクワクする。

教科書をまずは読んでいく。国語算数理科社会。

そんなに難しくない。まあ中1だしね?

※一回も登校してないけど。



こうして、生活にリハビリ、ネットサーフィン、勉強ってサイクルが出来た。

合間合間におばあちゃんの話しを聞きにいく。

勉強でわからないところはママに聞いたりした。

元来頭は良くて余裕で追いつき、教科書の先までやったよ。

余裕あるから信子ちゃんの勉強も見てあげて。


その頃には、もう冬になっていた。

もう倒れて2年になる。

入院生活が長引いて、すっかり学校の事なんて思い出しもしない。

っていうか中学校なんて行った事もない。

一回だけ担任の先生って方が面会来たけどまだ登校なんてできないし、挨拶だけ。

向こうも仕事で来たけど別にトラブルも無く、病気で来ないんだから先生に落ち度や問題はないからか朗らかに中学校はねー?なんて人の学校への憧れだけ膨らませるような事を言って帰った。


そして中2になる頃、信子ちゃんが言った。


信子『…永遠ちゃん、私もうすぐ一時帰宅するんだ!』


ええええ?!


いいなー!いいな!!


信子『ふふふ!

懐かしの我が家!写真でしか会えない愛犬のイギーに会える!』


『…愚者ザ フールのスタンド使いそう…。』


信子『イギーはわんぱくですぐ砂まみれになっちゃうの。可愛いよ!』


『コーヒー味のガム噛みそう…。』


信子『永遠ちゃん、犬なんだからガム噛まないよ?』



正直羨ましかった。私よりリハビリ進んで無いし、調子もそんな良くなさそうだから。

でも私より長く入院してるらしいし、そろそろ退院なのかも。


一時帰宅したら?いっつも一緒に居る信子ちゃんが居ないのは寂しいし、つまらないなぁって思いながらも、友達の一時帰宅を喜んでその日はその話ばかり語り合う。

それは楽しい夢の時間、私は信子ちゃんと語り合う、

家に帰ったらさ?甘いものいっぱい食べて?

そしたらじきに退院?


学校通って?体育祭!文化祭!遠足!卒業式!

恋人?彼氏作っちゃって?

バレンタイン!クリスマス!年越し!いっつも甘々で寄り添って!


絶対!絶対退院しても連絡しようね?

もう二度とこんなとこ来るか!

オシャレして?

好きな物食べて?

彼氏紹介しあったりして!

お互いの家に泊まりっこしよ!

あの頃は辛かったなぁ…なんて語り合ったりして!


私たちふたりは同じ夢を語り合う、

帰ったら!学校へ行ったら!元気になったら!

勉強して!恋愛して!今までの分まで取り戻せ!

病院の消灯時間まで熱く、熱く。



でも、当時の私にはわからなかった。

ただ信子ちゃんが羨ましくて、私も一時帰宅したい!そして退院の許可が出て欲しい!

いつかその時が来たらここを出て普通の暮らしを取り戻す。

心臓にハンデあるけど普通の暮らしに帰るんだって思ってた。

ある意味今は刑務所暮らし、早くシャバに帰りてぇ…。



承『だからそうゆうとこがヤクザの娘説の原因だって…。』


はは!だって笑い入れないと悲しくなっちゃうんだもん。

承くん、悲しい顔しないで?

そう、想像通り、そうなるんだ。




☆ ☆ ☆

いつもありがとうございます、あるです。

最近ラブコメじゃないです、すいません。


永遠との関係も承くんを成長させて、彼を漢にしていきます。

ラブコメだけど書きたいのは承くんの成長と人生なんです。


しばしお付き合い下さい。

昨日の話で委員長に恋した自分の話 80000pv達成できました。

スピンオフの宏介の方がPV数はもう上回ってるんですけどこっちが書きたくて始めたのでいつものペースで進めていきます。

お付き合い頂けたら幸いです。



ひー『ぶんかさいおわったら、にいちゃんとねえちゃん、てにすのらけっとかいにいくんだよ?

だいきゅうっていうのでいくからぼくいけないの!』

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