第245話 立花告白されるんだってよ


親友  【side青井航】


俺、青井航は友の立花承の言う言葉が理解できなかった。



立花『友達?青井が?』



なぜだ?俺が昔いじめたからか?

…それは俺が悪い…友達って先に言ったのは俺だけど…。

やっぱダメなんか?

俺勘違いしてたんかな?

あんなに夏休み一緒に過ごしても、一緒に登校しても…。

あぁ、家族バカにしたってキレられた事もあった。

…うん、俺が悪いわ。

なんで許された気になってたんだろ?俺調子に乗ってたんか。


立花が続きを口にする、薄く笑いながら。



立花『俺と青井は親友でしょ?

もう、とっくに!さんきゅ!』





『…ちょっと何言ってるかわからない。』


思わず立花の口癖をつぶやく。

走り去る立花を俺は見送る事しかできなくて。

目から、熱い物が流れる。

俺は彼女に、千佳に電話をかける。



千佳『どしたー?航?そっちは2日目でしょ?もう終わった?

こっちはまだ1日目でてんやわんや!

…航?』



俺は一部始終を千佳に話す。

俺、許された。俺、親友が出来た!


千佳は呆れたように、でもいつもより優しい声で、


千佳『とっくに親友だったでしょ?今気付いたの?

宏介くん田中くんも。

立花くんが本当に嫌だったらもっと距離置いてるわよ?』



彼女は知っている、今だに俺が過去のイジメを悔い、恥じている事を。

しかし涙声で話す俺をからかいたくなる彼女なんだよな。


千佳『ふう、結局航は立花くんと私同じくらい好きなのよね?』


好きが同じようで違うが一言では言えない。


『…そうかも。』


千佳の声のトーンが二段上がる!


千佳『じゃあ!私にするように立花くんにもキス出来るじゃない!』


『…千佳は本当に綺麗で頭も良いのに残念な生き物だなぁ。』



俺たちふたりはいつもこんな感じ。

まだキス止まりだけど互いを大事に思い合えてる。

俺が何度も何度も告白して付き合ってもらった彼女だから俺は好きで好きでたまらない。

千佳が欲しくて欲しくてたまらない事があるけど今のこの時間も幸せすぎて急ぐ気にならない。

ほんと、俺には勿体無いほどイイ女なんだよ、千佳は!



☆ ☆ ☆

彼氏の親友、親友の想い人。  【side小幡千佳】


学園祭の片付け中、彼氏の航から電話が来た。

どうしたんだろう?感激屋で純粋な私の彼氏は結構電話をよこす。

たわいも無い事だったり、事件性があったり様々だけど後で私が知らないっていうのが嫌だから何かあれば逐一言うようにお願いしてる。



周りのクラスメイトも片付け終わってもうじき解散。

あちらと違い、うちはまだ1日目、明日も学園祭!

帰っていく子たちに手を振りながら廊下の端っこへ移動しながら話を聞く。


要約すると、

承くんが航を親友って言ってくれた。

って泣いてた。



…航はずっと恥じている。

かつて承くんや田中くん、佐方くんたちをいじって、暴力を振るい、いじめた過去を。

それはやってしまった事、もう取り返せない事。

それでも承くんと河川敷で殴り合って、わかり合って、いじめをしたって自己申告して停学になって、航は承くんたちと和解してすっかり仲間になっていた。

だからって過去にした事が帳消しになるわけでは無い。

航はみんながもういいよって言ってもそれを忘れない。


もういいよって言われてもういいかってなる奴だったらこんなに好きにならない。

単純だけど真っ直ぐそうゆう航がとっても気に入ってて…好き…なのよね。

でも、航はきっと自分が無理言って付き合ってくれたって思ってるのか互いに思い合う量を、

航>千佳

だと思ってる。

航≧千佳

だと、思ってる私からは歯痒い。

もうそろそろ、まあ、そろそろ?次ステップに行っても良いって思ってるんだけど航が初心で、進まない。

ちょびっとセクシーなとこ見せても真っ赤になって目を逸らして、


航『…千佳、胸元開いちゃってる!見られる!』


って。真っ赤になって可愛いの!

…まぁ私も真っ赤になっちゃうんだけど…。

こりゃすすまんわ。

大事に大事にされてる事を毎日感じる。



話は続く、航は本当に承くんが好き。

親友の玲奈が承くんを前から好きで立花くんを承くんって連呼するからうつってしまった。

承くんは不思議な男の子でぱっと見は普通過ぎる男の子なんだけど、私の周りだけで、

玲奈、成実、航、宏介、田中、望、と絶賛する。


確かに河川敷での漢気やクラスを敵に回して玲奈を守り切った熱、文化祭の献身性どれをとっても漢らしい。

でも玲奈と同じ頃会って、同じように見てたけど私にはわからなかった。

彼氏の親友にして親友の想い人、立花承に興味があるけど本人に会うと居心地悪そうにしている。玲奈の事絡みで会えば話す機会は多けど慣れないみたい、なんで?

※小5で出会った頃、玲奈の横でガミガミ言ってた印象が強いからです。ちなみに同じ頃青井は玲奈に色々乱暴だって細かい事注意されてたから青井は玲奈が苦手。



なんにせよ、承くんの一言が航の気にしてた事を払拭して、航が喜んでるんだから万事めでたし!

イベントがあると玲奈も私もポジション的に大忙し!玲奈は本当に大忙し。

最近なかなか会えないし。


航とは明後日の代休に久しぶりに街でランチとショッピングって話を詰めて、

よし、明日もがんばろ!

電話ありがとね、航!って電話を切ろうとした時、




航『あっ、そう言えばこないだ会ったろ?うちの紅緒?』


ああ、あのすっごい綺麗な色白の娘。良い子よね。

私が玲奈に勝った時の話をせがんできて…!



『うん、美人よね。紅緒さんがどうしたの?』


あ、もう校舎から出ろって!

はいはい!今出ます!


青井『紅緒が立花の事を好き!って皆の前で宣言してさ。

多分これから告白する。

それだけ、じゃあまたな!』


『またな!じゃないわよ!

何それ?!詳しく!!』


最後の最後に航の奴!ぶっ込んできた!

危ない!すぐに聞き出して玲奈に!玲奈に伝えなきゃ!



私の彼氏はまっすぐで良い男だけど諜報員としては本当にダメ!



☆ ☆ ☆

学園祭の終わりに   【side香椎玲奈】


ふふー!学園祭終わった!

クラスもテニス部も目の回る忙しさの中完全に回し切ったよ!

楽しかったー!忙しくって、トラブルもあり、思い出になるような2日間だった!

…本当は承くんを呼ぶか、向こうの学園祭に行ってみたかったな。

来年以降の課題だね。


片付けも楽しい!手配して、人を動かして、自分もグルグル動き回りながら計算通りに仕事が片付くって楽しい!

私はニコニコしながら手際良くこなす。

楽しい時間はあっと言う間。


え?もう終わったの?

香椎さんすごい!

あれだけの仕事と搬出だよ?!


うん、楽しかったよ。

一息ついて、明日明後日代休の予定を確認する。

明日はビッシリ予定詰まってる。

その代わりに明後日は時間作ってテニスのラケットの…ぶるぶる!



おお!スマホに着信!

どうでも良い人はサイレント。だから重要な人だ!


千佳?どうしたの?いつも夜に連絡くるのに?この時間に電話?


『千佳?どうしたの?何かあった?』


千佳は慌てて言った、



千佳『ごめん、今航から聞いたんだけど、

…承くん、あの紅緒さんから、クラス全員の前で好き!って言われたんだって!』


変な声が漏れる、


What is itわっいずぃ?』

(それは何ですか?)


千佳が青井くんから聞いたであろう情報を伝えてくれる。

うん、頭に入る…いや、入らない、意味はわかるけどさっぱり頭に入らない。

え?なんて?



大丈夫、承くんは私が好き!…かなぁ?

好きだったら、中学校の卒業式の時…。

高校入学からもう半年以上たった、承くんの中で私の知らない世界が形成され

取り巻く環境も刻一刻と変化する中、私の存在ってなんだろうか?


もう、過去の、中学校の同級生、過去に迷惑かけられた面倒臭い女なんじゃない?

そう思うと、胸がグッと苦しい。

苦しくて辛い。

ロインして聞きたい…でもなんて聞くの?


告白受けるも断るも承くんの勝手。

承くんは付き合ってる女の子居ないんだから誰にも何か言われる筋合いないでしょ?

…承くんが告白されるのって知ってる限りでは初めてじゃないかな?

心を揺さぶる告白だったら、入学から今までずっと一緒に居たあの綺麗な女の子なら…付き合っちゃうのかな?


千佳にお礼を言って、電話を切る。

もう、帰ろう。

さっきまでの仕事片付けたって爽快感とは裏腹に胸に何かつっかえてる気持ちで私は家に帰る。


承くん…どうするのかな?


そんな気持ちのまま夜すぐに寝ちゃった。

次の日代休は用事が多く忙しい事がせめてもの慰めだったんだ。

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