第244話 告白(であろう)の前に。
11月上旬のグラウンドはそこまで寒く無かった。
何ヶ所かキャンプファイアーが設置されてその火を囲み、音楽かけて余った模擬店の食べ物なんかが振舞われる。
ワイワイガヤガヤ大賑わい。
遠目にも紅緒さんは女子に囲まれている。
『いつもの場所って?!ふたりの場所があるのー?!』
『きゃー!!今日記念日じゃん!』
『立花で良いの?本当?』
『とわわん純粋だから変な男に騙されないか心配だった!』
かしましいのが離れててもわかる。
女子って恋愛好きだよね…でもこっちは…。
仙道『リア充もげろ。立花はこっち側だと思ってたのに…!』
目白『…。』
津南『は?なんでモブ?お前が?は?』
何も言わないけどクラスの男子も俺を囲んでいる。
うん、ダメ。なんかマイナスなイオンが発生してる集団。
その真ん中に俺は居る。
青井だけは唯一俺に優しい。
青井『まぁ立花だって頑張ってるし。
良い漢でしょ?何がみんなそんな不満なん?』
青井…!
でも青井は不思議そうに、核心をついてきた。
青井『でも立花どうするん?
紅緒にするんか?香椎はどうすんの?
伊勢は?』
『…。なんで伊勢さんまで出てくんの?』
狼狽える俺は引っかかった部分を聞いてみる。
青井はやっぱり不思議そうに、
青井『流石に伊勢がかわいそう。
俺は昔から伊勢がおすすめなんだけどなぁ。』
40話ギャルとぼっちの交友録 参照
『ちょっと何言ってるかわからない。』
俺は頭がオーバーひーちゃん!
いや、オーバーヒート。
まじ壊れてきた。どうする俺。
どうするったって、
はい
→いいえ
どっちかでしょ。
俺は、俺は子供の頃からずっと好きな子が居る。
しかし、俺には釣り合わない高嶺の花で。
俺はその思いを吹っ切るように、忘れるように高校生活を送ってきたわけで。
…でも、再会した、やっぱり俺は香椎さんが、香椎玲奈が好きなんだ。
目を背けられないほど痛感していて、ロイン聞いてからちょくちょくロインしていて…それが俺の今1番の楽しみなんだ。
じゃあ、俺は香椎玲奈と付き合える?
いや…釣り合わないんだよなぁ。
県内一のエリート私立天月高校に通う、お嬢様の完璧女子なんて言われちゃう才色兼備、香椎玲奈とやや貧しい感じのモブな俺…釣り合わない。
そう思って身を引いたつもり…いや逃げた俺。香椎玲奈に相応しい訳がない。
それでも諦められなくって、繋がりを断ち切るどころかまた繋ぎ直してしまった自分。矛盾しすぎてる。
皆んなの中でひとり考え込む俺を見かねた青井が俺を連れ出す。
青井はグラウンド隅のベンチへ誘い、ちょっと戻って自販機でホットのカフェオレを二つ買ってきて一個俺に放る。
『わり、後で…』
青井『立花だって反対立場なら金請求しねえだろ?』
頷く、
青井と一緒にキャンプファイアーを遠くに眺める。
誘ったのに何も言わない、青井はおバカだけど人の気持ちがわかる男、俺が何か言うまで黙ってるんだろう。
意を決して口に出す、
『どうしたらいいんだろ?』
『立花の好きで良いんじゃね?』
『俺、女の子に好きなんて言われた事無いからさ、なんか意識しちゃって、こんがらがって訳わかんない。』
正直な気持ちを口に出す。
青井は少し考え込んで、
『俺はさ、立花の親友の宏介ほど全部は知らないと思う。
でも、俺らずっと一緒に過ごした友達だもんよ、立花の力になりたいよ。
…宏介ほど的確な事は言えない、でも聞くぜ。
口に出す事でわかる自分の気持ちもあるだろ?』
…こいつ、イイ漢だなぁ。
青井は本当に。あの河川敷で殴りっこしたのが嘘みたいに、まるでずっと子供の頃からの友達のような錯覚さえ起こすくらい俺にフィットするよ。
俺はさっき思った事を香椎玲奈が好きな事、卒業式で逃げた事を話した。
そこはぼかして何となくで話してたから。
俺と玲奈さんじゃ釣り合わない事。
思ってる事を垂れ流すように語る。
青井は何も言わず黙って聞いてた。
話がひと段落するとやっと口を開く、
青井『…でも、立花がどうしたいかじゃね?
…身を引きたいなら引けばイイし、引けないなら…進むしかないじゃん。』
イケメンはこれだから…でも簡単に考える所は青井のストロングポイントだと思う。
俺が話す、青井が問いかける。
青井が話す、俺は答える。
青井は笑いながら、
青井『立花の好きにしたら良いんよ?
俺はそれを応援するし、支持する。
よっぽど酷い事じゃなければな!』
ニカって笑うガタイの良いイケメンは男だってついて行きたくなるような陽気で魅力的な漢だった。
『そうだよな、俺はもっと向き合う必要あるわ。
さんきゅ、青井!
まずは紅緒さんと向き合ってくるわ!』
青井と話す事でまとまった事もたくさんある。
俺の中で香椎玲奈への気持ちは再確認出来てる。
どう向き合うか、俺は答えを出す時期になったんだってわかった。もちろんまだ迷いがあるし、答えは簡単に出せないけども。
紅緒さんの気持ち?をまずは真正面から受け止める。
申し訳ないけど、その気持ちには答えられない。
そう結論づけた。
俺が礼を言うと青井は照れくさそうに、
『友達だろ?俺の千佳の時もこんなだったろ?
気にすんな!なんか有ればフォローするぜ!』
親指をピッて立てて青井ニヤって笑う、
俺は感謝と思った事を添えて伝える。キャンプファイアーや語り合ったせいかまた悪い病気が出ちゃったのかもしれない、
『友達?青井が?』
青井がショックを受ける!待て続きを聞けって!
『俺と青井は親友でしょ?
もう、とっくに!さんきゅ!』
俺はキャンプファイアー付近に走って戻る、
青井は戻って来なかった。
向こうのキャンプファイアーでは、
『…行くの?とわわん!』
『後夜祭の告白!痺れるシチュ!』
『いいなぁ!ロマンティック!』
『紅緒さん!がんば!』
紅緒さんが動いた。
俺もそれを見送って、動く。
生まれ初めて告白される?
考えても仕方ない!精一杯話を聞いて、思った通り答えを出すしか無い!
俺は遅れて、校舎へ戻る。
いつも場所…4階、社会科教室で間違いないだろう。
そっか、外町に香椎さんに告白するなって誓わされてもう、期限の一年になったんだ。
頭の隅っこでなんとなくそんな事を思いながら階段を上がる。
社会科教室前で深呼吸して、表情を引き締める。
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