第243話 正直者は語る。

紅緒さんの懺悔が続く、大きな目から大粒の涙をポロポロこぼし、整った顔をくしゃくしゃにして。

場は完全に紅緒さんが圧倒している。

悲しくも美しいその姿にクラスは釘付け。



私のわがままでいつも承くんを困らせてる。

いつも心臓の事も気にしてくれてた。

私が手伝いをお願いしても手伝ってくれなかった。

私は一緒にやって欲しかっただけなのに…。

社会出たら色々な人と組む機会あるでしょって実行委員も拒否された。


…懺悔から恨み節になってきた…。

でも、クラス女子の目がなんか光ってる?

何これ?こわい。



私と話してるのに、違う女の子からロイン来てニマニマしてるの。

私が承くんの好きな物なら付き合ってくれるかな?って思ってラーメン誘ったのに弟のお遊戯会を優先しちゃうし!

会いたくても都合が全く合わなくなることもあるの、その時はバイト先でしか会えないんだ。

バイト先では手ぶらって訳にもいかないからいっぱい注文してるんだよ。



立花くん…?何それ!

乙女の気持ちを…!

でも弟くんのお遊戯会は仕方無いかも…?

デート商法?ホスト?

貢いでそう…。



なんかみるみる女子の俺を見る目が冷え込んできた…。

え?これ懺悔なんじゃ?



紅緒さんは、稲田さんに話を振る。


紅緒『ね、稲田さん。

自分と話してるのに違う女の子からロイン来てニマニマしてる男の子…腹立たない?』



稲田さんは津南をジッと見つめながら言い切った、



稲田『…目の前で話す女の子を蔑ろにしすぎ!それは立花が悪くない?!』



津南と稲田さんは早々にくっつくと思われていた。

しかし、稲田さんが自分にベタ惚れになったと確信した津南は稲田さんをキープしたまま他の女の子に声かけまくり!それが紅緒さんは嫌いだけど津南にチクリと言いたい稲田さんが食いついた!


あ、世論が俺や津南が悪いに傾いた!

紅緒さん断罪側の稲田さんが紅緒さんに共感した事で共通の敵が俺になった。

紅緒さん…学習してる!

上手く敵の流れを絡め取った!

うん、このまま俺が悪いが落とし所で良いんじゃない?

それで丸く収まるならいいでしょ!






しかし、とわんこは思ってない方向へ面舵いっぱい切ってきた!




紅緒さんは目線を下げて、モジモジしながら頬を上気させて一瞬上を向くと目線を皆んなに向ける。

その強い目線で皆に向かって宣言する。




『でもね!聞いて!


私は、承くんを恨んでるわけじゃないの。

…私、承くんが好きだから。』











えええええええええええええええ?!

紅緒さん!!!何言ってんのー?!

伊勢さんもビックリしたのかガバって音するくらいこっちを見てる!

青井、仙道もびっくり。




クラスが一瞬で沸騰した!

えええええええええ?!マジか!

きっとそうだって思ってたよ!

紅緒さんっ!勇気あるっ!乙女っ!!

やっぱり!そうだよね!

立花くん!さあ、答えて!

なんで立花!俺紅緒さん好きだったのに!

うわああああ!

沸き返る1-4。担任も抑えられずに、東光祭終わりにまさかの1番の盛り上がり!

いや待って!



紅緒さんは真っ赤になりながら、皆に手で落ち着けってジェスチャー。



紅緒『これは、私の勝手な気持ち。

承くんは今きっとビックリしてる。

まだこれから気持ちをキチンと伝えるから急かしたり、承くんを責めたり、焦らせるような事をしないで?』




俺は頭が真っ白になった。

俺の人生で女の子に好きって言われた事無い…うんもう一回脳内走馬灯で確認したけど無かった。



そりゃ、ビックリだよ!

どうすんの?この空気。

紅緒さんのワガママ?ドーナッツ販売拒否?もうそんな事どうでもいいって雰囲気。



仙道が言った、クラスが一瞬静まったタイミングだったから皆に聞こえた。



仙道『つまり、この一連の流れは痴話喧嘩だったと?

リア充もげろ。』



皆、腑に落ちたって表情、待って!俺はまだ!


壇上から降りて、俺の横を通る。

クラスのみんなが固唾を飲んで黙りこくって俺たちを見る。

紅緒永遠の動きに集中している。

俺の前で立ち止まった爆弾娘はハッキリ俺の目を見ながら言った、



紅緒『18:00にいつもの場所で待ってます…。

…聞いて欲しい事、伝えたい気持ちがあります。』



顔を真っ赤にしながら、いつもの強い目力で紅緒永遠は言い切った。



声にならないざわめき。クラスの目の前で皆んな聞こえるように思いを言い切った勇気ある少女はそれでも緊張しながら俺の前を通り過ぎる。



俺はまだ頭が真っ白。

衝撃的、衝撃的すぎる。




俺たちの東光祭はまだ終わらない…!

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