第242話 紅緒永遠は正直者

最後の最後に弟が来るなんて思いもよらず、

ひーちゃんと紅緒さんの邂逅を暖かい目で見た俺。


ドーナッツ屋さんは終わってみればほぼ完売。

なかなかの売り上げで終了。


片付けタイムが1時間ほどとってある。

その後、グラウンドで後夜祭が始まる。


まあ希望者のみ参加で帰るのも自由。

俺はどうしようかな?



兎にも角にも片付けと、掃除!

什器やショーケース?を運び出す!

番号札付けて後日業者が取りに来るシステム。


それの搬出は力仕事でしかもキズ厳禁!男子は力仕事の女子は机戻したり、教室の床や廊下の清掃って分担。

…終わり片付けって寂しいよね。あんなに賑やかでお祭り感あったからなおさら。

女子とかしんみりムードだもん。


男子片付けは大きいものが多い分、それさえ終われば早くって、貼ったビラとか立てた看板を回収して教室へ戻る。

明日から2日代休がある、また休み明けに少し多めの掃除時間が取られてる。

とりあえず、掃除が終わり、机などが戻りまだ文化祭の名残はあるけどほぼ元の教室に戻った我が1-4。


担任が総括して、実行委員が挨拶して後夜祭!って流れなんだけど…。

担任の総括後、教壇に上がった紅緒さんが挨拶時に…やっぱりすんなりは終わらせてくれない。

稲田さんは機嫌わるそうに、


稲田『ねー、紅緒!昨日立花くんがドーナッツ買おうとして断ったのはなんでなん?』


さっき!うちのひーちゃんに向けた笑顔は何?!っていうほど敵意まるだし。


紅緒『…。』


紅緒さんは何も言わない。


稲田『立花はクラス委員長の仕事やってたし?バイトもしてるって聞いた。

でも、3回頼んだけど断ってたのみんな見てんだけど?

しかも立花くん具合悪い家族?ひーちゃん?の為でしょ!』


紅緒『…。』


紅緒さんが黙ったままで、攻めやすいって顔になった稲田さん、



稲田『数がどうの言ってたけど昨日最終30個も余ったし?準備参加してない奴も他に居たし?

そいつらドーナッツ買ってるし?ドーナッツ買うのにあんたの許可が必要?

なんなん?』


目白『あの時は最初で数が…!』


目白くんがフォローするけど、稲田は無視して紅緒さんのみを叩く。

稲田『あんたさあ、立花には世話になってんじゃないの?

あんたがクラス委員長になって、でも誰も話さない時に、フォローしてたん立花じゃないの?』


紅緒さんは頷く、


稲田『こないだの歩き遠足で立花があんたの為にクラスに声かけてたの見たし!体育祭でもフォローしてたじゃん?』

※言ってる内容は真実ですが、歩き遠足も体育祭も稲田さんは非協力どころか敵対してたけどこうゆう時は裏切られたって被害者ムーブします。



クラスの雰囲気が稲田さん側に傾きそう。

稲田さんは人望無いから与党たり得る訳ないんだけど紅緒さんが黙ってる。

するとツナダ組(稲田派閥+津南派閥)が騒ぎ立てるし、中立層がどうなの?って疑問符。

ただ言ってる事は間違ってない。

前に稲田さんは話を盛りすぎて後に発覚、人望落としたから今回慎重。


これは良くないでしょ?

俺が気にしてない!って言ってもどうだ?今はもう、


ドーナッツショップで販売拒否は実行委員の模擬店私物化?わがまま。

立花が3回頼んだのに拒否!恩を仇で返したクソ女!


に、議題が移ってる。俺は当事者から外されてる。

議題が被害者立花から加害者紅緒って話に移行してる。


どうしたらいいかな?

まず、俺は気にしてない!それどころか俺が文化祭準備手伝わなかったから紅緒さん激おこ!ごめん!って発言するか…。

ううん、それだけじゃ足りない、全然足りない。


ピコーン!電球が頭の上で光るように閃いた!


…また泥を被ろうか。

クラスを罵倒して、数なんて関係無いし模擬店に興味もないし、うざかったから紅緒さんにそれを言ったら購入拒否されたんよ?

あんなに働いても1円にもならない、バイトしてた方が良かったわ。

あ、昨日の早退サボりでーす。とか言えば俺に敵意集まって紅緒さんどころじゃなくなるんじゃない?


良い考えじゃないか?

少し話に整合性を持たせて…ふてぶてしく。

反省してまーす。とか言うか?



よし、そうしよう。


ぶる!

スマホにロイン来た


今忙しい、あとでね。

ぶる!

ぶる!

立て続けに来る…


伊勢さん?青井も?


伊勢

また自分が泥被ればいいって思ってる顔だし!


聞いてる?


無視するな!前に私にも!香椎玲奈にも!言われたでしょ!

伊勢 118話 ギャルは見ていた参照

香椎 132話 互いに自分を許せない参照


青井

立花ってばくだんいわみてえw


※ばくだんいわ…ドラク⚪︎の有名モンスター。守備力低い、体力多い、体力が一定値減るとメガンテっていう自分の命と引き換えに敵を道連れにする初見殺しモンスター。



はっと、我に帰る。

そっか、このやり方はダメって言われてた…。ばくだんいわ…。



どうしよう。

俺の引き出しじゃあ?宏介ならどうする?

フォローしつつ風向き変えるとか言いそう。

一応、発言してみる。



『俺、紅緒さんに頼まれたのに毎回断ってたから仕方無いんだよね。実際手伝えなかったし。』



クラスはざわざわ、まあ俺がドーナッツって問題だけでは無くなってるしね。

そこへ少女漫画好きの大人しいふたりの女の子が付け加える。


女子『…でも、今日来た立花くんの弟さん、ひーちゃんさんは紅緒さんにドーナッ美味しかったよ!って言ってたよ?』

女子『そうそう、紅緒さんとこ行ってた!昨日はごちそうさまって!見てないところでちゃんと販売してたんじゃ無い?お金と販売数は合ってたし!』


(ひーちゃんさん…さかなくんさんみたいな感じ?)


あ、確かに。あんな小さい子が嘘言わないよ。

昨日ドーナッツ食べたんだ。この辺ミスドードーナッツ無いよね?

じゃああの後渡したんだ?


ざわざわは紅緒さんに好意的、普段の紅緒さん支持が影響してる。

失礼だけど稲田さんと人望が違う、紅緒さんは美貌と常識外な所からやっかまれがちではある。

でも、それ以上の熱意とひたむきさでクラスの支持がある。

これなら…!



立花くんも怒ってないし?そうだよね、なんのかんの立花くんとは名コンビでしょ。一生懸命すぎて熱くなりすぎて行き違いがあったんじゃ無い?


クラスのみんなは一生懸命にひたむきに頑張る紅緒さんを思い出したのか、流れが変わったのを感じる。良かった、これなら。


伊勢さん、青井、仙道と目線を交わす。

これなら大丈夫そう!



クラスはホッとした雰囲気に包まれる、良かった販売拒否なんてなかったんだ。紅緒さんはそんな娘じゃないよね?わかってたし!

ひーの挨拶でドーナッツも見てないとこで渡したんじゃ?って勘違いもプラスに働き一件落着の雰囲気になってきた。

俺はホッと胸を撫で下ろす。




緊張からの弛緩。

クラスの誰もがそう感じてざわざわ私語を始めちゃう。








紅緒『違う!私は一方的に立花くんを怒って、

大人で下手に出てくれた承くんにわがまま言って、困った顔する承くんの顔見てちょっと仕返しした気分になったの。

…もう一回謝ったらドーナッツ売ってあげようっていじわるしたら承くんは帰っちゃったの!

承くんは今日来た弟さんが具合悪かったからドーナッツお土産に買って帰りたかったのに!』





急な紅緒さんの発言にクラスはシーンとする。

紅緒さんは悲しく微笑んで、続ける。

俺はもう良いよ!それ以上言わなくって良いよ!って言いたい、けど紅緒さんは俺を見て言ってる。

その強い目力に俺は何も言えない。



紅緒『だから、私はその後ドーナッツなんか渡していない。

私は承くんが午後には戻ってきて私に謝るかも?とか考えてた。

私は、自分の私欲と仕返しのいじわるでドーナッツ販売を拒否した!

実行委員が模擬店私物化って言うならその通りだと思う。』



紅緒さんは頭が床につきそうなほど頭を下げた。



紅緒『本当にごめんなさい!みんなで思い出って言って、自分勝手のワガママでみんなを不快にしてしまった。ごめんなさい、ごめんなさい。』


大きな目から涙をポロポロこぼし謝る紅緒さん。

一度は立花との行き違いか?ドーナッツは後で渡したんじゃ無い?で丸く収まりそうな所を自分でぶち壊したとわんこ。

…でも、きっと俺でも同じ事しただろう。

そのまま黙ってはいられないよね、自分に当てはめれば納得しかない。


紅緒永遠は真っ直ぐで純粋、そうゆう女の子だ。

誰も紅緒永遠から目が離せない。

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