第241話 ハートで繋がる

昨日ドーナッツ買えなかった件で紅緒さんがすっごい気に病んでて模擬店のシフト前にどうしても謝りたい!って呼び出された。


そしたら紅緒さんと成実さんが他校の生徒にナンパされてた。

慌てて止めてちょっと

脅すような形になっちゃったけどお引き取り頂いた!


紅緒さんは謝ってきたけど、あまり模擬店の手伝いしなかったのも事実だし、昨日は買えなかったから遠回りして同じミスドードーナッツ買って帰ったから?特に問題無いでしょ。



で、昨日サボった分を挽回する為今日はもうこの後ずっとシフト。

同じシフトに目白くん居て、昨日変わって貰ったからお礼を言う。

そしたら、



目白『昨日、立花くんにドーナッツ販売しなかった件で紅緒さんが叩かれてるんだ…。』


『なんで?』


マジで?俺が納得してるのに?

目白くんが言うには、紅緒さんはわがままで模擬店私物化してる。

立花はずっと紅緒を助けてきたのに調子乗って意地悪してる!って。


『は?馬鹿らしい。

百歩譲って俺と紅緒さんの話じゃない。』



目白『そこを突いて紅緒さんを落とし入れたい奴も居るんだよ。』


あぁ、いつもの。

まあ、これ終わったらまた紅緒さんに話聞けば良いか?

俺が気にして無いって見せれば違うかな?目白くんにそう伝えてドーナッツを販売し続ける。


13:00シフト入って1時間たった。

お昼時でデザート代わりや昼食がわりにドーナッツ買う客も多いから忙しかった、

ここから少し落ち着くかな?



ドーナッツを買いに?成実さんが来たよ、連れが居る。

成実さんとは対極の黒髪ロングの清楚なお人形みたいなおとなしそうな私服の女の子。

黒髪ロングでも紅緒さんとは全然違う…あ…れ?

その大人しそうな子ははにかみながら微笑み、


?『お久しぶり、立花くん。』


『え?おひさしぶり…?』


しげざねさん?この子って?


成実『…立花。

木多ちゃん。私の親友、木多良子。』



ええええええええ?!

あの?あの木多さん?!

156話 木多さんの様変わり 参照




そう言われれば昔の面影がある…。

それこそお人形さんのような可愛い女の子で、伊勢さんの影響でギャルっぽくなって…でも最後はちょーっとおっかない女の子になっちゃって…?

あの木多さんか。療養中って聞いてたけど…。


木多『あの頃は迷惑かけてごめんね?』


『…いや。元気そうでよかった…。』


それしか言えない。

あの頃の震撼させられた面影は全く無い。

ドーナッツを2人で4個買って4組を後にする。


成実『東光祭を案内してるんだ、また後で顔出すー!』


木多さんはソッと黙って手を振る。


成実さんは嬉しそうだった。

心配だったよね、親友だけど色々あったもんね。

でもなんか安心した、成実さんの顔見ればきっともう大丈夫なんだって気がする。


ふたりの後ろ姿を見えなくなるまで見送ったんだ。


☆ ☆ ☆

15:00もう1時間で文化祭自体がおしまい。

俺は連続勤務中で、トイレにだけ行かせてもらう。


持ち場に戻ろうとすると、ああ、もう紅緒さん入ったんだ。

紅緒さんは最終の15:00もシフトに入ってる。


同じクラスの、伊勢さん友達のギャルが血相変えて俺を呼ぶ、


ギャル『立花ぁ?!すごい可愛いの来た!』



は?

カウンター前にクラスの女子が囲むのは…


ペコリと頭を下げて上手にあいさつ!


ひー『おにいちゃんがいつもおせわになっています!

たちばなひかうです!4さいです!』



きゃー!!立花くんの弟可愛い!

なんで?こんなに可愛いのがこんなになっちゃうの?!


(失礼だろ、まあひーちゃんの可愛さは全国レベルだと思う。)


何で?ここに?

後ろから母さんが、


母『ひーちゃんがどうしても兄ちゃんのドーナッツショップ行きたい!って聞かなくって。今さっき望のとこも見てきたのよ?』


ひー『ねえちゃんかっこよかったよ!

とどろけ!』


あー。演目がわかっちゃった。


クラスの女子たちに囲まれてひーちゃんはご満悦!

そして、ショーケースに居る、紅緒さんにぺこりと頭を下げて、



ひー『きのうはドーナッツごちそうさまでした!

おいしかったです!』



紅緒『…。

美味しかったんだ…そっかぁ。

お兄ちゃんにお礼言ったかな?』


ひー『うん!にいちゃんはすごいんだよ!』


紅緒『うん、知ってる。

格好良いお兄ちゃんだね?』



ひー『そうだよ!』


カウンターから出てきてしゃがんだ紅緒さんはひーちゃんと同じ目線で話しかける、


紅緒『ひーちゃん、お胸は大丈夫?』


ひー『うん!もうだいじょうぶ!』


ひーちゃんは笑顔で言い切る。

紅緒さんは少し躊躇いながら、


紅緒『ひーちゃん、胸がまぐまぐしたんだよね?

お姉ちゃんもお胸が悪くてね?

…ひーちゃんと一緒だね?』


ひーちゃんはビックリする、


ひー『えー!?だいじょうぶ?

くるしいでしょ?はしれないでしょ?さみしいでしょ?』


ひーちゃんは心臓に疾患があるので運動会でもほぼ見学になっちゃったり、人と違うこと、寂しいことが多いんだ。

紅緒さんは優しい瞳で、


紅緒『うん、お姉ちゃんもずっとひとりだったね…。

ひーちゃんはまぐまぐかぁ、お姉ちゃんのお胸はむいむいって感じなんだよ?』


ひー『むいむいかぁ…不安だね…。』


まぐまぐにむいむい?俺にはまっったく分からない。

でもふたりは通じあってるみたい。

すっかり意気投合して胸に手を当てて語りあってる。

まわりのクラスメイトもちょっとびっくり。


紅緒『ひーちゃん!』

ひー『とわちゃん!』


ふたりはわかり合い、抱きしめあう。

本当の姉弟のように仲睦まじい。

俺のひーちゃん…。



落ち着いたのかクラスの女子にチヤホヤされながらドーナッツを食べるひーちゃん。

ひーちゃんはドーナッツ屋さんに興味深々!


ひー『いいなぁ、ドーナッツ屋さんになりたいなぁ。』


クラス女子『ひーちゃん、ほら帽子被って?』



稲田さんが自分のドーナッツ買うのにひーちゃんに店員役やらせてくれた。

クラス女子が紙袋に入れたドーナッツを用意する。

手渡されたそれを稲田さんに手渡す。


ひー『ありがとうございます!』


稲田『美味しそう!ありがとうひーちゃん!』


ひー『えへへー!楽しいな!ぼくドーナッツ屋さんになりたいよぅ!』


なにこの優しい世界。

稲田さんそんな表情できるんだ?

いつもそうなら良いのに…。


それでもひーちゃんは紅緒さんすっかりハマっていて、


ひー『とわちゃん胸にきずある?きになる?』


紅緒『…うん、傷ある。

気になっちゃうよ。』


ひー『ぼくね、このあいだともだちにキズきもちわるいっていわれてないちゃったの…。』

175話 人と違うってこと 参照。



紅緒『そっかぁ、キズはお姉ちゃんも気にしてるよ。』


ひー『でもね!にいちゃんやねえちゃんが!ほめてくれてだいじょうぶだよ!っていってくれるよ!』


紅緒さんは俺をチラッと見ると、


紅緒『じゃあ、お兄ちゃんに褒めてもらおうかな?大丈夫だって言ってもらおうかな?』


本当にふたりは意気投合しちゃってさ。

最後帰り際には、


ひー『とわちゃん!とわちゃーん!またね!こんどうちにあそびにきてね!』


紅緒『ひーちゃん!わかった!行くよ!また会おうね!』


引き裂かれる姉弟感出して別れを惜しんだ。

これ望が見たら荒れるやつ。

みんなのおかげでひーちゃんはドーナッツ屋さんを体験して帰った。

こうして無事に文化祭こと東光祭は終わった。





…終わったと、思ったんだよ…この時は。



☆ ☆ ☆

その頃の香椎さん。


天月祭で香椎さんは忙しい。

ウェイトレスをすると客が殺到するし、テニスウェアなんて盗撮目当て客が多すぎてもってのほか!

香椎さんは裏方に徹する。お店は大繁盛!

前髪をヘアバンドで抑えて、白い服装、白い帽子、コックさんの様な装い!

女子がオーダー通す!


女子『ごめん!香椎さん?クレープ生地3お願い!こっちで巻くよ!』


香椎『すぐ出せる!聞こえてた!チョコバナナ!ストロベリー!カスタードプリンもう出る!

生地は焼きながらだから大丈夫!追加すぐ対応出来る!

足りない紅茶は買いに走ってるよ!

2番オーダー!3番テーブル拭いて!』


女子『厨房に居るのに?クレープ焼きながら店把握してるの?!』


香椎玲奈は忙しい位が1番輝く。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る