第238話 いじわるの代償【side紅緒永遠】
自分のシフトが終わり、校内の展示物や模擬店を見て周る。
校内はお祭り気分!どこもワイワイ楽しそう!
…なんだけど、私の心は晴れない。
理由はわかってる、さっきの自分の醜い行動のせいだ。
私は自分がそんないじわるをする子だって思ってもいなかった。
今までだったらしなかった事、恋を知って生じた矛盾、不整合性、不安定な心。
それでもなお、承くんがわかってくれないから!
私は強がるようにそう結論付けた。
校内を一通り周った。
楽しそうだけど、なんかのらない。
ひとりだからだ。もうすぐお昼。
クラス委員長をして話す人は増えたし、皆んなに囲まれるようになった!
でも、やっぱり本当に仲が良いのは一握り。
毎日東光高校を眺めてた頃は友だちの数=話せる人なんだから数が正義なのかな?って思ってたけど決してそんなわけがない。
お腹減ったなぁ。
承くん…!…には連絡しにくい…。
なるみんは忙しく模擬店を動き回って衣装を見て回って、3年生の今日知り合ったお姉さんたちの執事服にのめり込んで一緒にご飯食べて服の話しで激論交わしてるんだって…私…服はマネキン買いしちゃうからあんま興味無い…。そこにギャル友も居るって。
青井くんは柔道部の先輩と自分の仲間と一緒だって。
仙道くんは同中の陰キャ仲間と一緒だって。
…私のコミュニティは結局承くんが要で成り立ってる。
そう痛感させられる。
それも腹が立つ。
何でも出来るんだ!って承くんに見せたいって思うポジティブな心と承くんが居なきゃ何も出来ないよってネガティブな心が共存する。
承くんが言ってた、
承『何でも割り切れるものじゃないでしょ?特に人の心は。
白でも黒でもない!GLAYだ!』
って力説してたっけ。
ぼーっとしちゃうと結局思い出しちゃうのは承くんなんだ。
なんなの!乙女心わかってない!あんなやつ!
でも、あんなやつの顔が無性に見たい。
私は結局、4組に戻りドーナッツを5個食べてアイスティーを飲んで、結局午後からシフト多めに入り、1日目を終えた。
帰ってきたら今度こそ文句を言おうと待ち構えていたけど午後になっても、片付けの時間になっても結局承くんは帰って来ない。なんなの!
そう思ってイライラしてた私は鈍器で殴られたような衝撃に襲われる。
そろそろ片付けって時間の15:15頃担任が来て、そろそろ清掃と片付けなー!って言った。
今日は内部だけだからもうお客さんも居ないし、ドーナッツも残30個程度。
みんな一個持って帰れるくらい?
先生『あ、立花家族が具合悪いから早退な?明日シフト多めに入るってー。』
うーす。
机は無いからみんな好き勝手に立ったまま話を聞く、
私の横で青井くんとなるみんが、
青井『朝言ってたひーちゃんの胸がまぐまぐしてるって言ってたやつか?』
なるみん『まぐまぐって響き可愛いけど…心臓だから心配だね?』
青井『でもロインしたら家に居て、寝て起きたらまぐまぐ減ったって言ってたぞ?エンジェルフランス喜んで食ってたって。』
なるみん『あ!それ絶対可愛いやつ!』
仙道『立花の弟そんな可愛いの?』
青井、なるみん『マジ天使!』
え、え、え、え?
承くんの弟くんのひーちゃん。
体が弱いって聞いてたけど…心臓?
私と同じ心臓なの?
今までの事がパズルみたいにピタッとハマる。
私が階段上がって小休止取った時に伝えて居ない有酸素運動30分以上厳禁とか、血圧が急上昇しないようにしてる事知ってたり、微妙に私の行動を管理してたり、私をすっごい気にしてくれてやりやすいのはそのせいなの?
ナイスコンビ!もしくは愛の力とすら思ってたけど…そっかあ弟くんの…。
ハッと気づく、
きっと承くんは弟の為に、家族の為にドーナッツを買って帰るつもりだったんじゃない?
よくバイト先のご飯や余った物持って帰ると喜ぶって言ってた。
言いかけてた注文…エンジェルフランス4個と…ってのは普通の個人の量じゃ無い。
私、なんて嫌な娘なんだろう…。
私は自己嫌悪しながら片付けを終えて、家路に着く。
校門出てすぐそこの我が家、自転車なら一瞬だけど足が重かった。
明日、どんな顔して承くんに会えば良いのだろう?
☆ ☆ ☆
悪く見る者
紅緒永遠がクラスの支持を得ている事をよく思わない者も居る。
彼女もそのひとり、稲田さん。
稲田さんは美人だけど目元に険のある娘。
最寄りの月形中出身でクラスに最初から派閥を持ってる本来ならトップカースト女子。
だけど紅緒さんの台頭で、つるんでる津南くんと一緒に非主流派に追いやられてるって思ってる。
そんな彼女が今朝の紅緒さんと立花のいざこざを聞いて黙ってるわけがない。
最初に作ったクラスのロイン。
文化祭用の立花や紅緒達が入ってるのと違う、紅緒永遠がハブられてた頃作成したロイン。青井や伊勢も入っていないいわゆる裏ロイン。
今日楽しかったねー!
お疲れ様!
おつかれー!
ねー!
最初はどうなるかと思ったけど!
そう言えば序盤のアレどう思う?紅緒のやつ!
あれって?
なんかあった?
立花がドーナッツ買おうとしたら、紅緒が断ってたやつ。
あれは無くない?
あー。あったね。
あれおかしくない?買うならお客さんでしょ?断る?
お客さんの数わからないからって言ってたけど…。
でも、30個位余ったじゃん
文化祭の準備手伝わなかったからって?
そんな奴いっぱい居るし、そいつらも買ってたじゃん?
紅緒が実行委員やってたからクラス委員長の仕事は全部立花やってたっしょ?
たしかに。
立花くんは確かバイトもやってるけど、紅緒さんけっこう色々やらせようとしてたっけ。
紅緒さんわがままじゃない?
そうだよ!あいつわがまま!
結局最初の頃浮いてたのを助けてたのだって立花でしょ?
立花以外あいつに話しかけてなかった時期だってあったのに。
そう言えば歩き遠足で参加出来ない紅緒さんを最初のポイントまで一緒!って皆に声かけたのも立花くんでしょ?
紅緒さん酷くない?
具合悪い家族に買って帰ろうとしてたんでしょ?
3回位頼んでたのに紅緒さんが断って立花くん帰っちゃった…。
可哀想くない?
私、紅緒さんの立花くん付き合ってるのかと思ってた。
私も!だからワガママ言うのかな?って。
ちょっと幻滅…。
そうだよ!紅緒なんてそんな奴!助けてもらった立花も用済みならそんな扱いでしょ!同情する!
そうだよね!それなのに?
ちょっと見る目変わっちゃう…。
えー?文化祭皆んなで成功させよう!ってなんなの?
ひく
調子乗ってるんだって!学年1番とか言われて!紅緒は!
ぴろん。
稲田さんはほくそ笑む。
これは良い展開、本来私があのポジションでしょ?
明日が楽しみ!
当然紅緒永遠はこの事を知らない。
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