第237話 いじわる【side紅緒永遠】
いよいよ文化祭当日!いちおう学校の名前を冠した東光祭って名前が正式名称。
今日は東光生だけの日、明日は一般公開。
うちのクラス4組はドーナッツショップ!この1ヶ月みんなで作り上げた楽しみにしていた時間!
体育館に集まり全校集会。
開幕宣言をする生徒会長のトーク長い!その前の校長の話しも長いけど!
思い起こせばこの1ヶ月は文化祭の準備に明け暮れた!
ワクワクしながら文化祭!これも小5以来だから5年ぶり!
家で療養中、この東光祭を遠目で見てずっと憧れていた。
体育祭はほぼ参加できない事がわかってたから文化祭が1番楽しみだったんだよね。
毎日あーだこーだ!賑やかな日々!
苦労して、喧嘩して!それ以上に楽しくて!
私は憧れだった学校生活を満喫してる!って感じだった。
唯一不満があるとしたら、前にも言ったかもだけど?
承くんが非協力的!
もちろんクラス委員長業務は全部押し付けちゃってるし?
なんか細々した雑務はやってくれてるけどドーナッツショップのあれこれは手を出そうとしない。
それだけならまだいい、ただふたりで何かしたい事も全部断るか実行委員の目白くんに振っちゃう。
私はそれが不満!そのことに怒りと、突き放される不安を感じてたんだ。
さて、開幕宣言が出され、一同一回クラスへ戻る!
独特の高揚感!クラスへ戻るみんなと話題は尽きない!
私は最初のシフトに入ってる!承くんも一緒!
特殊教室棟の3、4Fは封鎖されて控え室、更衣室、各クラスの荷物置き場になってる。
特殊教室棟は選択科目の書道、美術、技術といった教科の作品展示や文化系の部活や同好会の発表の場にもなってる。
校門から正面玄関までの間に各部の出店が並び、普段パンやおにぎりを購買で売ってる業者さんもそこで出張営業。
すぐ中庭に抜けられてそこに休憩所兼飲食スペースがある。
第一体育館は時間割で各部や有志の発表スペースで演劇、上映、コント、ライブ、漫才と大賑わいになる予定。
第二体育館はバザー会場で、PTA主催の飲食やフリマ的なものとここも飲食スペース。
第二体育館は一階に道場、2階に体育館、3階が半分だけ(2階の吹き抜け)になってて、細かく色々やってるらしいよ。
着替えて、教室へ戻る。
校内放送でカウントダウンが始まる!
5、4、3、2、1
東光祭!スタート!!!
わあ!
歓声を上げてフリーの生徒は教室を飛び出す!!
わくわくが止まらない!これが高校の文化祭か!
早速準備!まあ大体は完了してるけど!
初っ端のこの9時あたり、12時あたりが人を多めに配置してトラブル対策や慣らす為のマンパワーを確保する!もちろん余れば減らすし、足りないならすぐ呼ぶ!
なんせ普通にミスドードナッツを定価で売ってるから安定して売れるんじゃ無い?って思ってる。
強いて不安を上げるなら仮設校舎だから校内では端っこで人来るかな?って位。それも立ち看板を配置したり、このドーナッツ屋さんユニフォームにボード持って校舎を練り歩くからCMはバッチリ!目立つなるみんや稲田さんとか綺麗どころをメインに歩いてもらうよ!…恥ずかしながら外面の良い私ももちろんやる。
でも、各クラスの催し物わかるから看板係は序盤にやりたいよ!
まあ実行委員だから?責任あるから最初のシフトに私入ってるからなるみんが宣伝に回ってるんだけどね。
さあ!はじまるよ!
承くん?シフトだよね?なんでユニフォーム着て無いの?
承くんは申し訳無さそうに、
承『…ごめん、ちょっと所用があって…シフト目白くんに変わってもらった。』
『は?』
嫌な声が出た、自分でもわかるぶすな声。
嫌な女の声だった。
私は猛烈に腹が立った!
だって!最初が1番トラブル多そう!ってなって、目白くんが俺も最初シフト入るよ?って言ったのを最初は私入るから目白くんは忙しそうな昼に入って?ってずらしたんだよ。
最初に入って!そしたら…承くんと一緒に東光祭回って…
もちろん、青井くんや仙道くん、なるみんも加わるだろうけどそれでも一緒に思い出作りたいから…そんなの無いよ…。
私は思ってたより冷たい声がでた。
『ふーん、そうなんだ。』
承『ごめん。』
承くんは軽く頭を下げた。
頭を下げて欲しいわけじゃ無い。
なんかがっかりした。
承くんにとっては東光祭はあまり重要では無いのかな?
所用ってなんだろ?もしかして…香椎さんのとこ?
キュッて胸が痛い。
なんで?うちの高校のうちのクラスの…ううん、私を優先して欲しいよ。
みんながバラバラ校内に散っていく。
承くんは制服姿で教室のはじでドーナッツショップを眺めてる。
心配なの?心配だったらなんで?!
私はイラついていた。
開場から数分、1人目のお客さん来た!
『あ!ミスドードーナッツ!』
東光地区には売って無い。
隣駅か自転車だと20分は行かないと売って無い。
レアでは無いけど微妙にこの辺には無いって絶妙なチョイス!
三年生の女子は6個買ってくれた。
三年女子『頑張ってね!うちのクラスはお化け屋敷やってるよ!』
『はい!見に行きます!』
記念すべき一件目が売れたあ!
『売れたね!』
『なんか楽しい!』
『売れて、ここで食べてくれたら良いね!』
その為丸テーブルに椅子を何組も置いて、コーヒーと紅茶、ジュースも少しだけ売ってる。
ワクワクしながら次を待つ、
3年生のカップルが来た!
2人はドーナッツ2個ずつとコーヒーを買ってくれて、窓際の席で食べ始めた。
『ふふ、この景色懐かしいね!』
『ちょうどこの辺りの席で初めて隣になって…。』
そんな会話が聞こえる。
なんか良いね。
人が居ると入りやすいのか?それとも店員が緊張感出過ぎてたのか?
流れが出来てくるとするするお客さんが入ってくる。
これなら大丈夫かな?
売れ残ったら自腹で買うよ!半額でドーナッツ食べれる!ってノリでだいぶ多めに仕入れた我がクラスのドーナッツ在庫。
お昼に問題無ければ第二便が届く。
最悪50個くらいなら追加注文も減少も応じてくれるらしい。
でもこのペースなら完売もあるかも?
見極めて11時にそのままか数を加減するか判断しなきゃいけない。
考えながらも、まだ始まったばかりで数は検討がたたない!って割り切って営業!いらっしゃいませ!ありがとうございます!
きっと仕事でしたら楽しく無いのかも知れない。
それでも初めての体験で!クラスメイトと一緒の模擬店は楽しくて楽しくて!
子供の頃のお店屋さんごっことは違う興奮がある!
9:45開幕ラッシュは落ち着き、クラスメイトも慣れてきた。
余裕も出てきたよね。
教室の前を通る人たちを観察する。
展示を見るもの、各クラスを回るもの、体育館の出し物をみるもの様々。
ずっと端っこでドーナッツショップの営業を心配そうに見てた承くんが動き出した。
何処か行くの?私を誘ってはくれないかな?
もうじき私のシフトは終わる。もし?ごめんって一言謝ってくれて?展示見に行こ?って誘われたら…きっと私は許しちゃう。尻尾振って喜んで着いて行っちゃうよ。
(承くん…!)
祈るように見つめるけど、承くんから出た言葉は、
承『ごめん、俺行くね。
それで…ドーナッツ欲しいんだけど…エンジェルフランスを4つと…』
私はずっと腹を立てていたよ!げきおこ!
『だめ。』
承『え?』
キョトンとした顔。ちょっと可愛いね。
でも許さない。
承『…お願い、ドーナッツお土産に欲しくってさ?
エンジェルフランス…。』
私は承くんの困り顔にちょっと溜飲を下げた。
文化祭の手伝いしてくれなかったくせに!お願いしても!
ちょっとは私の気持ちわかって欲しい!
『承くんドーナッツショップの手伝いしてくれなかったでしょ。
数もまだ予測立たないし、ダメ!』
いじわるした。思ったより仕返しした気分になった。
承くんは困った顔をして、
承『え?でも多めに注文したって…11時に追加も少しかけれるんでしょ?』
もう一回頼んだら仕方ないなぁって売ってあげようかな?
ちょっと笑いながら、
『承くんは非協力的だったからだめー!』
承『!!
…ああ、俺は非協力的だったからね…仕方無いね。
忙しいところごめんなさい。』
一瞬、承くんが腹を立てたのを感じた。
ゾワっと背筋が冷えた。
なんか私すごく嫌な女の子だ…。
承くんはくるりと背を向けて教室を立ち去った。
なるみんのギャル友は私にため息吐きながら言う、
ギャル『ねぇ、文化祭の準備手伝わない奴なんていっぱい居るじゃん?
塾とか、家の事情とか?立花っちはクラス委員長仕事肩代わりしてくれたんしょ?
あの態度はないしー!』
私は必死に言う、
『だってー!準備手伝ってくれないし!
数だって。。』
ギャル『数だって追加できるしー?
そもそも他の奴には売ってんじゃん?
しげが見ててもきっと注意するっし?
立花っち温和なのにあれ一瞬キレたっしょ?』
それは感じた。
なんでドーナッツで?
それでも私は自分のしたいじわるを棚に上げ承くんが悪いよ!ってずっとぷんすこしてた。
シフトが終わり目白くんに一緒に見て回らないって誘われたけど私は断った。
こうゆう日に限って誰も見つからないし、捕まらない。
青井くんは柔道部の模擬店が長引いてるし、仙道くんはカルトな文化部の展示見るのに忙しいらしい。
なるみんは各クラスの出し物っていうか衣装が気になるようでずっと見て回ってる。
(しょうがない、午後か片付けには承くんも戻ってくるでしょ?)
そしたら謝ってくれるかな?謝った方が良いかなあ?
私は素直になれなかった。
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