第236話 胸がまぐまぐ

立花光 4歳。

通称ひーちゃん。


ひーちゃんの朝は早い…のだが?


おかしいな?ひーちゃんは起きてからもお父さんとお母さんのベッドから動かない。

神妙な顔をして、お父さんとお母さんの間にスポッと挟まる。

本当はお父さんとお母さんの間で寝たいけどひーちゃんは寝るのが早いのでいつも1番奥で寝ているんだ。

だから起きるとお父さんとお母さんに挟まれる真ん中へ行きたがる。

でも今朝はちょっと様子が違う。


いつもは起きたらじっとしていられなくって、すぐに飛び出すひーちゃんが今日は息を殺してじっとしている。


少しして、お母さんが起きる。

朝ごはんの支度があるからお母さんが1番最初に起きるんだね。

起きたお母さんはひーちゃんが起きてるのに気づく。


母『ふぁぁ、ひーちゃん?おはよう。』


お母さんはひーちゃんにちゅってする。

いつもなら『おはよう!お母さん!』って元気にあいさつして、ちゅうう!って熱烈なお返しをする末っ子が大人しい様子にお母さんはすぐ異変を察知する。



母『ひーちゃん?どうしたの?具合悪い?』


ひーちゃんは生まれつき心臓が悪い。

まだ赤ちゃんの頃手術何度かした。お母さんの目が一気に覚める!



『…むねがまぐまぐする…。』


お母さんはまぐまぐの意味がわからない。

でも去年一度だけ似た症状が出て、病院へ行ったら異常は無くて要観察だったけどひーちゃんの胸に仕込まれた爆弾を家族は本当に恐れている。


ひーちゃんは知ってる。本当はもう一回あったんだ胸のまぐまぐ。

でも楽しみにしてた託児所のお楽しみ会があって我慢して出たら胸が苦しくなって、それを我慢したらすぐ保母さんにバレちゃって。

家へ連れ戻されちゃってつまらないなぁって思ったけど、帰って来た兄ちゃんも姉ちゃんもすっごい心配したんだ。姉ちゃんなんか泣いちゃった。。

だから、ひーちゃんは絶対に隠さない!って決めた。


かぞくがしんぱいしちゃうよ!


だから胸のまぐまぐをキチンと自己申請できた。

一応今日は幼稚園をおやすみ。つまらないけど仕方ない。


望『ひーちゃん?ひーちゃん大丈夫?』

承『ひーちゃん、兄ちゃんすぐ帰って来るから!』


『ぼくはいいこにねんねしてるからだいじょうぶだよ?』


兄姉は心配でたまらない。


望『私学校休む!』


母『バカ言わないの!』


承『俺、係終わったらすぐ帰ってくる!片付けの15:30までは自由行動だから!』


母『せっかくの文化祭なんだから!友達と遊んでおいで!』


承『少し遊んだらすぐ帰るから!明日もあるし!』


『にいちゃん、ドーナツ屋さんやるんでしょ?

いいなぁ、ほんとうのドーナッチュ屋さんできるなんてこうこうせいはすごいね!』


ひーちゃんはドーナッツを噛んじゃうよ!


承『うん、係済ませてすぐ帰って来るよ!

そうだ!お土産にドーナッツ買って来るよ!』


新光町にはドーナッツ屋さんが無い。ドーナッツはたまにしか食べられない都会のスイーツなのだ!



『えーすごい!やったー!

あおいくんとおっぱいちゃんとあそんでからかえってきてね!ドーナッツたのしみ!』


望『あたしはエンジェルフランスとポンデリングーと…。』


キャッキャ騒ぐ三兄姉弟。でも兄と姉の表情は冴えない。

前回まぐまぐ時は一晩寝て起きたら収まっていた。

今回もそうだろ?だよね!口に出さないと不安は大きくなるばかり。



『いってらっしゃい!』


兄と姉をベッドで送りだし、ひとりで寝る。

起きたばかりだ、寝られるわけない。

しばらくつまらないなあって思ってるとお母さんが家事を終えて戻ってくる。



母『ひーちゃん、どう?』


『かわらない、まぐまぐする…。』


まぐまぐとは…?

お母さんにはわからない。

※ひーちゃんにしかわかりません。


この胸がまぐまぐする事で良い事はみんなが優しくて、側に居てくれる事。

いつも忙しいお母さんが今日は側に居てくれて添い寝してくれる。

もちろんひーちゃんは兄や姉が大好き!

でもおかあさんはまた特別。



『おかあさん…。』


母『なあに?光?』


お母さんは暖かくって優しくて大好きだなぁ。

さっき起きたばかりだもん寝れないよ?って思いつつ気づけばひーちゃんは夢の中。


さっき兄ちゃんとドーナッツの話しをしたせいかな?

たくさんドーナッツを食べる夢を見たんだ。


『どーなっちゅ…。』


起きると、兄ちゃんが帰って来ていた。

ひーちゃんは大喜び!


『にいちゃん!おかえり!ドーナツやさん!たのしかった?』



承『…。

うん、楽しかったよ。

ひーちゃん!ドーナッツ買って来たよ!』


ひーちゃんはまたまた大喜び!


『ねえちゃんがこれとこれは好きだから…あ、じいちゃんとばあちゃんはちょこのやつがいいかな?』


お兄ちゃんは笑いながら、


承『ひー、明日もドーナッツ屋さんやるから、好きなの食べて良いよ?』


『えー?!いいのー?!

ぼく、クリームはいってるチョコかかってるあれがいいよぅ!』



承『はいはい、エンジェルフランスね?』


はむはむ!


ごくん!


おいしい!!


ひーちゃんはドーナッツを夢中で食べたよ!


母『ひーちゃん起きた?

胸の感じはどうかな?』


ひーちゃんは考えこみます。

あ!



『まぐまぐへった!ちょっとだけまぐまぐ!』


お母さんとお兄ちゃんは胸を撫で下ろします。

本当?大丈夫?何度も確認するお母さん。



母『ひーちゃん?明日お出かけしたいんでしょ?絶対に安静にして、もしまぐまぐが酷いようならすぐ電話してね?』



明日はお出かけ予定で休みを取ってるから、大丈夫みたいと判断したお母さんは午後から仕事出かけます。

学校に戻るまでひーちゃんお願いね?兄は快諾します。



『にいちゃん!ドーナッツ屋さんのはなしして?』


承『…。

うーん、ちょっとしかしなかったからなぁ?』


お兄ちゃんは知ってる限りのドーナッツ屋さんの話しをします。

ひーちゃんはお兄ちゃんに秘密にしてる事があります。

実は明日はお母さんと一緒にお姉ちゃんの文化祭へ行ったあと、お兄ちゃんの文化祭へ行くんだ!

それ思うとひーちゃんは笑いがこらえられない!


承『ひーちゃんご機嫌だね?』


『ふふふふふ!にいちゃんおどろくぞ?』


承『え?兄ちゃん驚くの?』


『ゆうどうじんもんでしょ!ダメ!』


3時頃、にいちゃんはそろそろ学校へ戻る時間。


お兄ちゃんがお母さんに内緒で学校に戻らないって電話してた。


承『はい、家族が具合悪くて。今日は早退で。

はい、明日みんなに謝りますし、係分担やります。』


にいちゃんがそばにいるからひーちゃんは安心して眠れた。


もう一度寝て起きると胸のまぐまぐは収まっていた!

でもお兄ちゃんが一日中そばに居てベッドから出してもらえなかったんだよ。

その兄ちゃんがたくさん絵本読んでくれたり、一緒にすまほのおもしろい動画見せてくれたからひーちゃんは1日全然退屈しなかったんだ。



ちなみにお姉ちゃんからロインがすっごい来てお兄ちゃんはキレそうになってた。



ひーちゃんと動画視聴中…。


ぴろん!ぴろん!


ひー『あ!ねえちゃん!』

承『動画がまったく入ってこない!』



ひーちゃんは明日が待ち遠しい!


ひー『おどろくぞー!』

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