第233話 新二さんと鶴田さん【side香椎玲奈】

10月半ばも過ぎた頃、ターミナル駅周辺でランチをご一緒する事になった。

ランチ前に新二さんと一緒にデパートを見て回る。

(承くんと回ったら楽しいだろうなぁ…。)

一瞬考えちゃうがすぐ切り替えるよ!伝わっちゃう!


新二さんは遠慮気味に、


新二『宝飾とか興味ある?ダイヤとか?宝石とか?』


『うーん、無いですね。着けてく場所も無いですし。』


正直な感想。本音を言えば好きな人がくれた物なら着けたい!

本当に欲しくなったら自分で働いて買うよ。今はまったく興味なし!



新二さんは嬉しそうに頷きながら、


新二『そっかあ。まだ高校生だからかもしれないけど玲奈さんはそうゆうお嬢さんだよね。

…俺が知ってる女はクソばっか!こうゆうのばっかねだって来る売女ばっかり。』


また過去になんかあったんだろうなぁ。

お金目当て、奢り目当ての人に囲まれて暮らしてて、今もそうゆう人が多く人間を信じられないおじさん。

まあ26でおじさんは可哀想だけど太ってる新二さんは私と一緒に歩いててどう見えるのだろうか?

もし、職務質問を受けた際婚約してるって言わなきゃいけないのかな?



私はそんな思考を投げ捨ててにこやかに話すよ、



『そんな女の子ばかりじゃ無いですよ、みんながみんな。』


新二『そうかな?俺の周りは居なかったな。

クズばっか!

無条件に信じられる奴なんて居た?家族じゃなくってだよ?』



『…居ます。うん、居ます。』


新二『若いからなのか、こうゆう娘だからなのか…でも、人間なんてさぁ。』


ああ!もう!

年上の男の人なのに!


『友達の為に『死んでやらねばならん』って言っちゃう男の子知ってます。

その子が数人に襲撃されそうになった時その友達は知ってて一緒に居ましたね。』


私は思い出してクスクス笑っちゃう。

でも承くんの話をする時誇らしい。

あんまり話さない方が良いかな?と思いつつ毎回必ず一回は話しちゃうな。



新二『なんだそいつ!そんな奴居るのかよ!

ヤンキー漫画の読み過ぎ!』


新二さんは鼻で笑う、

でも、うん、ヤンキーより武将みたいなものだよね。



さて、このデパートにその元委員長さん入ったってお姉ちゃんからロインで連絡あった!

2階のこのフロアのアロマとかバスボムとか売ってる女性に人気店のノベルティ引き換えチケットを事前に入手。

お姉ちゃんの大学友人の伝手で得たそれを探偵さんが知り合いになり渡すってお姉ちゃんの秘策!

私達が居るフロアのお店でだからタイミング見て、お店に寄るよ!



あ!あの人かな?

綺麗なちょっと気の強そうな女の人。メガネをかけて落ち着いた格好のその人は店員さんお礼を言って品物を受け取り、ついでに何か買ったみたい。


入店して、元委員長さんの退店するであろう動線に待機、新二さんが見えるように、新二さんから見えるように。



それでもふたりがお互いの事を忘れてたら、見た目変わり過ぎてたら何事もなく通過していくだろう。

私は祈るような気持ちでふたりが近づくのを息を殺して見守る…!



スッ




ふたりは互いに気づかない…!

どうする?!



私は通るように声を出す、



『松方家ではこうゆうバスボムは使わないです?』



女性はチラッとこっちへ目をやる。

私もバスボムを手に取り、女性が視野に入るようにバスボムをかざすよ!



女性『…松方くん?』


新二『…委員長?』


(委員長じゃないでしょ。)


心の中で突っ込んじゃうよ!

でも!ふたりが約10年ぶりに再会!

女性は鶴田さんという。


鶴田『えー!久しぶりだね。』


新二『…あ、ああ、久しぶり。』


鶴田『高校生の頃、一度ターミナル駅で会ったよね?』


新二『ああ、そうだね。

…げ、元気?』


鶴田『…うん、元気。』


新二さんめっちゃ動揺してる!

鶴田さんは今日はお子さん連れて無いし、チャンス!

私は横でニコニコしてるだけ、多分余計な事はしない方が良い。


鶴田『松方くん?こちらは?』


そうだよね、10歳差、年の離れて見える私の関係ってどう見える?って話だよ。

ここで即、婚約者!って言われたらもうこの策は失敗。

でも、もし言い渋るようなら…彼女に婚約者って言いにくいって事。


新二さんは一瞬考え込んだ!やった!

彼女を意識して悪く見られたく無いって事でしょ?

こんな女子高生を婚約者?って軽蔑されるか、婚約者居ます!って思われたく無いか。なんかしか躊躇ってるってこと!

私は控えめに言うよ。



『初めまして?松方新二の、妹です。』


用意してきたセリフを言うよ!


鶴田『さっきでも、松方家って言ってた?』


大丈夫、用意してきた。小さめな声で、


『実は…母が違います…。』


松方家を知ってる鶴田さんは、ああ!って顔をして納得してた。

そりゃ似てなさすぎてね。


鶴田さんは懐かしそうに、新二さんと話し込む。

新二さんは恥ずかしそうに、しどろもどろに話してる。



私は提案する、



『そうだ!!ランチご一緒したらどう?』


これが秘策2!妹ポジションに私はなる!

204話 千夜一夜 参照。


これもすぐ妹!ってやったらこいつ逃げたいんだ!って思われちゃう!

でもここで、このシーンなら?自然に妹を演じられるし?

妹どうでしょう!


千佳の言う、妹はあはあってお兄さんで無い事を祈るばかりだよ!



え?悪いよ。

いやいや、是非是非!ね、お兄ちゃん?

あ、ああ。



こうして、3人でランチに持ち込むよ!



⭐︎ ⭐︎ ⭐︎

その頃のお姉ちゃん。



優奈『嗚呼!私の玲奈が、私の玲奈が私以外の妹にっ!

きーっ!』


姉の優奈は、物陰でハンカチを噛んでいた。

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