第232話 手探り【side香椎玲奈】

あのひーちゃんお遊戯運動会からもう一ヶ月!

あっという間だよ!

だいたい3日に一度位の頻度で承くんとロインしてるよ。

私から送ってリレーが終わると、約3日後承くんからくれる。

承くんから来てリレーが終わって、放置すると…しばらく来なくなるの!

あれ?自分ばっかり送ると迷惑なんじゃ?みたいな感じなのかな?


私たちのロインはかっちりターン制というか承くんのこうげき!玲奈のこうげき!

みたいな不思議な縛りで管理されてるの…?

ロインってもっとこう!毎日でも良いんだよ?


話の内容はもう本当に何でも無い事、学校のイベント、承くんは青井くんや伊勢さんのこと、望ちゃん、ひーちゃんの事、私も千佳やお姉ちゃんの事、学校で起こるトラブルの事そんなありきたりの話。

でも、それが嬉しい。本当に長い事連絡する術が無かったから毎日ロインで繋がるのを楽しみにしてるんだよ!




…でも、また会いたいなあ。

会いたい、会いたい。

でもデートはなぁ。

結局私はまだ婚約(仮仮仮)の話をできていないのだ。

絶対にバレたら祝福してあの武将は遠くから幸せを祈るに決まってる。

早くなんとかしなければ…。



☆ ☆

天月高校も普通に学校行事があり、それもつつがなくこなす。

秋はイベントが多く体育祭を終えて、今は文化祭の準備が忙しい。

実行委員を選出して、その子のサポートと足りない所は指示したり根回ししたり、陣頭に立ったり!

どさくさに紛れて告白されたりもするけど全部躱して断って!

忙しくも楽しい日々!



パパの会社もママの奮闘もあって好調。

このまま行ければ良いな。

意外なのがお姉ちゃんで、大学に来てる留学生に声をかけまくって友達になり、その人の母国の情報、需要を調べている。

実際何件か仕事に繋げたんだって。


姉『子供を日本に留学させるような家なら商売してたり商売になるような事してるでしょ?』


って。

引き続き資格を取得しまくってるし、元々天才型お姉ちゃんが本気になってるのを見る事は少ない。

やっぱりお姉ちゃんはすごい。



そんな中でも定例の新二さんとのお出かけも2回こなした。

新二さんの話を聞いて、少し私も話す。

それを根気よく何度も共感、傾聴、繰り返しを心がける。

うちの会社が建て直せる時間だけなんとかなれば良い、上手く婚約破棄出来るように下準備だけしとかなきゃ。



回数を重ねて色々わかってきた。

とにかくトラウマが多い。

お父さんへの甘え、お母さんへの憧れ、お兄さんへの嫉妬。

そして学生生活での劣等感、友達への不信、女の子への蔑視。

会社での無力感、周囲への敵対心。

ざっとあげるとこんな感じ。


私は話を聞きながらさっきの共感、傾聴、繰り返しを丁寧に寄り添いながら行う。


私は信頼されてるようだ。

割と好きな事を敬語で話す。

でも過信出来ないし、人間同士って何処かに本心が出ちゃう。

だから私心は封じて聞き手、相談相手に徹する。



私には秘策がある。

前に聞いた、唯一新二さんの話で出てきた女の子、委員長の女の子。

それが鍵だと思う。


みんなが新二さんを遠巻きにしてる状態でただ1人普通の男の子と接して、叱ってくれた女の子。

私はその彼女の行方をママに探して貰った。トラウマの緩和でも、気になる女の子の行方でもなんでも良い。なにか鍵になれ!って思ってる。

新二さんの同級生なんだから年齢も一緒だし!釣り合いとれてるでしょ?



そして、ある日。



ママ『玲奈、わかったよ。』


ママは知り合いに探偵さんが居る。

ママにお願いしてその人に調べて貰った。良かった!

もし?もしだけど上手くその人を新二さんはまだ好きで?上手くくっつけられたら?

Win winじゃない?yeah!


私こう見えても?実はキューピッドとしても実績があってね?

ふふー!宏介くんと三島さんくっつけたの私なんだー!

※詳細はスピンオフの寝取られ宏介をお読みください。

まだ香椎さんは酷い破局になった事を知らされていません。




ママ『中学生の同級生なんだって。

結論から言うとお子さん1人居るわね?』


『ええ?!』


もう結婚してて?!子供まで?!

しまったー!!その可能性あったかー!

ママは困ったって顔で、



ママ『正確にはね、お子さん1人居るシングルマザーみたい。』



26歳…私で想像する…10年後でしょ?

10年で高校卒業して、大学入学、卒業、就職、結婚、出産、離婚?

密度がすごい。

激動の10年だったんだろう…。



『でも…これしか無いよ!』



どこかで会ってもらおう。シングルマザーならイケる!

私はその機会を待つ事にした、これ以外で婚約破棄を綺麗に誰も傷付けずに終わらせる手を思いつかなかった。

横で一緒に聞いてたお姉ちゃんが、


姉『じゃあ!会う時にばったり会うように仕込んじゃお!

秘策があるよ!』



お姉ちゃんの秘策…当たるか当たらないか…?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る