第231話 友達と友達
体育祭が終わり、来月にはもう文化祭。
秋はイベント多いよね、この10月にはマラソン大会もある。
でももう完くんとやり合ったような熱いマラソン大会は…無いだろうなあ。
通常運転に戻った俺はバイト三昧な日々。
紅緒さんは文句を言うけど、体育祭期間出勤を減らしてもらってたし、文化祭もあるし、中間考査、期末考査休みを申請する機会も多いから働ける時は働いておきたい!
景虎『へらっしゅー!!』
…この挨拶以外は慣れた職場、皆優しいし、賄いは美味いし、俺カレは大事な場所。
働く大変さを知り、コミュニケーションが苦手だった俺は少しは他人に合わせる術や必要性、社交性を少しは学べたと思う。
景虎『お、青井じゃん!』
青井『景虎さんちーっす!立花おつかれ!』
青井が来た!火曜の夕方、忙しくなる前!
今日は部活無いからって!
青井は景虎さんと一緒にバスケする事も多くすっかり顔馴染み。
小幡『こんにちわ、立花くん。』
小幡さん!小幡女王は何気に卒業式以来!
青井と一緒!揶揄いたい!けど小幡さんには怒られそう!
『いらっしゃい、小幡さん、青井。』
小幡さんは学校が創立記念日で今日はお休みらしく、秋っぽい薄いベージュのツートンコートに白いニットっぽいインナー、薄茶のスラックスでスラッとしたスタイルの良さを感じさせるコーデ。
綺麗でクールな大人っぽい女性って感じだった。
大人な美人!
青井『ほんと美味しいんだって!何でもおすすめ!千佳何食べる?
俺ハンバーグカレー大盛り!』
小幡『もう!選ばせて?パンケーキ…カロリー半分?!6割減?!
…承くん…オススメは?』
小幡さんは…香椎さんの影響で俺を承くんって呼ぶ…。
なんか気恥ずかしい。
『なんでもおすすめだけどハンバーグカレーとパンケーキシリーズはすごいリピート多いよ?』
小幡『じゃ、私もハンバーグカレーと…パンケーキ…!カロリー半分!
…なんで半分と6割減があるの?』
不思議そうに聞いて来る小幡さん。首を傾げるしぐさがクールさと相反して可愛い。
『伊勢さんがね?カロリー負けてくれって店長に駄々こねて商品開発された経緯が…。』
小幡『身内の犯行じゃない!』
青井『ほんっと俺カレはいい店!』
小幡『俺カレ?!俺の彼?!どうゆうこと?!詳しく!!』
青井『…これさえ無ければ…!』
小幡さんは店の名前が俺のカレーとハンバーグ略称って聞いて、スンっていつものクール女子の顔。
でもすぐに3人で笑っちゃう、
オーダー通して、暇だから少し談笑した。
景虎『へらっしゅー!
…あ、ヌシちゃん。』
紅緒さんも来た。勝手に1番テーブルに向かう当店のヘビーユーザー様。
紅緒『あ、青井くん!
と?
…ああ!もしかして?』
紅緒さんはおめめキラキラ!青井と小幡さんを交互に見て嬉しそう。
小幡さんは知らない綺麗な女の子に訝しげな表情で…。
青井『お、紅緒じゃん、おー!』
紅緒さんは小幡さんに向かって丁寧に、
紅緒『新川中の小幡、千佳さん…ですよね?
はじめまして!私、東光高校の青井くんや承くんのクラスメイトの紅緒永遠と言います。』
小幡さんびっくり、何で名前知ってんの?って顔。
小幡『はじめまして?小幡千佳です…?』
戸惑うクール女子と懐くわんこ。
紅緒『承くんの中学校の頃の話で聞いてます!
三組の団結と執念で!一組を!香椎玲奈を!倒した話!』
熱く語る紅緒さんに、あら?って反応の小幡さん。
紅緒『あ、承くん、私いつもの!』
『はいよ。』
ヌシのオーダーはいつもの!でダブルハンバーグセット、デミグラスとおろしをライス大、飲みものはアイスティー、サラダドレッシングはフレンチ。そしてカロリー2倍パンケーキ。
俺はいつものメニューを厨房に通す。
もう紅緒さんは青井たちのテーブルにちゃっかり入ってずっと小幡さんと話し込んでる。
紅緒さんと小幡さん初対面だよね?話は盛り上がってる。
先にオーダーしてた青井と小幡さんの料理を運ぶ頃には、
小幡『そこでね!宏介が!』
紅緒『こないだ宏介くんにもここで会ったんです!』
青井はやれやれって俺に肩をすくめる。
女子2人は意気投合して話は大盛り上がり!
少しして紅緒さんメニューも運ぶ、
『はい、いつものー!』
先に運んだ青井、小幡組は食べ終わっていて、
紅緒さんにいつものダブルハンバーグセットにカロリー2倍パンケーキを運ぶ。
自分のオーダーが届くまで紅緒さんはパンケーキを分けて貰ってたから自分のパンケーキを半分勧めた。
青井『あっそれ…!』
青井の静止は間に合わず、一口カロリー2倍パンケーキを食べた小幡さんは、
小幡『う、うまいぞー!』
味皇みたいなリアクションをして勧められるままパンケーキを食す。
青井はあちゃあって顔。
小幡『え?何これ?すっごい美味しい!なんで?!』
自分の分来るまで小幡さんのカロリー半減パンケーキを半分貰った紅緒さん。
紅緒さんは自分のカロリー2倍パンケーキを半分譲って返した訳で。
呼び止められた俺は雑な計算だけど説明する。
紅緒さんのオーダーはカロリー2倍パンケーキだったんだよ。
小幡『え?』
青井は自分の彼女が太りやすいけどいつも真面目に節制してるのを知ってるから止めようとしたんだけど間に合わなかった。
小幡『え?つまり?普通を100とすると?
私の注文は50だけど?
半分の25を食べて?紅緒さんの200の半分を譲られたから?
合わせてパンケーキを125食べたようなもんじゃ無い?!
普通のパンケーキより!カロリー高い!』
バッと紅緒さんを見る!いつものでダブルハンバーグセットとカロリー2倍パンケーキが出るほどのヘビーユーザー?!
でもすっごいスレンダーな娘よね?って顔。
小幡『え?いつもこんなメニュー食べてるんでしょ?
それでこのプロポーション?!
このお店すごく無い?!』
興奮する小幡さん、なんかこの雰囲気なら千佳ちゃんって呼んでも良さそうw
ああ、言いにくい。
『いや、そんな食べ方したら太るよ?
こないだ妹の望と伊勢さんダイエットしてたもん。一時望が丸顔になって…。』
210話 ダイエットシスターズ 参照
ガーンって顔の小幡さん。
青井が続ける、
青井『紅緒は体質的に太らないんだって。だから止めようと…。』
小幡『そんなこと!先に言って!』
紅緒『でもカロリー2倍パンケーキ美味しいでしょ?』
美味しいのよ!ダブルハンバーグとカロリー2倍パンケーキ常飲して!
太らない体質なんて!
悲しい顔して小幡さんは呟いた。
いや、常飲って(笑)
どんまい。
まあ、色々あったけど初対面の紅緒さんと小幡さんは意気投合してアドレスを交換した。
知り合い同士が仲良くなるとなんか嬉しくなっちゃうよね。
仕事の後、久しぶりに景虎さんに形を見てもらいながら、
軽い組み手をする。付きと回し打ち、締め技だけだけど鍛錬は自信だから!って継続している。
自衛隊あがりの景虎さんは俺にとってワンダーランド。
身近にこうゆう大人は居なくって俺は景虎さんの影響を強く受けている。
…俺、こうゆう陽気で気さくで包容力のある、子供みたいな純粋さを持ち続ける大人になりたい。
ちなみに今日の賄いはナポリタンだった。美味しかった!
その夜。
宏介から明日俺カレに来たいって連絡があった。
なんでも文化祭の実行委員になったんだって。
景虎さんに卸してもらう場合の値段など諸々聞きたいから明日放課後来るんだって!こないだの彼女?と一緒かな?
俺は景虎さんにロインで内容を打診しておく。
なるほど、俺カレ料理で模擬店って手もあったか。
さすが宏介、俺バイトしてるけどその手思いつかなかった!
うちももうすぐ文化祭の準備。
また紅緒さん実行委員やるのかな?
違う学校だけど同じようなイベントを同じような時期にしている。
でも、もう宏介と一緒のイベントを戦ったり協力して出来ないって当たり前の事になんか寂しくなった秋の夜長だった。
☆ ☆ ☆
対戦相手
その日の夕方、香椎家。
千佳は帰りに玲奈に会いに来た。
千佳『今日ね、承くんのバイト先に行ってきた!』
玲奈『!!
どうだった?!』
千佳『ハンバーグカレーが…
パンケーキが…』
玲奈はそわそわ。
千佳『わかってるって!ほら!』
ぴろん!玲奈の顔はぱっと輝く。
玲奈『承くんの動画!ふー!
ご飯3杯いけそう
…あ…この娘…。』
千佳『うん、その娘が紅緒さん、紅緒永遠さん。
すっごい綺麗な娘、びっくりした。
玲奈は一度会ったんだよね?』
玲奈『少しだけ…ね。
そう、バイト先の常連なんだぁ。』
千佳『うん、それでね…。』
初めて玲奈は紅緒永遠の情報を得た。
前に青井に聞いたフワッとしたのでは無い同性の信頼してる千佳の目で見た情報を。
玲奈の感覚では承の向こう側にチラチラ見える女の子の影。
目下気になる事は自身の婚約問題とこの紅緒永遠。
千佳は俺カレを気に入ったみたい、うっとりした表情で、
千佳『美味しかったよ!
…あと店名の俺カレって響き…ロマン♡』
玲奈『千佳はこれさえ無ければ…。』
玲奈は承のバイト中動画と紅緒永遠の情報を手に入れた!
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