第227話 怒られわんこ

紅緒『なんで承くんが実行委員してくれないの?』


ひーちゃんを堪能した休日明けの月曜日、放課後の帰り際。

今日は体育祭実行委員の仕事も無いし、バイトも休み。

久しぶりに社会科教室でまったりしてたんだけど今日は紅緒さんとふたり。


紅緒さんは文句言うけどさ、

いや、委員長業務もあるし?目白くんが立候補してくれたし?

目白くんは紅緒さんのファンの穏やかイケメン。優しく温厚な良い人だよ?


紅緒『…でもね?やっぱ承くんの方が慣れてるし?

息もピッタリじゃない?』


最近言ってるんだけど、紅緒さんはネチネチ顔合わせるたびに言い募る。

不満…っていうかしっくり来ないらしい。



『でもさ?長い人生、色んな人と仕事する機会あるわけだし?

良い経験じゃない?』


紅緒さんはノータイムで言い返す、


紅緒『大人になればいやでもそうなるでしょ?だったら今子供のうちは組みたい人と組んだ方がよくない?』


『よくない。目白くんの気持ちも考えて。』


ぶーぶー言うべにお。

今回はイヤに食い下がるなあ。

体育祭が近づき、体育祭実行委員の紅緒、目白組は色んな仕事で大忙し!

紅緒さんの委員長仕事は俺が引き受けてるし、バタバタしてるのでバイト無い日は実行委員も手伝ってる。結構大変なんだよ?




紅緒『だってー!目白くんは微妙に私の事をわかってないしー。

ちょっとふたりで仕事してると…雰囲気出してこようってしてくるしー?』


伊勢さんグループの女子っぽい話し方で愚痴るべにお。


『おい、べにお文句言うな。』


紅緒『雑!私の対応雑!なに?週末別の女の子と遊んだの?』



(勘鋭い!こわ!)


『は?弟のお遊戯運動会だったけど?』


紅緒さんは驚いたように、


紅緒『え?弟のお遊戯会で女の子とデート即却下したの?』

219話 正攻法とは? 参照


『は?ひーちゃんのお遊戯より優先するものなんか無いし!』


俺は主張する!ダンシングひーちゃん最高!

俺と紅緒さんはむぎゅむぎゅ醜い争いを続ける。

しばらくすると、



紅緒『あー!ストレス解消になった!

やっぱり思ってる不満は口にしなきゃだよね!』


『でもさ、目白くんは良い人だよ?津南とか

『いや。』

って即拒否したじゃない。』


紅緒さんはため息ついて、憂鬱そうに、



紅緒『だって!津南くんはめっちゃ口説いてくるんだよ?

しかも騙してでも!って感じの中身も誠意も無い!

やだよ!

…目白くんは誠実だけど…なんか私の中までは見てない?

うーん、なんかわかってくれないんだよね…』


なんか紅緒さんらしく無いとか言われるんだって。

紅緒さんらしいってなんだろうね?言語化って難しい。



『わかって欲しいって事より、逆に自分が相手を理解する事が先なんじゃ無い?』



紅緒『ほうほう?』



『「人の己を知らざるを患(うれ)えず、人を知らざるを患うるなり」

って孔子の言葉があってね?

人が自分のことを正しく理解してくれないことを思い悩んでもしかたない。それよりも、自分が人を正しく理解していないことを心配すべきじゃない?って言葉。

自分を理解してくれる人ってやっぱ大事だし、大事にしたくなるでしょ?理解してもらおうって思ったらまず理解しないと。』



紅緒さんは納得して、うんうん頷いたあと怒り出すよ!



紅緒『ダメだ!承くんは乙女心全然わかってないよ!』


紅緒さんがぷんすこしてるから仕方ない、



『まあまあ、最近忙しいんでしょ?俺カレの季節限定メニューのカレーラーメン奢るからさ?』



紅緒さんはちょっと眉を顰める、


紅緒『うーん?

カレーもラーメンも好きだけど…?』


わかるわかる!B級グルメの匂いしかしないよね?


『まあ、騙されたと思って?』









俺カレへ移動!


景虎『へらっしゅー!

って承じゃん?ヌシちゃんも?』


ヌシちゃん?



奥さん『…同伴出勤じゃない?』


紅緒『同伴出勤!』


喜ぶな。



『カレーラーメン2つお願いします、一つ大盛りで。』


紅緒『…ふたつ大盛りで…。』


紅緒さんは良く食べるんだよ。



景虎『ラスト3だからギリギリ間に合ったな?』



いつもの1番テーブルが空いてたからそこでオーダーを通して、

紅緒さんが訝しげに言うよ、




紅緒『いや、疑うわけじゃ無いけど?

カレーラーメンって響きがB級っぽいよ。

どっちも美味しいんだろうけど…?って感じ。』



まあまあ、騙されたと思って?



奥さん『はい、カレーラーメンふたつ!熱いよ?』



紅緒さんはまだ半信半疑。



紅緒『…まあ美味しそうだけど…。

匂いも良いし?見た目はまあカレーラーメンとしか言いようが無いね…?』



まあ食べればわかるよ?

でも美味いんだよ!これ!




ズル!ジュルル!!



紅緒『…美味い!』


テーレッテレー!!(二度目)


ね?



紅緒『え?なんで?なんでこんなに美味しいの?

カレーなんだけど…なに?承くん!』


いや、美味いならなんでも良く無い?

俺は一応解説する。



紅緒『味噌!そうなの?味噌ラーメンベースにカレーなんだ?!

濃い味噌に出汁が超効いてて?スープ濃いのに超極太麺でモチモチシコシコで負けて無いんだ!

すっごい美味しい!』


でしょ?これ食ってビビったもん!賄いだけじゃもったいない!って。

でも出汁と麺がくそ面倒らしくって限定メニューなんだよ。




紅緒『乙女可愛い愚痴とワガママを孔子の言葉で返した時は流石に呆れたけど…失点を取り返す美味しさ!!』


俺失点してたんだ?

紅緒さんは親指立てて俺にニカって笑うと勢い良くカレーラーメンを景気良く啜り出した…!美味しい、美味しい言いながら夢中で。


この女正気か?!夏服で白いブラウスなのにカレーラーメンを啜るだと?!



あーあ、大惨事だよ…。



食後。


紅緒『承くん…私ママに怒られちゃう…。』


ブラウスには無惨なカレー染みが水玉模様。

怒られた犬みたいにシュンとしたとわんこはその日ママに考えて食べなさい!って高校生しかも女子高生が普通されない説教をされたそうな。

知ってる?この紅緒永遠って娘、うちの学年で入試主席で中間も期末も一位の学力なんだぜ?



こうして、毎日色々起こりながらも紅緒さん、目白くん、俺で仕事を回してついに体育祭はやってくる。

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