第216話 体育祭は誰が仕切る?

LHRは混沌とした流れで推移していく。

紅緒さん司会で俺黒板。


体育祭実行委員は立候補無し。

応援団員は青井とサッカー部男子が所属する部の先輩からのお達しで立候補した。


実行委員はどうする?

昼休みに話しに行った際にはやはり敵対グループの妨害や邪魔を恐れてやりたいってクラスメイトは居なかった。

でも話に行って紅緒さんを支持してるクラスメイトが多かったのが印象的。

紅緒さんは人気者なんだと実感した。


それもそのはず、紅緒さんは1学期の終わり頃、ひとりひとりに話をしに行ってたらしい。お弁当一緒に食べなかった日や俺のバイトの日

学校のこと、イベントのこと、どんな中学生活だった?色んな話を話をしてくれそうな人に男女問わず、一対一でお話しをしていたんだって。

そんなことしてるなんて言ってくれなかったし、知らなかった。


話が逸れた、HRは進まない。

ままある光景なんだけど係や役割が決まらなくて停滞しちゃう。

そこで文句言う奴が必ず出てくる。




津南『早く決めろよ!仕切れないのー?』


稲田『そうよ、そうよ!早く帰りたいんだけどー!』


なんか話せば大体このふたりのグループが野次や茶々を入れてくるから本当に面倒くっさい。


津南は椅子にだらしなく背を預けながらニヤニヤしながら言う、


津南『誰がやっても一緒じゃん?はよ決めろって?』


そう言いながら、何か細かいことをさっきからケチつけてる。

俺も少しイラついて



『じゃあ、津南くんどう?体育祭実行委員やってみない?』



津南『俺そんな暇じゃ無いし!』


『ふふ!やじってHR長引かせるからヒマなのかと思ってた!ごめん!』


あはは!俺は笑う。


津南『お前と一緒にすんじゃねえよ?』


紅緒『!!

ケンカだめ!

ね?体育祭楽しいよ!絶対!

みんなで頑張ろうよ?』



稲田さんは馬鹿にしたように、



稲田『あんたは初めてかもしれないけど普通みんなは何度も体育祭なんてやってて?飽き飽きしてんの。

やる気ある奴も居れば無い奴も居るの?

わかんないかなー?』


ムカつく言い方だけど、あながち間違ってない。

やる気ある無いは個人の勝手。

だけど一生懸命やった方が楽しいのは間違い無い。


決まらない実行委員。

去年は成り手が居ないから俺と香椎さんでやったっけ?


どうしよ?俺と紅緒さんでやる?

そう提案しようとする俺。

ここで紅緒さんが暴発した。


紅緒さんは輝くような、キラキラした笑顔で皆に宣言する!



紅緒『良いよ!じゃあ私がやる!

私は経験無いから体育祭が超楽しみ!


わたし!皆んなを巻き込みたい!

私は色々空気が読めなくって迷惑かけるかもだけど!

一生懸命に一生懸命にやるよ!

だから、みんなおねがい!』


紅緒さんは一回、息を大きく吸う。


『お願い!私と、いや私たちで体育祭がんばろっ!』


紅緒さんはむん!ってこぶしを握って気合いを入れる!

でも全然筋肉のない体力よわよわの紅緒さんの気合い入れた、

『がんばろっ!』

は、小型犬が必死に威嚇してるのを見てるような妙な可愛さがある。



皆に向かって話しかける。

クラス委員長を押し付けられて一緒にやってくれる人を探してる頃とは違う。

皆が紅緒さんの話を聞いている。


紅緒『ごめんね、不幸自慢みたいなこと言っちゃうけどね。

私は結構心臓が悪くてね、体育祭はほぼ見学で、中学時代なんて一回も。

ううん、見学すらできずに一回も体育祭に参加出来なかったんだ…。


はは、稲田さんの言う通りで。みんな何度もやってるんだよね?

私はそれがたまらなく羨ましい。

今回私はきっと玉入れ位しか出れないけど胸がドキドキしてるんだ。

ひとりで頑張ってもきっと楽しい!でも一緒に頑張ってくれたらもっと楽しいよ!

せっかく一緒のクラスになれたんだもん!

何年たってもあの時体育祭でさ!なんて頑張った記憶を、失敗しちゃった思い出を、やった!勝ったっていう熱い思いを!』



紅緒さんは語りながら笑顔で涙を流す。

それは誰にでもわかる熱意と熱量で。

この後も特別な事は言っていない。

ただ紅緒さんの体育祭へ憧れ、皆んなへの羨望、このクラスへの愛着この3点だけ紅緒さんは言葉を尽くし熱く語る!



クラスの無関心だった層が反応し始める。

熱意はクラスに伝播する。

口先では無く、熱量。思いは伝わる。


ああ、紅緒さんはこうゆうクラス委員長だったんだね。

俺は紅緒永遠をまるで弟子みたいな、教えるって立場だと勘違いしていた。

訂正する、彼女は立派なクラス委員長だ。




何人か紅緒さんの相方に立候補しそうな気配が有る。

どうする?俺がやらなくても良いか?

こうゆうのも思い出だからね、クラス委員長は別仕事も回ってくるから他の人の立候補あるなら譲った方が良い。


体育祭実行委員に紅緒。

もう1人が決まればもうおしまい。

イベント開始!クラス一丸で頑張るだけでしょ!



誰かが手を挙げた!

立候補?これで決まる?







津南『じゃあ、紅緒さん!俺!俺実行委員やるよ!』

紅緒『いや!』


紅緒さんはブンブン首を振って、ノータイムで即答!!

HRは絶賛迷走中!

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