第214話 ヒーローは誇らない【side青井航】

親友の立花は何をしても誇らない。

俺を2回負かした時も、マラソン大会優勝や体育祭で勝った時も。

でもそうゆうものかも知れない。

子供の頃見た消防士のお兄さんもそうだったっけ。

あ、でも?





※今回は暴力的な表現が出てきます、ご注意ください。




始業式の日、久々に会った仲間と話して、朝HRを迎える。

そういえば仙道居ないな?

仙道はヒョロいメガネでひょうきんな奴。

妙にコミカルで面白い。休み?


HR始まった頃にやっと入ってきた水木しげる絵の男はニッコリ笑いながら先生に言った、


仙道『寝坊です。』




それ!仙道彰のセリフ!うちの仙道晃が再現する様子に俺も承も大ウケ!

あの国民的バスケマンガで同じようなシーンあるんよ!

仙道、新学期早々遅刻すんなよ!






…って思ってた。

放課後、エイオンでみんなで遊ぶ。今日部活無いし?

食ったり遊んだり。

そこで仙道がちょっとって俺を引っ張る。

こいつは立花を挟んで友達って感じ。

話すし、面白いけど直接友達付き合いがあるわけじゃ無い。

もちろんよく一緒に飯食ったり、弁当食べるから仲は良いけどな。



仙道『なあ、青井くん。

ちょっと相談があるんだよ。』


ヒョロイけど意外に力がある話し方するんだなって思った。

おう?なに?


仙道『今日、僕遅刻したでしょ?

…実はギリギリに来たら自転車置き場でさ、聞いちゃったんだ。

…津南のグループの奴が…立花をボコるって言っててさ。』



『あ?!誰が?いつ?!』


俺は仙道威圧してしまった。

でも仙道は、


仙道『落ち着いて、青井くん。

明日らしい、明日の放課後自転車置き場で待ち伏せて。囲むんだって。

多分3人。

前に5人にって話聞いてる?』


頷く。


仙道『で、僕ギリギリまで聞いて、靴箱で名前確認してメモってたら遅刻しちゃってたんだ。

…俺、腕っぷしはからっきしで…こんな事を頼むなんて…でも、立花を助けてやってくれないか?』


仙道はいつものひょうきんと違う真面目な顔で俺に頭を下げようとする。

俺はそれを止める。



『当たり前だろ!親友だもんよ!

俺に任せろって!

明日放課後立花が自転車置き場来る前に片付けるわ。』



仙道はパッと顔を輝かせた、


仙道『ありがとう!青井くん!

でもひとりで大丈夫?』


俺は思った事を言った、

立花が友達だって選んだ漢、見た目ヒョロいけど漢じゃん!



『すまん、俺、仙道を軽く見てたわ。

くんは要らない、青井って呼んでくれよ?

それで、何組の誰だよ?

あと、俺ひとりでやるけど仲間連れてく。』


俺は仙道から襲撃予定の3人を聞いた。




翌日。

なんか立花と紅緒の悪い噂が流れてる。

多分出所は津南と稲田。

あのクズと性悪…直で締めちゃえば早いんだけどな。


俺は部活って言って、実は休みにしてある。

仙道は立花や紅緒たちを18時位まで社会科教室で足止めしてる。

俺は俺のグループの体育会系の2人に事情を話し、手は出さないように頼み、見届け人を頼んだ。


16:30頃。帰宅ラッシュが途切れて人がまばらになった時間帯。

居た居た、立花自転車の見える校舎陰に3人。



俺は横から急に話しかける。


青井『俺のダチの自転車に何か用事?』


あ?

青井だ!

あ!


1人すごい勢いで逃げた!同じクラスの奴!

まああいつは逃げようは無いか。明日には会える。


『待ち伏せかよ!』

『3対2なんて卑怯だぞ!』



『…いや、お前らに言われる事じゃねえだろ?』


出来るだけ獰猛な笑みを浮かべる。

こっちこいよ?

校舎裏の砂地に2人をご案内。



『この2人は手を出さねえよ。』


『信じられない!』

『なんでこんな事に…ひとりをボコるだけって聞いたのに…。』


ほんとくずだな。

でも俺は弱い者いじめは絶対にしないって千佳ってる!

…いや誓ってる!!でも千佳ってるかもなぁ…(ノロケ)




『相撲しよう。俺は当然柔道技使わない。

お前らも相撲ルール。

負けたらもう絶対この争いに参加するな。』


このクソ雑魚は俺に言う


敵『俺らが不利じゃ無いか!』

敵『そうだ!お前ら数多いだろ!』


ほんとクソ野郎だな。


『俺1人だよ。お前らは2人で良いよ。

録画するから復唱しろよ?

俺が暴力事件起こしたら部活の先輩に殺されるし部に迷惑かかる。

だから相撲。柔道技は使わないし、相撲ルール。』


俺は友達スマホに宣言、


『俺とこの2人で相撲勝負する。

柔道技は使わない。相撲ルール。

負けた方は絶対今後この争いに参加しない、誓う。』


クソ雑魚は2人で相談して受けた。

『絶対約束守れよ!

負けた方は絶対にこの今後この争いに参加しない、誓う。』



『よし、録画したぞ、お前らも録音か録画したな?

もし約束破ったらもう容赦しない。家まで行くからな?

組と名前割れてんだから。

まあ相撲だよ、ただの相撲。』




そして、取り組み開始!



はっけよい!のこった!!


『2人がかりだぞ!』

『相撲ルールだろ!』




ふたりしてつっぱり?顔目掛けて掌底というか手のひらを叩きつけて来る!

俺は敢えて受ける。

柔道部の先輩の襟の取り方もっとエグいからな?

脳震盪起こしそうな顎に叩きつけるように手をぶつけるからな?



つっぱり食らいながら俺はぶちかまし!!

まあ体当たりだけど。


1人は勢いよくふっ飛んでいって後ろに何歩か勢いよくたたらを踏んでようやく校舎にぶつかって止まった。呻いてる。

ポケモンの技で『たいあたり』って弱いけど実際体当たりって強くない?って思うんだけど。全体重かけてぶつかるんよ?


もう1人は後ずさって逃げようとするが捕まえて上手投げ!

怪我しないよう加減して投げたけど息できないみたいだから背中叩いてやる。

相撲技はルールでありだろ?



『じゃあ約束守れよな?もし破ったらもう手加減してやらないから!』


負け惜しみみたいな事を言われる、


『はぁ、はぁ、なんで、あんな奴に肩入れすんだ。』


馬鹿な事を聞くな?


『お前らだって津南の為なら不利なケンカ位してやんだろ?』



2人は戸惑ってる?そんな程度の繋がりか?


『はは!立花は俺より強いからな?

お前らが挑むなんて一万光年早いっつうの!』


俺は仲間と笑ってその場を後にした。

明日、立花に会っても俺は今日のこの事は話さない、びっくりさせて、立花が気にしちゃうだろうから。

なるほど、相手が大事なら誇らないようになっちゃうんだな。



⭐︎ ⭐︎ ⭐︎


…って事があったんよ?

夜に彼女の千佳に電話する。立花には言わないし、恩に着せる気もない。

でも千佳にはいつも何でも話す。


千佳『また危ない事して!でも気をつけてね?』


千佳はキツイとこあるけど優しいんだ。ケンカじゃない!

こんなの遊びって!アピール!


『大した事無いって!で、俺言ってやったんだよ!』


最後のくだりを話して聞かせる!



すると千佳はスンってテンションを下げて、



千佳『ねえ航?一万光年早いって何?

一万光年はね?光の速さで一万年かかるって言う、距離の単位なのよ?』



え?

…俺の彼女は頭がいい。



⭐︎ ⭐︎ ⭐︎





あ、でも!

立花が誇らしげに語ることがある。

『香椎さんがね!』『香椎さんは、』『香椎さんがその時!』

『望がさ、』『ひーちゃんが!』

『宏介ってさ、』『宏介の奴!』『あっちゃんがねー、』


『青井は!』


立花は自分の周りの家族や友人の話しをする時誇らしげ。

でも俺は知ってる。

香椎の話をする時、テンションを上げないように出来るだけ抑えてるけど顔が崩れるように笑顔で目が優しいことを。

それをバレてないって思ってる事を俺は指摘しない。


そんなに好きならさっさと言っちゃえば良いのに。

紅緒も伊勢も大変だなって俺は思う。

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