第212話 香椎さんは聞き上手【side香椎玲奈】

あぁ夏が、夏休みが終わっちゃうよ。

今年も承くんと全く会わずに夏が過ぎていく…!


私の夏は勉強にテニスに法律の勉強にであっというまに過ぎていく…!

他の女の子が言ってた。

ひと夏の燃えるような恋!

夏に大きな進展!

初体験!

お祭り、花火、海、プール、キャンプ、バーベキュー!


みんな進んでいるらしい。本当に?

でも自分を振り返れば、


仮とはいえ婚約しちゃったわけで。

家の為、家族の為、会社の為、会社の従業員さま達の為、時間稼ぎとして受けた。

でも絶対に結婚なんかする気は無い。

この婚約をなんとかしなければ承くんと結ばれる道筋も無い。

そもそも暫定的婚約者候補もどき(仮)が居るって知ったら絶対離れて行くでしょあの漢?

仮であろうがそうゆうのを許せない義理堅い武将なんだよ。


そんな事を思いながら今日も今日とて暫定的婚約者候補もどき(仮)との面会タイムだよ。


今日はその新二さん朝から映画見てランチ食べるってお出かけ。

あまり夜とかは…ってしぶったから朝からの健全なコース。


だってムードみたいなの勝手に感じて迫られたり間違いがあったら大変な事になっちゃう!千佳の言う薄い本みたいな目にあっちゃう!

…本当に、本当にいざとなったら…私握力強いんだ…。

最悪つぶ…ゲフンゲフン。とにかく強姦未遂で事件にしちゃうよ。



そんな私の黒い胸の内はおくびにも出さずにニコニコ、幼い笑顔を心がける。服装も夏だけど露出なし!セクシーなし!可愛いんだけどちょっと甘めのコーデ。


新二さんと映画を見始める。

この後ランチでしょ?ポップコーンとかチュロスとか?そんなに持ち込むの?

映画はアクション映画で新二さんが見たかったんだって。

承くんと映画だったらきっと内容なんか頭に入らないくらい隣を意識しちゃうんだろうなあ。

私は現実逃避しながら全開で集中して映画を楽しむ!



そして映画が終わった。

あー!面白かった!

今思ったよ、もしどさくさに紛れて手でも握られてたら!と思うとゾッとする。

だって隣が承くんなら私絶対やるもん。



新二『映画面白かったね!すっげ集中してたね?』


なんか恥ずかしいね、

『あっはい。面白かったですね、あそこのアクションが!』


新二『それな!その後の…』


ランチするお店に行きながら映画の話をする。


で、お店に着く。

すっごい高いお店だね?



新二さんは慣れてるのか私に何が食べたいか聞きながら注文する。

高いコースメニュー。



こうゆうコースは会話を楽しめるようにゆったりお料理が運ばれてくる。

新二さんと映画の話をして、近況の話をする。

新二さんは仕事なんて単調な作業でしか無いし、趣味はインドアで?つまらない生活だよってつぶやく。

私は学生だから部活や夏休みの課題なんかの話し。


新二『でも玲奈さんみたいな勉強も出来て運動も出来て、可愛い子だったら学校生活バラ色でしょ?』


は?人の苦労も知らないで!私には私なりの苦労があるんだよ!

そう思うが顔には出さない。


『うーん、そうですね、でもこんな事がありましたよ。』


去年の今頃、私にとってもトラウマな事件。

83話 悪意に囲まれて 参照


ちょっとコミカルに、でも辛かった。それを強調してクラスの中心から味方が1人も居ない状況に転落した事をまるっと話す。



新二『本当リア充は陰険で!くそだな!』


苛立つ新二さん。

一応社長で?愛人も居て?お金の心配が無いあなたもリア充じゃない?って思うけどここでのリア充はやっぱり学生時代のカーストとでも言うような格差なんだろうね。


前回も聞いたけど、新二さんの学生生活はあまり楽しいものではなかったみたい。


新二『それで?どうやって解決したの?収まるまで待ったの?』



私は頬が熱くなる。

誤魔化せるよ、でもそれは出来ない。



『ひとりの男の子が解決してくれました。

クラス全員を敵に回して一歩も引かずに。

ただひとり、私の味方をしてその熱で解決してくれました。』



新二『そんなヒーローみたいな奴居る?そいつはなんかスポーツ万能で勉強も出来る外面良いイケメンみたいな奴?』



半信半疑、疑いながら苦い表情で聞いてくる、

(そっちは敵にまわった奴だよ!)

新二さんが挙げた特徴がまんま外町くんで苦笑い!



『いえ、その男の子は見た目は平凡で勉強も普通で運動はマラソン得意ってだけの目立たない子なんですよ?』



ふふー!私は承くんの事を人に話す時誇らしい!

でも、新二さんにあまり承くんの存在はアピールしない方が良いんだろうな?って思ってる。

仮とはいえ婚約者もどきが他好きしてるって不快だよね。



『新二さんはいらっしゃらなかったですか?

印象深い関わりの深い人。』



新二『あー。あー、居た、唯一関わった女子のクラス委員長。真面目で頭固くて、みんな俺に関わらなかったのに提出物や課題で何かと絡んでくるやつ。

俺評判悪かったけど実際に何か悪い事をしてはないでしょって気にせず接してくれた人…、居たなあ。』



新二さんは話しながら遠い目をしている。

誰しも忘れられない人、他の人が聞いてもたわいも無い事なんだけど本人は印象強い事とかあるよね。


私は、相槌打ちながら話をずっと聞く、復唱したり、聞き返しながらうんうん頷いて聞く。

新二さんは今日も結構話しをしてくれた。

かなりグルメらしく料理が趣味な事。

でも好きな物はカレー、ラーメン、ハンバーグ、唐揚げとほぼ承くんじゃない!って嗜好。いや男の人ってそうなのかなあ?


小学生頃は内気で中学生頃多分なにかあって、高校生頃には大体今みたいな感じになってた?そんな印象。


基本的に人間不信で特に女性が信じられない。

私はかなり好感度高いらしい。

それを裏切らない為、敬語で話すが思った事を口に出しようにする。

普段考えて、思った事を直接的には話さないようにしてるから感覚が違う!


ランチを食べながらたっぷり話しをした。

7:3位で新二さんに話をしてもらい私は聞きに回った。



新二『玲奈さんは聞き上手だな。俺ばっか話しちゃった。

本当に君みたいな娘が側に居たら良いのにな…って思ってる。

俺本気だから。』


『…。』

私は困ったような笑顔をする。

受け入れてはいない、でも拒否していない。

時間稼ぎしつつ、出来れば新二さんをなんとかしてあげたい。

でも私に何が出来る?




でも、少しずつだけど新二さんの心が見えてきた。

過信しちゃいけない、相手は年上の大人だし、私はまだ小娘だよ。


もう少し、お互いを知る必要がある。

焦るな、時間を稼ぎつつ、情報を得て解決策を考える!



私は帰宅するよ。

最近お姉ちゃんは不在な事が多い。

なんか猛烈な勢いで色々な資格の取得をしているし、今までほとんどしてなかった人脈の構築を大学でしている。

超絶美人のお姉ちゃんはほっとくと人がすっごい寄ってくるから今まではひっそり好きな事をして過ごしてたんだけど今のお姉ちゃんは精力的に人に会い、知人、友人を増やしてる。

何をする気なんだろ?本来天才型のお姉ちゃんが本気出したら多分大概の事は出来るはず…!


パパとママも色々経営の見直しと鬼のような出張営業で少しずつ松方家の影響から抜け出れるような経営体制と新ルートの開拓に大忙し。

それでもまだまだ足りないらしい。


私は出来る事をしていくよ!



それはそれとして、承くんに会いたい。

あの紅緒さん?が彼女じゃ無いならなんとか私の彼氏居る疑惑だけなんとかしておきたい…。

しかし、暫定的婚約者候補もどき(仮)が居るって知られるのは致命的…うーん、なんかいい口実…会う口実…。

自然にサラッと合って、誤解を解きつつ婚約を知られない…難しい。


そんな調子で私の夏は終わっていくよ…。





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