第208話 構築【side 香椎玲奈】

私の出来ることは少ない!

わかってるならやれる事は少しでも早く一人前になる事!

私はテニス部で体を動かして、家に帰って勉強をする。

息抜きに法律関連の勉強をする。


これを繰り返す。勉強、勉強、運動、勉強。

ワーカホリックと言われてもやらずに居れないよね。


そんなある日、親友の千佳に会おうよ!って誘われた。

そう言えばここんとこまともに会って無い。


千佳『玲奈!久しぶり!何気にこんなに会わないの初めてじゃない?』


千佳はニコニコして私に話しかける。

うん、そうだね。


『…ちょっと…忙しくって…ね?』


少し困った顔出ちゃった。


千佳『あの、『彼氏出来た』って嘘から会ってないよ!ロインだけじゃ寂しい…玲奈?』



千佳は私を訝しげに見つめる。

うん、付き合い長いしわかるか。


玲奈『ね、千佳。今は言えない。でも、いつか聞いて?』



頷く千佳。


千佳『なんかあった…結構な事だ…承くん?』


ううん、首を振るよ。

あ、でも。承くんと偶然会った事伝える。



千佳『えええ?!承くんスマホ持ってた?!

噂のクラス委員長の娘にも会った?!』


ちょっと凹みつつ、思い出しちゃうよ。


『うん。そうなんだよ私びっくりしちゃって。』


千佳『ええ?!あ、あ、ありえない!

航そんな事!』


『航?…青井くん?かな?』


千佳は真っ赤になりながら拳を握りしめると観念したのか、中学校の卒業式後青井くんと付き合いだしたってカミングアウトした。

…きっと卒業式の日うまくいかなかった私に言い出しにくかったんだろうね…。

あ!だから!伊勢さんが初日に金髪にしたとか、承くんがクラス委員長になったってなった日に情報が来たんだ!

逐一承くんの変わった事報告してって頼んだのに!


千佳はスマホを取り出し、怒り出す。

今、来るから!ってぷんすこ!

少しして青井くんが来たよ。


千佳『こっち!』


青井『…お、香椎久しぶり?』


『久しぶり、青井くん。元気?』


家近所なんだよね、青井くんも。



千佳『なんで!承くんスマホ買ったって報告しないの!』


青井くんは首を傾げながら、


青井『しなかったっけ?』


千佳『しないよ!もう!洗いざらい吐いて!』


こうして青井くんの尋問が千佳主導で行われた。

飴1に対し鞭10位の尋問だけど2人はなんか楽しそうでなにこれ?って思ったよ!



青井『うーん、大して変わった事は無いと思うぜ?

あ、最近ファミレスみたいなとこでバイト始めたんよ?立花。

バイト先に紅緒も伊勢も入り浸りなの。

あと…立花バスケ始めたんよ。』


千佳はキレながら、



千佳『ごめん玲奈!航はおバカだった!私が聞いておけば…!』


いいって!大丈夫!

今はまだ会えないもん!


スマホのアドレス教える?って聞かれたけど、こうゆうのは本人同士でやる事だから!って断った。

でも、そっかあ。バイト始めたんだぁ。

どんななんだろ?

バスケ始めたのか?そう言えば小学生の頃バスケ部作るって騒いでたっけな。

想いを馳せてると、



青井『ほら、これがバイト中の立花。』


!!

私は食いついちゃう!なにこれ!!凛々しい!!

この制服ほしい!もちろん使用済みの!



『送って!その写真送って!』


青井『動画もあるけど…?』


『全部ちょうだい!』


千佳が微笑ましい目で私を見てる…くっ、彼氏持ちは余裕だね…!

でも写真といらっしゃいませって言ってる承くん動画送って貰いながら青井くんは聞き捨てならない事を言った。



青井『立花は紅緒と仲良いけど付き合ってはいないんだぜ。』


!!!

何だって?!

私は思わず慌てて聞いた!


『青井くん、あの、あの紅緒さんて娘は彼女じゃ無いの?!』


青井くんは違う違うって手を振りながら、


青井『違う違う!でもすっごい立花に懐いてて?永遠って名前だからとわんこなんて言われて可愛がられて…。』


青井くんに教えて貰って皆で撮った写真も一枚送って貰った。

紅緒永遠、見た通りのすごい黒髪色白美人で頭脳明晰、病弱、健気。

会ってすぐにわかった、彼女が承くんを巡るライバルだと。

私はやっとライバルを認識したんだ!


それも何ですぐ教えてくれないの!

立花くんのこと玲奈に教えたいって言ってたでしょ!千佳はお怒り!


速報 青井航彼女にすっごく怒られる


☆ ☆ ☆

8月の面会


松方新二さんと会う日が来た。

私の希望で『猫カフェ』に来た。

ライバルであろう紅緒さんが犬っぽいって聞いて何となく思いついた。

…承くんから貰った三毛猫のしおりどこ行ったんだろう?



新二『うは!猫ちゃん!猫ちゃーん!』

玲奈『ふふー!君可愛いね!』


思ったより猫可愛い!

この猫ちゃんなんか望ちゃんに似てる!ちゅーるあげる時だけ甘えんぼ!


新二さんも猫好きなんですね?

いや、初めて触った…!…ううん、昔子猫拾った事あったなぁ。

なんて会話があった。


ぽつぽつ、いろんな会話をした。

私はまだ高1の小娘だからそこまで大人男性と共通の話題が無い。

自然共通の話題って学校生活の話、ああだった、こうだった。

時代も10歳違えば色々変わってもいるわけで。



私の歯に絹着せない言動を気に入った。

自分を見てくれる。

がキーポイントなんだろうけど敢えて自分らしさを全面に出す話をする。


私の話、クラス委員長としてみんな為に頑張った話、大変だった話。


新二さんは意外にも黙って聞いてくれて、ぽつりと。


新二『俺にも玲奈さんみたいなクラス委員長居たら良かったのになぁ。』


って呟いた。


『良かったですかね?』

私は謙遜しながら言うよ。話すより話して貰った方が良いと思うから、



『新二さんの中学生時代とかってどうだったんですか?』


今度は新二さんが話し出す、ポツポツ、だんだん流暢に。

あんまり人と話して無いのかな?

私も聞き手になる事が多かった頃承くんに聞いて貰って嬉しかったっけ?


私は一生懸命に新二さんの話を全身で聞き、復唱したり、共感したり、時折聞き返したり、頷いたり、相槌を入れる。あまり楽しい中学生では無かったみたい。



新二『話しすぎたな…。』


恥ずかしそうに照れる新二さんはそんな嫌な感じはしなくって寂しい人なのかな?って思った。


時間いっぱいネコ喫茶を満喫して、出る時またポツリと、



新二『動物は裏切らないからな…。』


って言ってたのが印象的だったよ。

色々聞けて良かったよ。長期休暇だからまた月末に面会がある事になった。

学生時代に新二さんを形成した何かがあるはず!


カウンセリングの本を前に読んだ。

『傾聴』、『共感』、『繰り返し』この三つが基本だよ!

私は実践していく。




もし私の武将ならどうするかな?

きっと彼なら新二さんと信頼関係を築き上げていくよ!

いつも傍で見ていた私の漢っぷりを見せてあげるよ!


目指す形はカウンセリングシェヘラザードにバージョンアップしたよ!

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