第205話 親友が女の子を連れてきた

8月に入り、俺はバイトと走り込み、バスケの3on3に明け暮れる。

ちょいちょい友達や紅緒さん、伊勢さんから誘いがあってご飯食べたり、遊んだり。

最近青井もバスケハマって楽しんでいるんだ。


宏介とはそんなに会えて無くて少し寂しい。

宏介は彼女にこっぴどいフラレ方をしてから一心不乱に勉学と部活に集中している。


そんな宏介が!今日!バイト先に来る!


待ってると、木多!違った…うう、トラウマだなぁ…。

来た!


…?


え?女の子連れてる!!入店するふたり。


景虎『へらっしゅー!』


宏介『…承!久しぶり!

…へらっしゅーって何?』


『いらっしゃいませ。


(小声)久しぶり!

…気にしないで。』


俺に説明は出来ない。


??『こんちにわ…!』


宏介の連れてる子はふくよかな女の子?

もっちりしてるが表情は冴えないし生気は無い。


テーブルに案内する。


『宏介!何にする?あとそちらは…?』


友永『始めまして、宏介くんたちに色々協力して貰ってる、友永ゆかりです。』


友永さん…ふくよかな彼女は友永さんって言うのか?

あの宏介が三島さんとの事を振り払って前へ進もうとしてるのかな?

それなら応援したい!けど、そっとしておく方が良いのかな?

まだわからない。ダイエット中だと聞いている。



宏介は結構淡々としてて、


宏介『…うん、今面倒を見てるんだ。

…見返す為にもね。

…承、制服似合ってるね?』


くすぐったい!知り合いに見られるんはまだ慣れない。

ハンバーグとカレーと甘いものの店って言ってある。


宏介『…じゃ、俺青井おすすめのハンバーグカレー!』


友永『えとえと、あの、宏介くん、どうしたら?』


宏介から彼女が過酷なダイエット中って聞いてたので、前もって厨房に聞いてた高タンパク、低カロリーのものからいくつかおすすめする。



友永『…じゃあ、それで…。』


この娘ほんと生気が無い。


宏介がじゃあお願いって目で合図する。

少しだけ話して離れると、




紅緒『ねえ!知り合い?承くんの知り合いなの?

女の子はどんな関係?』



とわんこが噛み付いてくる。

最近1番テーブルのヌシと呼ばれる女の子。ご存知!紅緒永遠さまです。


景虎『べにおちゃんは外から見栄えするから?昼間の暇な時間帯は道路側のテーブルに居なよ?どうせ長居するんでしょ?』


って一声ですっかり暇な午後。ランチから夕方の間は入り浸りな事が多い。

どうなの?



『女の子は知らない。男の方が…あ、よく話してる親友の宏介。』


紅緒『え!あの宏介くん?!

襲撃時バット持って着いて来てくれたり、3組の軍師になって承くんと戦った?!

…最近彼女にフラれちゃった?』


絶対最後言うなよ?

頷く。


紅緒『会いたい!会いたいなあ!

落とし穴一緒に掘ったんだよね?聞きたい!

…ダメ?』


彼女なのかな?女の子連れだから…?やめた方が。



紅緒さんは宏介たちのテーブルをめっちゃ気にしてる。

はいはい、追加のチョコパフェですよ?

って、今度は友永さん?がこっちを気にしてる?


…いや、違う、目の前を通るスイーツに目が奪われてる?


あ、お客さん!



『いらっしゃいませ…?

田中くんじゃない!』


お客さんは中学の同級生で友人の田中くん!

田中くんはしー!って俺に静かにするようにジェスチャーで示すと、ひっそり宏介たちの斜め向かいの席へ。


田中『聞いたかもしれないけど、あの女の子のドキュメント撮っててね?素の表情撮りたいから秘密でお願い?』


なんか撮ってるとは聞いてたよ?

秘密、わかった。

田中くんからビーフカレーとフルーツパフェの注文を受けて、頼まれた通り放っておくよ。



宏介と友永さんにそれぞれハンバーグカレーと赤身ハンバーグセット(高タンパク、低脂質、サラダ多め、ライス小)を運ぶと2人とも美味しそうに食べてた!


そして、宏介に頼まれていた物を運ぶ。

調理者は、


景虎『高純度の混ぜ物無しのブツだぜ?

ダイエット中これがキマれば一発で天国だぜぇ?

飛ぶぞ!』


だぜぇの言い方が一時ブレイクしたワイルド芸人みたいだった。



『景虎さんは見た目イカついんですからシャレにならないです!

止めてください!』


って言うとちょっとショック受けてた。









『友永さん、宏介から、カロリーギリ6割減パンケーキです。』



友永『っっっっっっっっっっっっっ!!』


高速でパンケーキと宏介を何度も見比べる友永さん!


宏介は微笑みながら、頷く。



宏介『…いいよ、ゆっくり食べな?』


友永さんは震える手でパンケーキを切り分ける。

さらに震える手でクリームを切り分けたパンケーキに塗りゆっくり口に含む。




友永さんの目が光ったような錯覚がした。




友永『うまいっ!!!』


テーレッテレー!!!


なんかレトロなCMみたいな効果音が聞こえるような気がした!

良かった、お気に召したようで何より!

宏介から頼まれてたんだ。

低カロリーで満足感のあるスイーツ!


伊勢さんが来るたび景虎さんにせがむから実は種類が増えてきた。

カロリー半分パンケーキ→カロリー約6割減パンケーキと進化を続ける。

それが意外にも女性人気が高い!




幸せそうな友永さんを微笑みながら眺める宏介。

…宏介は友永さんのダイエットに付き合って食事量を減らしてる。

…黙って1人でやってる。

一緒に苦労しないと説得力がないからだって。

宏介ってそうゆうところがある。

宏介は太っていないのに大丈夫なん?俺は心配。




食べ終わったのを見計らって紅緒さんが動いた!

俺は食器下げ中で止められない。




少ししてフロアに戻ると紅緒さんはもう席に戻っていた。


宏介『…美味しかったよ!

あとバイト中の承は大人に見える。

…じゃ夜河川敷のコートで!』


今日の夜、宏介と青井と帰省中の完くんとマッチョたちでバスケするの!超楽しみ!


友永『…ごちそうさまでした!

パンケーキ美味しかった!美味しかったです!』


後ろ見ると景虎さんニンマリ。

景虎さんはお客の美味しい!が生き甲斐だからニッコニコ!



あの宏介がなあ、三島皐月を吹っ切れたのかな?まだかもだけど違う子を見るのは良い事なのかな?

…じゃあ、俺も他の子見た方が良いのかな?

答えはいつも出ない。




1番テーブルでは、紅緒さんが少しぼーっとしてる。

どうしたん?



紅緒『さっき宏介くんに挨拶しちゃった。

…それでね、彼の連れの女の子…私の昔の友達だった…はは。』


そう言えば倒れる以前の事ってほとんど聞いた事が無い。

倒れて、寝たきりみたいな生活になった。

でも?それ以前は?それ以前の友達や生活の話って?



紅緒『…ごちそうさま、今日はこれで帰るね?』


いつも俺のバイト終わりまで居る紅緒さんは今日は帰ると言う。

俺はまだバイトがあるから離れられない。



まだ話してない事があるのかな?

ばいばいって手を振る紅緒さんの表情はぼんやり過去の事を思い出してるようだった。


誰しも話したいこと、話したく無いことがある。


結局この話を聞けたのは二学期に入り、体育祭が終わった後のことだった。




田中『いやあ、良い表情撮れた!

黙っててくれてありがと!

あと、あの紅緒さん?綺麗だね!承くんやるね!』


その後の会計で田中くんにすっごい冷やかされた。

機会があればあの娘撮らせてよ!って言われた。

あの友永さんを?宏介からアダルティなDVD みたいなインタビューするって聞いた。

紅緒さんも…素直だからなんでも答えちゃいそう!


『だめ。』


『綺麗に撮るよ?一生の思い出にどう?』


なんか田中くんが女性を脱がすのが上手い大物カメラマンに見えてきた。

付き合いが長くても新しい一面を発見するもんだね。


そんな感じの初めて職場に友人が来た1日だったよ。





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