第198話 香椎玲奈はやさぐれる【side香椎玲奈】

久しぶりに承くん会えた!

会うなり卒業式の手紙の事を謝ってくれたからまだ許してはいないけどひと心地。


だけど、承くんはすっごい綺麗な女の子を連れていて、手を繋いで去っていった。


最後に、


承『…香椎さん、彼氏出来たんだってね。

おめでとう。

どうか、お幸せに…。』




だって。



私はその日から絶不調。

ボーッとしちゃうし、テニスも調子悪い。

夏の大会で県大会4回戦で敗退。まだ一年生でも地方大会出場位はいけると思ってたんだけど…。

期末テストも…10位…いくら県内最高偏差値を誇るこの高校でも…入試も中間も2位だったんだよ?

こんな事今まで無かった…。二桁順位なんて産まれて初めてとったよ。



ママ『別に責めるわけじゃないのよ?どうしたの?何かあった?』


姉『…玲奈らしくない…多少調子悪くったってまとめてくる玲奈が?』


家族まで心配させちゃった…。

学校では、

『彼氏出来たら成績が…。』

『偏差値ひっくい彼氏のせいじゃないか?』


とか好き放題。


はは!私が嘘ついたからバチが当たった。

承くんに嘘が伝わって、承くんは私を諦めて、違う女の子を選んだんだ。

きっとあの綺麗な女の子…。

そうだよね…私なんか、選んでもらえない…。

私が好きでも告白もせずに諦めちゃうような女の子だったんだ。



虚しいなぁ。あんなに会いたかったのに…。

…もう、誰でも私で良いって人に…。

親友の千佳もテニスの大会で忙しいし、期末もあるから登校時に会えなくて休日もタイミングが合わない。

ロインで…なんかこの話をしたくはないよ…。



私は今まで生きてきて最大の鬱状態だったよ。

もう、自暴自棄っていうか。なんでも良いし、どうでもいい。

でも家族が、友達が心配しちゃうから普段と変わらなく見えるように細心の注意を払っていつものフリをする。






7/7私の誕生日、16歳になった。

どうって事も無い。

昔なら16歳で結婚出来たんだってね。



その数日後、パパが誕生日プレゼントを買いにデパートへ行こうって言い出した。

もう高校生だから親が用意した物だと気に入らないだろうから?って。

別に何でも良いのに…。



デパートで、またパパの大学の先輩?パパの経営する会社の付き合いもあるらしい一家と出会った。

187話のゴールデンウイークの辺り参照。


ん?出会ったのかな?待ち合わせた?



パパとママは向こうの両親がどっちも大学の先輩だったらしく少し下手に話してる。確か松方さん。

くどい顔の押しが強そうなセクハラおじさんだ。

昔ママが気になってたとか言って私やお姉ちゃんをじっと見る人。

…苦手だな。

奥さんはすっごい美人さんだけどいつも反応が少ない人。

失礼だけど目が死んでる。



息子さん2人と私たち姉妹はフードコートみたいなとこで前回同様放置される。

前回言ったかもだけどかなり年上の兄弟。


兄の松方新一さんは27

弟の松方新二さんは26

らしい。


姉『安直な名前よね、同じ漢字使って。』


『うちだって同じようなものでしょ?』

うちだってお姉ちゃんと私は同じ漢字使ってる。


姉 優奈19

妹 玲奈16


子供達同士話でもしてなさいって言われたけど…10歳違うと話なんて合わないわけで…大人でしょ?

向こうは大学の先輩のお子さんで大学卒業と同時に産まれたらしくかなり年上。

私のパパママは卒業後実家の会社を立て直す為に必死で働きパパとママが30歳頃お姉ちゃんが産まれてるから大学の先輩後輩の子供達と言えど年齢差は大きいね。



お兄さんの新一さんはなんていうか落ち着いたイケメンサラリーマンって感じ。頭も良さそうで私たちに気を遣って優しく話しかけてくれた。


弟の新二さんは太ってて態度が悪くて、横柄。イライラしてて話しかけにくい人だった。太ってるせいかな老けてて?最初こちらがお兄さんに見えた。



お姉ちゃんは明らかな社交辞令って感じで話をふる。

お姉ちゃん!天気の話し2回目だよっ!


お兄さん天気の話を広げて時事の話題につなげる。

何だこれ?早く終わってほしい。


新二『どうせ、女なんてイケメンな兄貴にしか興味無いんだろ…俺なんか…。』


大人がいじけてるのは格好悪い。


『まあ、お兄さんが必死に場を持たせてますからね?』


適当な相槌。


新二『ふん、お前だって兄貴の方が良いと思うんだろう?』


『…いや、どちらも興味無いです。』


私は自暴自棄だったから、取り繕わない。

弟さんはいやとかでもとか自分とお兄さんを比較してみんな兄貴を誉めて、求める。俺なんて…って。

10も年上なのに気持ち悪いなあ。


そう伝える。

びっくりする弟さん。



『私だってお姉ちゃんに比べられて育ってますし、お姉ちゃんに負けてるって思っちゃいますよ。

でも姉は姉、妹は妹じゃないですか。

兄は兄、弟は弟でしょ?』



弟さんは嬉しそうに寂しそうに言った、


『でも、俺は選ばれないし、兄貴に比べて、見た目も、性格も、勉強も、運動も、仕事も、何もかも勝てない…誰がそんな俺を…。』



ほんと10も年上なのに気持ち悪いなあ。

私だって!承くんに選んでもらえなくて!

スペックなんて関係無いんだよ!


私はキレそうになりながら言う、



『私だって!選んでは貰えないですよ!

勉強?運動?見た目?なんでもいいですよ!

スペックなんて関係無いでしょ!』



結局ちょっとキレながら10も年上で体重二倍以上ある男の子人を説教した。

お兄さんもお姉ちゃんも目を丸くして私達を見てる。




新二『…俺、そんな事を言われた事無かった。

…こんな超絶美少女でも…選んで貰えないのか?

辛かったなぁ…。』



10も年上の大の男がJKに説教されて泣く姿は控えめに言って見苦しい。

…あと超絶美少女ってなんか響きが痛い!やめてください、人がこっち見てます!

あと、選んで貰えなかったのかあって人に言われるとグサリとクル!

失礼な!私結構モテるんだよ!…肝心な人に、選んで貰えなきゃ…意味ないよね…。




もういいや。



新二『…よ…。』


下を向きながら何かぶつぶつ言ってる弟さん。

もう私の眼中には入らなかった。

お姉ちゃんが呆れて、

『ちょっと妹、男性が苦手なんです。すいません♪』



って私をダシに離脱した。

なんでもいいよ…。



姉『よーし!よしよし!』


牛とか馬をあやすようにお姉ちゃんが私を撫でながら買ってきたクレープを私の口元に運ぶから私は無表情にそれを咀嚼する。


姉『体育祭の写真の二人三脚の時の顔!ハシビコロウみたい!』


お姉ちゃんはキャッキャはしゃぎながら私にクレープを食べさせるから私はなすがままクレープを食べた。


そして、両親と合流して家に帰った。

プレゼントはブランド物のバッグだった。

お礼を言って家に帰りクローゼットにしまった。





そんな事忘れてた一週間後。夏休みに入った。

はあ、夏休みの間にしっかりしなきゃ。


香椎家、夜、食卓。

パパが真面目な顔で妙な事を言い出した。


パパは真剣な顔をして言う。

何かご立派な手紙?を持って。



パパ『…玲奈、こないだの…。

松方さんの弟さん。

松方新二さんから、玲奈、お前に…



正式に婚約の申し入れがあった…!』


ママ『えええええええ?!』

姉『えええええええええええええええ?!』



渡される、立派な手紙?書状?

私はそれを呆然と見下ろす。

え?私まだ16歳ですけど?



what is thisふぁでぃでぃす?

(これはなんですか?)

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