第195話 警報【side紅緒永遠】
もうすぐ一日が終わるって休み時間。
立花くん今日はバイト休み!
今日はどうしようかな?社会科教室で立花くんとまったりしようかな?テスト近いし勉強かな?
エイオンでも引っ張って行こうかな?
立花くんが急にバイトを始めて私は不満だった。
でも景虎さんに彼女なら…って言われて、じゃあって流されちゃって…。
最近私は不満!もっと構って欲しい!
でも…たまに行くけどバイト中の立花くん凛々しくってなんか良い。
そんな私の企みをよそにバイト先の俺カレから連絡が来て?
ターミナル駅にお使いだって!私は!
ごねて私も連れてって貰うことになった!
放課後東光駅まで歩く、
いや、そうゆう意味じゃ無いけど?
一緒に通学するカップルに…見えないかな?
どう?
私が久しぶりの電車だ!って言うと立花くんは優しい目で見てくれる。
(多分久しぶりの電車だからはしゃいでるって思ってるんだろうなぁ。)
私と立花くんの関係ってどうなんだろう?
立花くんが私を可愛い、すっごい可愛い!世界で一番可愛いと思う!守りたい!って言うから?意識してるってわかったら私も意識しちゃうよ。
179話 可愛い 参照
でも実際どうかな?電車に乗って、空いてたひと席を私に譲り、立って車外の光景を見てる立花くんの顔を見ながら思案する。
私のことそんなに意識してる?
私にとって立花くんは高校に入って最初の協力者で理解者でどん底だった私を陰日向にフォローしてくれた頼もしい男の子。
…最初の印象は極薄だったけど無くてはならない大事な…なんだろう?
友人?…恋人…では無いし?
…俗に言う友人以上恋人未満って感じ。
私は確かに意識しちゃってる。
これだけ信用できる人はそうは居ない。
誠実で実直、真面目な頼り甲斐のある男の子。
…私が下手打った自己紹介での彼氏募集の条件にこれほど当てはまる人は居ない!って断言できる。
☆ ☆ ☆
『…私、彼氏募集中です!
頼り甲斐のある、誠実で真面目な男の子が好みです!
立候補しても良いよ!って人居たら声かけてください!
よろしくお願いします!!』
170話 初日の自己紹介 参照
☆ ☆ ☆
思い出すと恥ずかしい!私ばか!
…でも、それで女子に避けられ、言い寄った男子を突っぱねて孤立して、クラス委員長押し付けられて…助けて貰って、なるみんたちも紹介してくれて…今人並みの学生生活が送れるのは立花くんのおかげ。
でも立花くんは『いや、紅緒さんの頑張りでしょ。』って。
…でも、私は怖い。
立花くんの学生生活の話をいつもねだってして貰っていた頃、よく出てくる女の子が居る。
立花くんの思い出にいつも出てくる女の子。
たぶん、立花くんはその子が好き。
何があったのかは知らないし、教えてくれない。
あんなに饒舌だったのに、いつもその光景が目に浮かぶような語りだったのに、卒業式の話だけはぼんやり。
その女の子のこともだね。
私の推定では、
みんなの為に心を砕くクラス委員長で、学校1頭の良い綺麗な女の子。
テニスで全国大会に出場しちゃう程のフィジカルエリートでイベントを全力でライバルと戦う可愛い女の子。
どっちが本命だったんだろう?
卒業式で?フラれちゃったのかな?
でも、それなら都合がいい!
私は重い女の子だからこうゆう誠実な男の子が好き!
…いや!まだ!まだそこまで心許して無いんだよ!
でも、車外を見つめる立花くんの顔を見てると頬は熱を持ち、心臓は跳ねる。いや、心臓に良く無いよ!
でも一つわかってるのは私は立花くんがすごく気になってて、この好意を、初めて感じる感情を最近私はすごく楽しんでるってこと!
☆ ☆
ぷしゅー!音を立てて電車がターミナル駅に着く、
立花『紅緒さん、着いたよ?』
私はワガママを言ってみる。
『引っ張ってー!』
しょうがないな…。立花くんは呟きながら座席に座る私を引っ張る。
(あ!手を握られた!)
前にタカってきた男子達がボディタッチしてきそうになるのはすっごい嫌悪感あったのに、私は立花くんが手を引っ張ったのをすっごい意識しちゃってる!
手に意識が行き、また私は赤面しちゃう。
立花『恥ずかしいならしなきゃ良いのに…。』
そう言う立花くんも赤くなってる!
おかしいね?2人でふふ!って笑う。
立花『あれだよ、あれ!わんこを散歩中に急に動かなくなって、飼い主さんが引っ張ってるような?』
『えー?酷くない?』
はは!
ずっとひとりだったからこうゆうやりとりすごく楽しい!
私はご機嫌だった。
ターミナル駅は煩雑で、人も多い。
用事済ませて、早く東光へ戻りたい!
『立花くん!そっちじゃないよ!こっち!』
スマホ見ながらで、違うとこ行こうとする立花くんの袖を引っ張る。
照れる立花くんと笑い合う。
『もう!しょうがないんだから!』
立花くんの腕を叩いて、立花くんはごめんって笑いながら謝る。
すると、
?『…承くん…?』
向こうから歩いてきた女の子が立ち止まった?
!!!!!!
その女の子は異様だった。
整いすぎる綺麗な顔を綻ばせて立花くんに笑いかける表情は恋する女の子のそれだった。
少し明るめのふんわりした髪は背中の肩甲骨にかかるくらい?目鼻立ちは整っていて、その目は本当に輝く。
薄いエンジみたいな色の薄いベスト、同色のスカート。袖やスカートの縁はチェックになっていてシャツにリボンタイと制服も可愛い…。
背丈は私と変わらない…でも…むう、胸は負けてる…。
(すごい綺麗…でも可愛い…!
!!!
この娘!まさか!)
私は気づいてしまった、この娘が多分、立花くんの思いびとだ!
立花『…香椎さん…?』
(かしいさん?)
人の行き交うターミナル駅の通路でふたりが立ち尽くす。
もうふたりの世界。
立花くんはびっくり→嬉しい→悲しい。
その女の子はびっくり→嬉しい→怒り→嬉しい。
表情がコロコロ変わる。
病院生活もあったから私はそんなに人を見ていない。
それでもわかる、圧倒的な存在感!
通る人たちも立花くんは見ないけどこの女の子を皆チラッと見て通る、いやまじまじ見ていく人の方が多い!
綺麗で可愛い、間違いない!
でも何?この娘?こんなに魅力的な娘見たことない…。私だって見た目には自信がある。結構自信がある!
…見た目なら互角かもしれない…しかし、この娘は違う…。
まず自信に満ちていて、それが鼻につかない…。
知的でしっとりした雰囲気にスポーツ少女の瑞々しさを兼ね揃えている…。
ふたりは黙って見つめ合う。
…私が邪魔なのか。
私は女の子と立花くんを交互に見ると、
『中学の同級生かな?時間無いから早く来てね?』
先に行ってるよ?ってジェスチャーをしてゆっくり先へ歩いていく。
少し先の曲がり角で2人を観察する。
立花くんが頭を下げてなにか謝ってる…?
女の子の表情がそれでやわらぐ、何か矢継ぎ早に質問をして立花くんはたじたじ。
むかむか。
ふたりの世界にいらだつ!
なんで?なんでこんなに胸が苦しくて、不安になるんだろ?
しかし、見れば見るほど…
女の子は多分、先に想像してた2人の女の子のどっちかじゃない?
観察する。
私はゲーム好きでよくゲームに当てはめるんだけど、あの女の子は?
戦士?僧侶?賢者?
ううん、勇者だ。
圧倒的に華がある。見るものを惹きつける力がある。
さっきも思ったけど、私だって見た目では負けて無い!
でも、違う…私が自分の命を糧に咲く花なら、
あの女の子は無限のエネルギーを内包している、それが自然に溢れ出す華。
ブワッ
変な汗が流れる…。
『あの』女の子と立花くんを巡って争わねばならないってわかった。
誰にも説明されなくてもこの娘が私のライバルになるんだってわかった!
今まで、初めて遊ぶ将棋に魅了されてはしゃいでた私は、その将棋盤の向こうに初めて対戦相手が座ったことを感じる。
私の駒を何枚も落とした陣容に対して相手は全駒揃ったハンデ戦。
もう遊びじゃ無い。
手段は選んでいられないでしょう?
♪♪♪
立花くんのスマホを鳴らす。
承くんはスマホを取り出してすぐに、出る。
立花『紅緒さん、すぐ行くから!
立花くんが何か言う、女の子の顔が曇る。
真面目な男の子は私の方へ小走りで来てくれる。
女の子はこっちをジッと見てる、
聞こえるように牽制する!
『遅いよー!
承くんの腕に自分の腕を絡ませて私は承くんにもたれかかった。
(私大胆!)
ちょっと!振りほどかないで!なんとか手を繋いで移動開始!
後ろからの視線を感じる。
立花くんの手…大きいな。ちょっとだけごつごつして暖かい。
私、立花くんのことが、承くんのことが好きなんだ。
ハッキリわかるんだね。
あんなチートみたいな娘を敵に回したくないよ。
でも、でも絶対に!絶対に負けたく無いよ!
頭の良い方か!
スポーツの方か知らないけど!
絶対に譲れない!!
そのあと、スパイス受け取って、東光に戻り、駅で別れた。
帰り道も楽しかったが、気もそぞろ。
早く帰ってライバルを少しでも知らなければ…!
☆ ☆
私は今まで、聞けなかった事を聞くことにした。
夜、友だちに電話する。
『どしたの?とわわん?』
あのね…。
成実『…ああ、それは多分、
『香椎玲奈』だよ。
うちの代で『完璧女子』って呼ばれた…。』
うん、うん、うん?
!!!!
今まで?今まで聞いてたエピソードは全部ひとりの物語なの?!
綺麗で笑顔が可愛い、頭脳明晰でスポーツ万能で?
ええええ?!
なるみんはその香椎玲奈について詳しい。
根掘り葉掘り、教えて貰った。
別の視点から見た、
完璧女子とぼっち少年の物語り。
聞いてて腹が立ってくる。
私が寝たきりだった頃、私が辛いリハビリをしてた頃、私がひとりで過ごしていた頃、少女と少年はドタバタラブコメみたいな日々を送っていたのか…。
嫉妬、多分一方的な嫉妬だよ。
でも、知ることができた。なんで結ばれなかったかはわからずじまいだけど十分!
…私、承くんが好き!
誰にも渡したく無い!
今日、私ははっきりと自分の『恋』を自覚した。
あぁ。
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