第194話 突然の再会【side香椎玲奈】

私は学校で嘘をついた。

面倒な男の子からの告白、アプローチを避けるためだった。



『ごめんなさい。

私、今、付き合ってる人が居るんです。

…中学時代からずっと好きだった彼と付き合う事になりました。

本当にごめんなさい。』



これで!もう私は彼氏持ち(公認)!フー!





…って思ってたんだけど?



『でも、その彼?天月じゃ無いんだよね?』

『先を見てよ!俺と付き合って!』


なんで?天月の生徒は選民思想って言うのかな?自分はエリート!って意識が強くて、他校の生徒なら逆に有利だ!!ってテンションで攻めてくるようになった。なんで?



当然竹田先輩も梅澤くんも同じで、まだ俺たちの魅力をわかってないからだ!みたいな感じで共同戦線を張って香椎玲奈の目を覚ませ!みたいなノリなんだよ。

いや、そっちが目を覚ましなよ?何度も断ってるでしょ?


色んなとこで彼氏について追求、詮索されるけど全部説き伏せて具体的なことや言質は取らせなかった。

口論で負けるわけにはいかないよ。

…負けたら彼氏を連れてくるとか、紹介しろってなっちゃうんだもん。



通学時、同じ中学の子も何故か知ってて?最初は遠巻きにしてるな?って思ってたけど、



千佳『玲奈、彼氏が出来たって噂になってるわよ?』


『えー?!告白避けに嘘言っただけだよ!』


千佳『そんな事だろうと思ったわ。…じゃあ私から言っておくね?』


『ありがとう、千佳ー!』



そんな事もあったりして、本当に面倒。

告白避けにならないならただ嘘をついただけになっちゃうじゃない!

…こうゆう時、承くんは自転車通学で情報が伝わらなかった事を助かったなぁって思うよね。



そんな7月上旬、私は中途半端な時間になってしまったが家へ帰る。

今日は部活が無いため委員長業務をちょっとして、16:40位。



ふう、毎日順調ではあるけど煩わしい事も多く面倒だなあ。

夢の為の勉強もなかなか進まないし?夏休みにまとまった時間が出来たらかな?

承くんどうしてるかなぁ。



スクールバスを降りて、1人ターミナル駅を歩く、もうすぐ中央口。

田舎だけど中学校の歩いて通学がよかったなあ。そんな事をぼんやり思いつつも頭はこの後のスケジュール、勉強内容、就寝時間まで細かく考える。


私はお姉ちゃんに仕事中毒ワーカホリックと言われる。

だって勿体無いでしょ?時間があれば勉強でもテニスでも、スキンケアでもなんでも出来る!時間は有限!大事に使わなくちゃ!


そんなスケジュールを考える私の耳に、雑踏の声に紛れて女の子の声が入ってくる、









?『立花くん!そっちじゃないよ!こっち!』



!!!!!!

立花?立花くん?

いやこの県に何人の立花くんが居るのか知らないが!

私は立ち止まり、声のする方を見る!



女の子はニコニコしながら彼氏?男の子の袖を引っ張る…?

男の子は人影でまだ見えない。

(東光高校の制服…?)

ドキン!心臓は高鳴る。





?『もう!しょうがないんだから!』


女の子はぽんぽん!って男の子を腕を叩いて、彼氏っぽい男の子がごめんって笑いながら謝る。


髪型は違う?でもすぐにわかる。

背が伸びた?雰囲気…大人っぽくなったのかな?

私が見間違う訳がない。





『…承くん…?』




驚きすぎて声が張れない。

会ったらどうしよう?怒ろうか?笑おうか?色々考えてたけど何も出来ない。



あんなに恋焦がれた、優しい武将が居た。

髪型スッキリしたのかな?なんか大人っぽくなったかな?東光高校の制服…シンプルにカッコいいね。

抱きつきたい…!抱きついてクンクンしちゃいたい!



たかが100日ちょっと。3月上旬の中学校の卒業式からこの6月末までの僅かな期間。春ー初夏程度の短い時間がどれだけ長かった事か!

逢いたかったよ。その言葉が喉まで出かかった。

でも言葉は出ない。




承『…香椎さん…?』



承くんも私を見つめて、驚いたように立ち止まる。

彼も言葉が出ないような?目は驚いた!から嬉しい!って目。

人通りの多いターミナル駅でふたりして立ち尽くす。






(…玲奈さんとは呼んでくれないね…。)

知ってる人は誰も居ないけど名前で呼んでくれなかった事に悲しくなる。

いや、自分から名前呼びし始めた癖に彼はすぐに香椎さんって呼ぶのだ!

少し腹が立ってきた。

あの、あの卒業式の日からどれだけ!どれだけ…!


承くんの側に居た女の子は私と承くんを交互に見ると、


?『中学の同級生かな?時間無いから早く来てね?』


先に行ってるよ?ってジェスチャーをしてゆっくり先へ歩いていく。




一緒に歩いてた女の子…。

すっごい綺麗な女の子!なかなか居ないレベル!

黒髪ロングで、清楚な雰囲気、見た事ないほどの色白!

でも何より目が違う、目力強い!

千佳から聞いてたけど…こんなに美人?!

ちょっと動揺。





そんな綺麗な子と過ごしてたから?私は?私のことなんか忘れちゃった?

私は一言恨み言を言おうと思った!

でも自分の心はそんなことより!久しぶりに会えたんだよ!ってそれを止める。思わず動けない私に承くんは、そっと近寄って、泣きそうな顔で、




承『…香椎さん、卒業式の日、想いを伝えるって約束してたのに、

…手紙で済ませてごめん…本当にごめんなさい。

…どんな結果であれ、直に会って、きちんと想いを伝えるべきだった…。

俺の想いを自分の口から伝えて、香椎さんの想いを聞くべきだった。

本当にごめんなさい。』




こんなに人が多いのに、承くんは深々と頭を下げる。

…わかっててはくれたんだね?そうなんだよね?

怒ろうか?と思ってたけど、ちょっと落ち着く。

まだ完全には許してないけど、でも、反省してるなら?



ホッとして、気が緩んだら気になって仕方ないことがいっぱいあるよ!


私は涙目になりながら、



『ねえ、なんで?なんで卒業式の日…

私、私のこと嫌いになっちゃったの?私ってそんなに怒ってる?赤鬼みたいな女の子?

…さっきの子がクラス委員長一緒にやってる子?

…仲良しなんだね…彼女さんなの…?』



私はやりすぎ!って心がブレーキかけるけど止まらない。

久しぶりに会えた!承くん!聞いて?教えて!衝動に抗えない!

特に、最後の質問!あんな綺麗な娘と歩いてるなんて…ショックだよ…。



承くんは困ったように、



承『そんな一編に言われても…。

手紙に書いてるような?

紅緒さんは一緒にクラス委員をしてるよ…。

なんで知ってるの?』




手紙に書いてる…好きだけど釣り合わないって言葉かな?

でも!でもね?色々な思いが溢れて溢れて言葉にならない!


そして!紅緒べにおさんって言うんだ…?!

私はもう、玲奈って呼んでくれないのに?

紅緒さんって下の名前で呼ぶんだ…?

※玲奈さんは紅緒を下の名前と誤解しています。



これは結構ショックだった。

私以外に下の名前で呼んでる娘を見た事無いもん。伊勢さんが一回呼んでいいよ?って言った際も女の子を下の名前でなんて呼べない!って言ってた。



そんなに?彼女さんだから?

私は泣きそう。




『あ、あと!!』


私は聞きたいことが山ほどある!

次いつ会えるかわからないもの!



私が聞きかけた時!


♪♪♪


スマホ鳴ってる?

承くんはスマホを取り出してすぐに、出る。




承『紅緒さん、すぐ行くから!』





!!!!

承くんスマホ?!スマホ持ってるの?!


私は慌てて尋ねる、


『承くん!スマホ買ったの?!』



『5月下旬にね。』

ちょっとドヤ顔の承くん。可愛い。


しかしすぐに気づく。一カ月も前でしょ!なんで?なんでアドレス教えてって言ってくれないの?

もしくは教えてくれないの?



悲しい気持ちでまだ私は質問しようとする。



それを承くんは遮って言った、


承『ごめん、今日急いでて。』



久しぶりに会えた私より急ぐ用事なんだ…。

いや、用事があるからターミナル駅に居るんだよね?私ばっかり質問攻めで感じ悪いよ。

…でも急ぎの理由がそこの彼女関連だったら…私、立ち直れないなぁ。



でも、久しぶりに会えて良かった、また逢いたい!



『承くん!承くんは何か私に聞くことない?』



なんでもいいよ!また!近いうちに、きっと会おうね?



そうすると承くんは顔を曇らせ、悲しそうな顔で言った、




承『…香椎さん、彼氏出来たんだってね。

おめでとう。

どうか、お幸せに…。』





あ。





承くんは私に背を向けると、紅緒さん?が待ってるところへ小走りで向かう。

一回後ろ向いてじゃあって手を振ってくれた…。

呆然としてる、私に多分聞こえるように、彼女さん(?)は言った。


紅緒『遅いよー!ショウくん!』


そう言うと、紅緒さんとやらは承くんの腕に自分の腕を絡ませて承くんにもたれかかった。

承くんは腕を外したけど女の子はしっかり手を繋ぐ。



















あぁ。













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